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27.幸福の始まり

物語は、広大な砂漠の夜風が静かに吹き抜ける中、コトラットの夜空の下で始まる。二人の影が小さな焚き火の周りに揺らめく。ソニアは少し大きめの訓練用のローブを羽織り、未だ乾ききらない汗を拭きながら、静かに火の暖かさに身を委ねていた。


その前に立つのは、「サタン」と呼ばれる男、彼の本名はザラビスだ。黒い刃先のような小さな鎌を手に、光を裂くかのような鋭い目つきで、彼は先ほど指示を出したばかりだった。だが、今やその瞳には以前の冷酷さは薄れ、少しだけ人間らしい温もりが宿っている。


ザラビスは鎌をソニアに手渡す。

「リラックスして持て、ソニア。まるで巨大な蚊を捕まえようとするみたいに。鎌は殺すための道具じゃない、自己の一部だ。」


ソニアは試みるが、ほとんど手から滑り落ちそうになる。

「うぅ…」と彼女は苦笑いを浮かべる。


ザラビスは小さくため息をつきながら、静かに言う。

「やれやれ…」


そのぎこちない瞬間に、二人はこっそり笑い合う。まるで、鎌が隕石をも切り裂くことができるかのように。


何度も練習を重ね、転倒し、テントに突っ込みそうになりながらも、やっと基本を掴み始めたソニア。彼女の目の横にある「地獄の瞳」は、眠りから覚めた猫のように淡く光っている。


ザラビスは気軽に言う。

「今のところ、なかなかだな。俺の剣になったら、もう準備はできてるだろう。」


ソニアは照れながら答える。

「じゃあ…私、あなたを守りたい、ザラビス。」


ザラビスは眉を上げる。

「必要ない。俺は強すぎる。大事なのは、お前が死なないことだ。一緒にいることだ。」


ソニアは微笑む。優しい笑みは、まるで安全な場所を見つけたかのようだった。その夜、焚き火のそばに横たわり、ザラビスは星空を見上げながら静かに座る。


しばらく沈黙の後、ソニアが口を開く。

「ザラビス…私、まだ話したことないことがあるの。」


彼は少しだけ顔を動かし、答える。

「いいよ、聞かせて。」




ソニアの過去


彼女は静かに、しかしはっきりと語り始める。


「コトラットの世界…昔はこんなに腐っていなかった。六歳の時、平和な日々を過ごしていた。母は毎朝蜂蜜パンを焼き、父はいつも冗談を言って、母に木のスプーンで叩かれていた。私は弟のリュウもいた。」


彼女の笑顔は一瞬、悲しみに歪む。

「彼は二歳だった。雪のように白い髪をしていて、私と同じだった。とても可愛くて、いつも私がほっぺたをつねると笑っていた。」


ザラビスは黙って聞きながら、鎌を地面に置き、彼女の目をじっと見つめる。


「村には伝統があった。白い髪の子供は『光の子』と呼ばれ、幸運をもたらすと信じられていた。私たちはとても幸せだった。」


ソニアは深呼吸をし、声が震え始める。

「ある日、黒装束の男たちがやってきた。顔を覆った仮面をつけて、黒い儀式用の衣装を着ていた。あいつらはアステロンの暗黒軍団、『アステロン教団』と呼ばれていた。」


ザラビスは眉をひそめる。

「名前だけで恐怖が走るな。」


続けて彼女は話す。

「彼らは目を閉じた鎖のシンボルを持つ魔符を持ち、運命を操る存在、『運命の絆者』を崇拝していた。彼らは白髪の子供を狙った。光は世界を強くするために必要だと…でも、それは嘘だった。彼らは子供たちを闇の市場に売り渡し、儀式のエネルギーにしていたの。」


ザラビスは拳を握る。

「気持ち悪いな。」


ソニアは声を震わせながら続ける。

「私と弟も標的だった。夜、アステロン教団が来て、村は燃え尽きた。みんな親切だった人々が、いきなり縛られて連れて行かれた。私は幼くて、ただ母と父を守ろうとした。」


涙が頬を伝う。

「父は最初に死んだ。抵抗したために刺されて、目の前で倒れた。母は私とリュウを地下の倉庫に隠して、私に言った。『隠れて、絶対に見つかるな。私もすぐ追いつく』と。」


声が震える。

「母の叫び声…今も耳に残っている。」


朝が来たとき、彼女たちは救われたが、弟のリュウは姿を消していた。


「アステロン教団に攫われたの。リュウも…」


ザラビスは一瞬、息を呑む。

「連れて行かれたのか…」


ソニアは静かに頷く。

「彼らは少年少女を使って、世界を操る儀式のエネルギーにしていた。すべては一人の男、銀の仮面をつけた男、運命を縛る男のために。」


彼女の声は涙とともに震える。

「彼の名は…ノロ。運命の絆者。」


その夜、気温が一段と冷え込む。




ザラビスの決意


彼は目を閉じ、静かに思う。

「これは…個人的な戦いだ。」


焚き火の火は小さく揺れ、星空の下、ソニアは静かに眠りについた。彼女の心には、長い間閉ざされていた感情が芽生え始めていた。


「明日、リュウを探し出そう。そしてアステロンを焼き尽くすんだ。」


彼の目は深紅に燃え上がる。


「ノロ…お前は長すぎた。」




テントの中


ソニアはすぐには眠れなかった。握った小さな鎌には、静かに赤い光が宿っている。まるで鎌も眠っているかのように。


「もう一人じゃない…」とつぶやきながら、優しい笑みを浮かべる。


「ああ、幸せだ…ザラビス。ありがとう。」


彼女は毛布を引き寄せ、目を閉じる。長い孤独な夜の終わりに、初めて悪夢にうなされずに眠ることができた。

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