プロローグ 『失ったもの』
私はグレーという名前だ。
現在は財団の副団長という役割についている。今日から団長がここ、フレインタリアに戻るようだ。
だから、私は団長に挨拶をしに行くために部屋に向かう。
「失礼します。団長」
そう言ってその部屋に入る。
「よお。少年。待っていたよ」
「待っていた……ということは、何か私に用があるということですね」
「ああ」
団長は二人の人物の写真を見せる。一人は灰色の髪で、もう一人は赤い髪の少年だった。
「この二人を捕まえてほしい。灰色はサクラザカという名前だ。赤い方は知らない。……あと、もしかすると変装している可能性もある。だからよく注意しておけ。最悪殺してもかまわない」
「……部下は自由に使ってもかまいませんね?」
「ああ。頼む」
「わかりました」
私は写真を受け取ると、部屋を出ようとする。だが、団長がもう一枚写真を持っていることに気がつく。
「団長。その人は?」
「……ああ。これは私の娘と妻だ。特に仕事とは関係無いよ」
「今はどうされてるんです?」
「死んだよ。12年前に……」
12年前……。おそらく吸血鬼の帝国が滅亡した時の出来事だろう。
私は詳しくは無いが、反乱軍により旧帝国側についていた者は厳しく罰せられたと聞いた。
その時に団長の家族は……。
「……すみません。余計なことを聞いて」
「いや……いいんだ。じゃあ向かってくれ」
「はい。了解です」
そう言い、私は外に出る。そして、携帯を取り出す。
プルルルルルッ。
「タクトか? 休日に悪いが、仕事の依頼だ」




