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私たちは、あなたの輝かしい過去を一冊の本にし、夢を通してお見せします。  作者: 夢歌環めちあ


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25/31

25話 能力

★主な登場人物★


・ベル (本名 ???)

現代人。鈍感な本の書き手/164cm

・来栖恭介

未来人。爽やかな医者/177cm

・百目鬼弓月

未来人。真面目な護衛兼リーダー/185cm

・七彩七海

未来人。チート級つよつよギャルの護衛/155cm

・服部半蔵

過去人。???/172cm

 

 私はステッキに「戻って!」「戻って下さい」「いいこですから〜」と言ってみたり、ハンカチでふきふきしてみたり、回してみたりしたけど

――万年筆に戻ってくれなかった。


 ナナもしゃがんで「もしもーし?」なんて言ってみたり、「食べるっスか?」ってお菓子をあげたりしてた。いや、食べたら逆に怖いよ!


 キョウは私の調子が悪いのかもって聴診器を取り出して診察してくれた。


 みんなでわたわたしてると、ユヅさんが戻って来た。


 上司さんから解決法を聞けたのかな?


「上は何も反応が無かった。別の時間軸に送ってみたりしたけれど全然だよ。だが、逆にこの状況はピンチではない――と思わないか?」


 ユヅさんが明るい方向に持っていってくれる。


「確かに、万年筆に戻らなくても良い事情があるのかもしれない。何か問題があれば連絡があるはずだからな」キョウも同感する。


 私は、"本"を書くためのことを思い出していた。


 そうだ――今は先に進まないと!


「ねえねえ、書く前に"読み手"の解釈を話し合ったりしなくちゃいけないんだよね。まずはできることをしてから、また考えるのはどうかな?」


 横からばっという音がした。ナナは横になりながら、思い切り両手をあげてた。


「ベルっちの言う通りっス! マジえらいっス!」


  ナナ! ありがとね、お腹パンパンでキツイって言ってたのに応援してくれて……! 好き!


「そうだな、できることをして次に進もう。ベルは前を向いていて強いな」


 キョウは今日初めての頭ぽんぽんをしてくれた。


 二人に褒めてもらえて私はご機嫌になる。

 私って単純!


「僕は総理と琥太郎さんに一度連絡を取るよ。七海は二人の警備だ」


「ラジャーっス!」


 ユヅさんは渡しておくものがある、と寝室に戻ってから、何か持って来た。


「総理と琥太郎さんのヒアリングシートだ。二人から見たレナさんのことについて書いてある。参考にしてくれ」


 座り込んでいる私に渡してくれた。綺麗に手書きにまとめられていて、読みやすい。てっきりタブレットに打ち込んだのかと思ってたから意外かも。


 キョウも覗き込んで読む。


「ありがとうございます。意を汲んで内容を決めます」


「頼むぞ」


 私とキョウはヒアリングシートにまず目を通した。


 どうやら、総理と琥太郎氏から見たレナさんは、いつも不機嫌で怒ってる印象が強いみたい。


「俺達の第一印象もそんな感じだったから仕方ないな」とキョウが唸る。


 記憶域で私たちは優しいレナさんに会ってるから、すっかり印象は違うのだ。


「ね。あ、あとこのシートにはないけど、レナさんがキョウとユヅさんに声を掛けたとき、『たぶらかしおって!』って言ってたよね」


「だな。カウンセラーのお兄さんの話は無しにした方がいいだろう。レナさんにとって苦い思い出でもあるだろうから……」


「『輝かしい過去を』を書くんだもんね」私はステッキを顎にトントンしながら思い出した。


「ああ。そうだ」キョウは三つ編みのリボンを結び直してくれる。


「じゃあ、あんまり長く仕上がらないけどいいかな……?」ステッキを肩にトントン当ててみた。おや、良い感じ。


「本は自由に書いて良いんだ。規則さえ守れば良い。長さは気にするな」キョウは手を組んで上に伸ばして答える。


 私は、じゃあこの辺りを書いてみようか、とスマホに軽くメモをした。キョウが覗き込んで、そうだな……と思案する。


 すると、ステッキから文字が出て来て、寝室に向かっていった。


「黒いものが浮かんでるっス!」


 ナナがソファから飛び上がって、警棒でひゅんっと打ちつけようとした。でも、黒いものはすり抜けて進んでいく。


 ユヅさんが顔を青白くして寝室から飛び出して来た。


「どうした!? ここここっちに何か飛んできたぞ! 何なんだ、一体!」


「うう〜攻撃が通じないっス……怖いっス……」


 ナナはユヅさんに抱きつく、いや、登ってしがみついた。


 私とキョウは観察してみることにした。実は私も怖くて、無意識にキョウの手を探して握ってしまった。キョウも震えてた。こっこれ、怖いよね?


「よく見るとさっきベルが打ち込んだ文字だな……」

「うん、そうなの。なんで浮かんでるんだろ?」


 私は試しにスマホに打ち込んだ文字を一行消してみたら、少しずつ消えていった。


「消えたっス!」


 ――あれ、もしかして……

 

 私もキョウもユヅさんも気がついて、寝室に走る。突然降ろされたナナが「一人にしないでっスようう」って追いかけて来た。


 私の鞄の上で、文字は困ったようにふよふよ漂ってた。急いで鞄を開けると、キョウからもらった白紙の本に文字が吸い込まれていく。


「何……これ……」


「ホラーっス! 怖いっスようう」


 ナナがとうとう泣き出しそうになったのを見て、ユヅさんがひょいっと抱き上げた。私もよしよしすると、ナナはガッチリ私の手を掴んで、にぎにぎ、にぎにぎ! と永遠ににぎにぎした。


 キョウが恐る恐る本に手を伸ばして、一ページ目を捲ると、私がメモした内容がそのまま書かれていた。


「本が書けてるぞ!」


 キョウがよく見えるように広げてくれた。


「まさか、スマホで打ち込んだ文字が反映されるなんてね……」


「えっスマホ? どういうことだ?」


 キョウがユヅさんにさっきあったことを一から説明してくれた。



***



「成程。手書きは大変だったから良かったな」


「長いと苦労してたから、楽になって良かったですよ。万年筆だと消すのも大変ですから」


「良かったっスねベルっち!」


 ナナは怖さが無くなってすっかり元気にメロンソーダを飲んでる。


「整理すると、ベルが本にしたいことをステッキが文字にして本に映してくれる、ってところじゃないですか?」


 突然、有名なロックバンドの着信音が鳴って、私はびくっとした。もー誰のスマホ? ナナかな?


「おい、七海。音量大きすぎるぞ」


 やっぱりね! そう思った!


「サーセンっス。もしもしアニキ? 今ウチらは忙し……え? テレビ電話っスか? うぃっス」


 ナナはスマホスタンド付きのケースらしくて、そのままテーブルに立てかけてくれた。


『できたみたいだね♪ 良かった安心! でも不安かと思ってねん♪ "書き手"の心が揺らいじゃったら大変だから、オレから説明しちゃうよー! ああ、君たちの上司は適当だからね。オレの独断行動だよん♪ 怒られたらカバーよろ♪』


「リスクを冒してまですまないな、王子くん」


『いーって! ユヅくん。万年筆がステッキになってる時は、ベルちゃんに安心してて欲しいからさ♪ オレ達の仕事の為でもあるってワケ。キョウくん、ちゃんと支えてあげてちょ♪ ナナちゃんは糖質控えてお水にしなー?』


 ナナはウザいっス! と画面に映らないように移動して、冷蔵庫からバニラアイスを取り出した。メロンソーダにまた乗っける。


「ステッキとベルの精神状態に何か関係があるのか?」


『あるある。怒るとステッキも暴走するし、泣くとステッキも弱まる的な? 落ち着いてるのが一番良い感じ♪ 時間の能力を使う時は、また今度話そっかー! 今は"本"に全集中ってコトでシクヨロ! ベルちゃんは今んとこ怖いことなーい? 何でもいってちょ♪』


「びっくりしたんですけど、本が書けることもわかって、王子くんから連絡もあって安心してます!」


『オレ天才だから任せてクレメンス♪ あー、ちな"本"の書き方はさっきキョウくんが言ってた通りだよん♪ ベルちゃんの書きたいことが"本"になるの! まさかの便利になっただけってコトでおけまる解決♪ ついでにスマホじゃなくても、ノートでもパソコンでもメモでも壁でもオッケー! ステッキが書きやすいように助けてくれてるって結論♪ "前"のベルちゃんの粋な計らいだよん。どう? ベルちゃんもみんなも安心した?』


「あっはい。良かった、です……」

「王子くんありがとな」


『ナナちゃんはもう怖くなーい?』


「見てたんスか! クソアニキ!」


 王子くんが涙を拭う仕草をして、『クソアニキなんてナナちゃんひどーい! お兄ちゃん泣いちゃった!』って演技をすると、またぱっと前の王子くんに戻った。


『しばらくこの時間軸の観測してるからいつでも連絡してねん♪ おーっと! ベルちゃん! 不安になってもダイジョブだから安心してちょ♪ オレの仕事は時間軸の安定だから♪ かっけーっしょ? 何かやっちってもオレたちが修正するから任せてちょ! じゃあねーん♪』


 王子くんはまた言うだけ言って電話切ってしまった。


「とりあえず、王子くんが見てくれてるのは頼もしいな。ベル、伸び伸び書いてみてくれ」


「はいっユヅさん!」


「あと、恭介、話がある。朝いちゃついてた件で一旦締めておかないとな。七海、ベルを守ってくれ」


「うげ、はい……」

「了解っス!」


 ユヅさん……嘘ついてるよね……? だって、いちゃついてた責任は私にもあるわけだもん。


 きっと、聞かせないようにしてくれたんだ……。


 ナナがメロンソーダを飲み干したみたいで、ベルっちベルっちぃ〜! とパタパタ走ってきて、むぎゅ〜っていつもより強くバックハグしてくれた。


「チョコはホワイトチョコもいけるっスか?」

「どっちも好き〜!」


 ナナがあーんってしてくれたからお言葉に甘えて食べさせてもらう。とろける〜〜〜!


 私が不安になったの、ナナはわかっちゃったかな? ありがとう、ナナ。



***



「説教じゃないのはわかってるな?」


「はい。王子くんに確認を取るんですよね」


 俺はスマホを出すと、王子くんから電話がかかってきた。


『もしもしー? メンゴ! オレちゃんと言えてた? 言葉の選び方ムズイわ〜。ベルちゃんダイジョブ?』


「さっきより落ち着いてるけど、完全に不安が無くなったわけではなさそうだ」


『だよねー? キョウくんとユヅくんの不安も伝わると思うし説明しとくよ。ナナちゃんにも伏せといて。よろぴ♪ 男同士の約束ってヤツ!』


 えっとねー、何から言おっかなー!

 王子くんは珍しく迷ってから答えた。


『ぶっちゃけさ――"今"のベルちゃんは、"前"のベルちゃんがある意味ほぼ神様にしちゃったんだよねー。オレらの間では"時の女神"なんて通称がついちゃっててさっ! ベルちゃんが時間を止めたことあったっしょ? あの時、"時間記憶固定"も同時に起きちゃった♪ だから「闇山」の連中は時間を遡っても、事実が固定されちゃってるからあの大戦争を起こせないってコトねん♪ 安全だけど安全じゃないからトリセツ送ったってワケ♪』


「そんな……時間記憶固定なんて、上でもやらないレベルの大事だぞ? ベルが大掛かりなことをしていたなんて」


 俺は唖然とした――その時間軸で起きたことを一生動かせなくなる処置だ。歴史人物の死や、大きな戦争、曲げてはいけない事実にしか適応されない。


 オレのスマホの横で耳を傾けていたユヅさんも驚きを隠せない様子だ。


『時間を止めてる間、キョウくん達は動けなかったけど、ベルちゃんのこと見てたっしょ? 今度から時間停止する時は、除外対象の指定もしなくっちゃヤバいんだよねーん……。キョウくんたちも他の人達も戻ったのは必然じゃなくてさっ♪ ベルちゃんが戻ってほしいって心の中で望んでくれたからセーフだったってゆー超ミラクル! 永遠に人を閉じ込める可能性もあるってワケよん』


 背筋が凍る。ベルはそんなに危険な能力を持ってしまったのか――?

お星様にて応援頂けますと嬉しいです!

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