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異世界の執行人  作者: Kyou
第4章 どんなに傷ついても……
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第5話 隣の美少女

 ちょっと待て!


 俺はこの状況の危険さを感じた。


「…………」


 隣で寝ているサクラザカの顔を見る。


「…………可愛い」


 ゴンっ!


 俺は膝に自分の頭をぶつける。


 何考えてやがる! こいつはもともと男だぞ!


「……落ち着け。俺。ひとまず自分の体で我慢しろ」


 モミュ……。


 モミュ……モミュ……。


 ……なんか……自分の体なのに、罪悪感がある。


 何か……何か別の物はないのか!?


「あっ……」


 俺の頭の中で、ある物が浮かんだ。



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



「……ん?」


 突然、隣からの物音でサクラザカは目を覚ます。


「カゲロウ。どうかしたのですか?」


 ブツブツ……


「……カゲロウ?」


「……黄色いパンツが23枚……黄色いパンツが24枚……」


「…………おやすみなさい……」



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



「ねえ? ジェナはどう感じているんですか?」


「え? 何が?」


 ベッドでふとんに潜りながらコハルはジェナに問いかける。


「男の体になってですよ。どう考えているんですか?」


「まあ……なんだか落ち着かないけど、特に考えたりしないなあ」


「見たり触ったりはしないんですか?」


「え?」


「おりゃっ!」


 突然、コハルがジェナの体にしがみつく。


「えっ! 何するの!?」


「憧れのサクラザカさんの体が……同じような形なんですよ? この機会を逃していいんですか?」


「それは……その……」


 ジェナは顔が赤くなり、恥ずかしくなる。


 すると、コハルはジェナの服を少しずつ脱がしていった。


「ちょっと! 何をやって!」


「さあ! まだまだ夜は長いですよ!」


「ひっ……ぎやああああああああああああああああああ」



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 結局、昨日は一睡もできなかった。だが、俺がサクラザカを襲うことは無かった。


「ありがとう、ベル。俺に力をくれて……」


 すると、ジェナが同じように隈を見せながら、こちらにやってくる。


「……カゲロウさん……」


「……どうした?」


「……人間って……何でしょうね……」


「何があった?」


 サクラザカとコハルは普通にこちらにやってくる。こいつらは幸せそうだなあ。


 皆が揃ったところでサクラザカは宿を出ようとする。


「さて……そろそろ行きましょうか」


「ちょっと待ってください!」


 ジェナは俺たちをにらみつける。


「どうして、サクラザカさんもカゲロウさんも髪がボサボサなままなんですか!?」


「あ?」


 そりゃあ、男だからなあ。……あっ、今は女か……。


「悪いですけど、そういうところは注意してくださいよ!」


「注意すると言っても、僕らは女性というのがあまりわかりませんし……」


「……んん。まあ、私も自分に合うと思うファッションぐらいしか知らないんですが……」


 そこで、ジェナは閃いたかのように言う。


「じゃあ、美容院に行きましょう!」


「…………え?」


 俺とサクラザカは困惑していた。なんせ、美容院など行ったことが無い。


 しかし、サクラザカは考えた末に、言葉を放つ。


「……確かに、こういった状況で身だしなみを整えないのは、逆に注目を集め、敵に見つかりやすくなってしまうかもしれませんね」


「……仕方ねえか」


 俺もサクラザカの考えに賛成だった。



# # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # # #



 私たちはサクラザカさんとカゲロウさんが来るまで、ベンチで待っていた。


 すると、横にキャスケット帽を被った幼い少年が座ってきた。その手にはソフトクリームを持っていた。


「……ソフトクリーム、好きなの?」


「……うん……」


 きっとこの子も、もとは女の子だったのだろう。その子が私たちに質問する。


「二人とも……もともと……女?」


「え? なぜボクが今、男だと勘違いされてるか、質問していいですか?」


 コハルちゃんが眉間にシワを寄せながら、問いかけている。ちょっと怖い。


「もしかして、あなたも誰かと一緒にここの美容院に来たの?」


「……うん……」


 少女は目を細めながら、呆れたように言う。


「……兄さん……おしゃれとか……しないって……。……なんていうか……デリカシー……無さすぎる」


「ああ。なんかわかる……」


 同じような方々がうちにもいる。


「……それでも……私のたった一人の……兄さん……」


「お兄さんのことが大好きなんだね」


「……うん……」


 すると、髪にサングラスをかけた綺麗な女性がやってきた。


「おい。メルメル。終わったぞ」


「……うん……兄さん……」


 女性はこちらに気づく。


「俺の妹が世話になったな。何か迷惑はかけてねえか?」


「いえ、大丈夫ですよ」


「……そうか?」


 その女性は歩き出す。話していた子はその女性に着いていく。


「バイバイ……お姉ちゃんたち……」


「うん。バイバイ」


 私たちはその子に手を振る。


「……あれ?」


 その時、私の頭の中である疑問が浮かんできた。


「……メルメルって名前、どこかで聞いたことがあったような……」


「どうかしましたか? ジェナ」


 コハルちゃんの問いかけは何か心配そうな雰囲気を含んでいた。


「ううん。大丈夫だよ。少し考え事をしてただけ。それより、そろそろサクラザカさんたち来るんじゃないかな」


「……そうですね。少し様子を見に行きましょうか」


 私たちは美容院の中に入っていった。

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