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15.元の世界の表面に戻る

東京黄昏


東京の夕日は、いつもと変わらず、ありふれたものだった。人々が行き交い、車が走り、街の喧騒が日常を彩る。しかし、黒いパーカーに身を包んだ零時は、まるで世界から切り離されたかのように、歩道に静止していた。


風が彼の長い黒髪を揺らす。その瞳は赤く、しかし穏やかで、感情の色を欠いていた。「……また、来てしまったか」と、彼は静かに呟いた。


空気中に二つの気配を感じる。ミジャルンとアシヤだ。彼女たちはまだ空中に漂い、先ほど彼が放った圧力から逃れようとしている。


零時は一本の指を立てた。見えない糸を引くように空間を掴むと、二つの体がゆっくりと現れた。まるで世界が今になって、彼女たちがそこにいるべきだと気づいたかのようだ。


ミジャルンは、まだ意識が朦朧としているアシヤを支えている。


ミジャルン:「お、お兄ちゃん……一体何が起こったの……?」


零時はただ、じっと見つめるだけだ。


零時:「どうでもいい。君たちが無事なら、それでいい」


その声は軽い。しかし、その瞳は……空虚だ。まるで、この世界よりも遥かに大きな何かを見ているかのようだ。


アシヤがゆっくりと目を開ける。零時の姿を捉えた瞬間、彼女は言葉を失った。


アシヤ:「……零時……あなたは……生きていたのね」


零時は答えず、ただ静かに頷いた。それだけで十分だとでも言うように。


しかし、大地が震える。物理的なものではなく、現実そのものが何かに気づいたのだ。ザラビスが、本来なら存在できない世界に戻ってきたことに。


ミジャルンは周囲を見渡し、同じものを感じ取った。


ミジャルン:「……お兄ちゃん、もしここに留まったら……世界がまた、壊れてしまうかもしれない」


零時は小さく鼻を鳴らした。怒りではない。ただ……疲れているのだ。


零時:「分かっている。だが……どうしても、会いたい人がいるんだ」


アシヤとミジャルンは驚愕した。


アシヤ:「誰……?」


零時は街の建物、空、光の反射を見つめた。全てが脆く感じられる。


零時:「かつて、その名前を呼んだ者だ」


彼の足が動き出す。音もなく、振動もなく。しかし、周囲の空間が頭を垂れるかのように。


……


東京の空は静けさを保っている。しかし、零時は見えない何かを掴むように、静かに手を上げた。


空気が微かに震える。物語そのものが、再び糸を紡ぎ始めるかのように。そして、歩道の脇の空白から……内知ゆかがゆっくりと現れた。まるで、世界が今、彼女のことを思い出したかのように。


ミジャルン:「……お兄ちゃん、彼女は……」


零時:「殺したわけじゃない。ただ、現実から外しただけだ」


静寂が訪れる。ミジャルンは言葉を失った。これは力ではない、権能だ。


過去の物語次元にて


無限に広がる白い空間。無数の本が、小さな銀河のように漂っている。その中心に、青紫色の長い髪を持ち、宇宙インクのドレスを身にまとった少女が座っていた。その瞳は穏やかで、静かすぎるほどだ。


ヴィオリエ。

メタ神のすべての創造主の女王。

様々な存在の物語の作者。


彼女は書きながら言った。


ヴィオリエ:「ふむ……普通なら、あんな存在は消去するのに。今回は、保存するように言うのね。一体、何があったの?」


零時は本来の姿で、薄く微笑んだだけだった。


零時:「何もないよ。ただ……何かが起こるのを、自分の目で見てみたいだけだ。物語を変えないでくれ」


ヴィオリエ:(小さく鼻を鳴らすが、その目は優しい)

「そんな風に笑うと、不気味だわ。分かったわ……彼女を私の本に保存しておきましょう」


零時は同等の存在として、軽く頭を下げた。接続が切れる。


現実世界へ


零時はゆかの額に触れた。そして……零時とミジャルンに関するすべての記憶が消え去った。


ゆかはゆっくりと目を覚ます。その瞳は戸惑い、純粋で、生き生きとしている。かつて悲劇に触れた者のものではない。


ゆか:「……え? 私……さっき、気絶してた?」


しかし、彼女は温かい笑顔を浮かべた。まるで、悲劇などなかったかのように。


零時はまるで初めて会ったかのように、自己紹介をした。


零時:「俺は零時。こっちは妹のミジャルンだ。俺たちは……この街に引っ越してきたばかりなんだ」


ゆか:「ああ!」

彼女は明るい笑顔を見せた。「私は内知ゆか。16歳。勇者アカデミーに通っているの!」


ミジャルンはすぐに驚き、手を上げた。


ミジャルン:「勇者アカデミー? お兄ちゃん、お兄ちゃん! 私もそんな学校に行ってみたい!」


零時は顔を向けた。表情は相変わらず無表情だが、かすかに温かさが宿っている。


零時:「ふむ。面白いかもしれないな。いいだろう。一緒に行こう」


ゆかの目は太陽のように輝いた。


ゆか:「それじゃあ、一緒に登録に行きましょう! 私がアカデミーまで案内するわ!」


零時、ミジャルン、アシヤ(まだミジャルンの背中で眠っている)、そしてゆかは、東京の喧騒の中を歩き始めた。


しかし……


彼らの背後で、空が微かに震えた。まるで、口にしてはならない名前が、再び世界の物語を踏みしめたかのように。


シーンエンド


新たな旅が始まる。

「勇者アカデミー。そこは、普通の人間と、そうでない何かが交わる場所」

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