第二話:ダチョウ肉のステーキ9(終)
翌朝、目覚めた役人達は、目の前のたき火の中、半ば灰になった巨大な骨を見て、改めて自分たちが昨夜「駝鳥様」を平らげてしまったことに気がついた。
「そ、そうだあの素浪人に全て!」
慌てて探したが、すでに素浪人の姿は何処にもなく、解体に使った納屋の壁に。
「昨夜は欣快。
余った肉は頂いていく。
なお、骨は砕いて土に還すべし。
あとは口元を丁寧に拭われれば問題無し。
それではまたお会いする日を願い、無病息災祈願、これにて草々。
追伸。
くれぐれも今後は駝鳥様逃がさぬようご用心」
と書かれているのを見いだしたのみである。
「ああ、これは…………腹をくくらねばならんなぁ」
役人はぽかんと呟いたが、妙に顔の色つやは良くなっていた。
数十年後。この役人は駝鳥奉行にまで出世し、八二歳で大往生を遂げたが、死後親戚一同は、これまでの数十年間、年に一回彼の家で馳走になる「四角肉の石焼き」に使われている物の正体が、彼がこっそり間引いていた「駝鳥様」だと知って恐慌に陥った。
なにしろ、「絶対に開けてはならぬ」とされた屋敷の蔵のひとつには、駝鳥の骨が山のように積まれていたのである。
そして、彼の小物たちの家でも同じことが判明し、組屋敷丸ごと、一族郎党そろって蓄電するという怪奇現象が起きることとなった。
さて、素浪人の行方は、誰も知らない。




