第1話 直線と曲線
フレインタリアは、中世ヨーロッパ風な街並みであり、歴史のある建造物が多い。また、帝国所有地では最も教会が多く設置されているのも、この街の特徴である。
街の中心にはハイスカイタワーと呼ばれる塔が建てられていて、街の風景を眺めるにはうってつけの建物だ。
また、地下には財団とは違う組織が行う闘技場があるとも噂されている。
その街の路地を一人の青年が歩いていた。その青年は髪にサングラスをつけていた。
「……久しぶりにゆっくりできると思ったのにな……」
その青年の後ろをキャスケット帽を被り、薄い桃色の髪を隠す小さな少女が着いていく。
「おい……。メルメル。ちゃんとはぐれないようにしろよ」
「……うん。……タクト兄さん」
彼らは先程連絡があり、今本部に向かっている。どうやら、彼らで殲滅する目標がいるらしい。
ガシッ
その時、メルメルが青年の服の裾をつかんだ。
「……どうした? メルメル」
「…………」
少女はすぐそこのアイス屋を見ていた。
「……言っとくが、今はそんな暇はねえぞ」
「……うん」
そう言いながらも、下を向き落ち込んでいる。
「……はあ」
ため息をつきながら、タクトはメルメルに札を渡す。
「5分で行ってこい」
「……うん!」
少女はアイス屋の方に向かっていった。青年は近くのベンチに座り、上げていたサングラスをかける。
「まったく……グレーの野郎。休日に仕事入れやがって。まあ……暇してたからいいけどな……」
彼は小さなタブレットを取り出し、この街のデータを調べていた。
「……やっぱフレインタリアはあんまり好きになれねえな。帝国の連中がうろちょろしてるしよ」
そんなことを呟いていると、メルメルがやってくる。手にソフトクリームを持っていたのだが……。
「あ? なんで2つ持ってんだ?」
「…………」
無言で少女は1つを青年につき出す。
「いらねえよ。だいたい俺は甘い物が……」
メルメルはまた下を向いて落ち込んでいる。
「……仕方ねえなあ。よこせ」
そう言って彼は奪い取るように少女からアイスを取る。
ペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロペロ
「……おいしい?」
「ああ。うめえよ……」
食べ終わると、少女は手を出してくる。
「なんだよ?」
「……ゴミ……」
どうやらコーンについていた紙のことを言っているらしい。
「捨ててきてくれんのか?」
「……うん」
「ありがとよ」
少女は紙を受け取ると、アイス屋の近くにあるゴミ箱にそれを捨てる。
それを確認したタクトはベンチから立ち上がり、歩き出す。メルメルもそれに着いていく。
「さて……メルメル」
「…………?」
「仕事を始めるか」
「……うん……タクト兄さん……」
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「いやあ、ユニギリムから割と時間がかかったな。ざっと5日ぐらいか?」
俺たちは歩いてフレインタリアまでやってきた。やはり、ユニギリムとはだいぶ景色が違った。
「そうですねえ。私もフレインタリアに来たのは久しぶりです」
ジェナはその街を懐かしんでいた。
俺はサクラザカにこれからの行動を聞く。
「で……まずは何をするんだ?」
「とりあえず……まずは宿を見つけましょうか」
サクラザカは地図を取り出し、街を確認する。
「……あれ? そこにいるのはサクラザカ殿でござるか?」
目の前には帽子を被った少年がいた。
「……サブローさんですか。どうしてこんなところに」
「いやあ。兄上に会いに来たでござるよ。結構あの人は寂しがり屋なので……。そちらの方々は?」
サブローとやらは俺たちに興味を示す。
「俺はカゲロウだ。こっちの優しそうな子がジェナ。で、そっちのアホそうなのがコハルだ」
「は?」
コハルは笑顔なのだが、目だけは笑っていなかった。
「さすがに私たちが着替えているところを覗こうとした変態さんにそれを言われる筋合いは無いですけどね」
「おい。馬鹿。やめろ」
コハルの発言に俺は焦る。俺のイメージが崩れちまうだろうが……。
「だいたい! 俺が見ていたのはジェナのであって、お前の貧乳なんて誰が見たいと」
ガシッ
「……が……は……っ……」
「今……言ってはいけないことを言いましたね」
コハルが俺の首を締めている。てか、握力強いな……こいつ。
「だいたい。ボクはサクラザカさんの理想に魂が宿った存在なんですよ。なぜ、ボクの体は結構幼い少女なのでしょうか。……それは……」
サクラザカは相変わらず無表情だが、汗がタラタラ流れている。
「サクラザカさんが……ロリコンだからですよね?」
「やめてやれって! サクラザカが白目剥いてるから! サクラザカあああああああああああああああああああ!」
サブローは面白そうにこちらを見ている。
「皆さん仲がよろしいんでござるなあ」
「「よくない!」」
俺とコハルが声をそろえる。
すると、サブローは何かを思い付いたかのように話し出す。
「そうだ! 皆さん泊まるところが無いなら、拙者の兄上が経営している宿に泊まるのはどうでござるか? にぎやかで楽しいと思うのですが……」
サクラザカはそれを聞いて少し考えている。
「そう……ですね。下手に知らないところに行くのも危険ですし、ここはサブローさんに従いましょう」
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「私はタローだ! よろしく頼む!」
「お、おう」
なんだ。この人。妙に迫力がある。喋る度に後ろに『!』が見えるような……。
「えーと! 四人でいいか!?」
「あ、はい。できれば二部屋使いたいのですが……」
さすがのサクラザカも動揺していた。てか、男女で部屋分けやがって……。これじゃああんなことやこんなことが……。
「じゃあ! この201号室と202号室を使え!」
「ありがとうございます」
サクラザカは鍵を受け取り、サブローを含めて5人は部屋に向かった。
「なあ。サブローだったっけか?」
「はい? どうしました?」
「あの兄ちゃん。なんかあったのか? 目の下には隈が見えたし……」
「ああ。大したことじゃないですよ」
サブローは振り向き、話し出す。
「ただ妻に浮気をされて、話す前に逃げられただけです」
「……世の中って怖いな」




