13.異世界の魔王との戦い
奈落の王座
冷たい石の階段に、レイジ、ミジャルン、ヤイの足音が響く。暗い石壁はまるで何かを見ているかのように、この世界よりも遥かに大きな何かが目覚めようとしているのを知っているかのようだ。
その先に現れたのは、角を持つ巨躯の魔王ヴァウ。その赤い瞳は、まるで燃え盛る炎のように輝いている。憎悪と野望が渦巻くオーラが、部屋全体を覆い尽くしていた。
「ようやく来たか、人間よ」
ヴァウは嘲笑を込めて言った。
「いや……その忌まわしい名で呼ぶべきか?」
レイジは薄く笑い、静かに歩を進める。その瞳には炎の光が映っているが、感情は一切感じられない。
「その名は……この世界には相応しくない」
彼は静かに言った。
「そして、それを知る者はもう誰一人として存在しない」
ミジャルンとヤイは彼を見つめた。レイジの真意を理解していた。彼の真の名、ザラビスは、その存在をあらゆる現実の概念から消し去ってしまうほど危険な名なのだ。
戦いの幕開け
ヴァウが手を高く掲げると、王座の上の空が裂けたかのように見えた。無数の地獄の炎の槍が現れ、彼らに向かって放たれる。
レイジは飛び出し、虚空を殴りつける。すると、炎の槍は進路を変え、壁に激突して赤い光を放って爆散した。ヤイは即座に動き出す。その体はほとんど消えかかり、二重の影を形成した。彼女は横に滑り込み、ヴァウの胸を蹴り、壁に跳ね返る。
「今だ、ヤイ!」
ミジャルンが叫んだ。
ミジャルンは呪文を唱える。「エセリオン・スパイラル」。紫色の魔法の渦が剣の周りを回転する。彼女は空気を切り裂き、長い斬撃が闇を切り裂き、ヴァウの防御壁を打ち砕いた。
しかし、ヴァウは高らかに笑った。
「貴様らの力など……ただの火花に過ぎん!」
突然、床が砕け、黒い根が鎖のように現れ、ヤイとミジャルンの足を絡め取った。レイジは飛び出し、稲妻のような速さで回転蹴りをヴァウの頭部に叩き込む。ヴァウの角にヒビが入った!
「へっ」
レイジは小さく笑った。
「頭はもっと大事にしろよ」
ミジャルンは拘束を解き、エレガントな動きで黒い鎖を切り裂いた。ヤイはまだ体が震えているが、立ち上がり、その瞳は銀色に輝いている。彼女は風と雷の呪文を組み合わせ、ヴァウの胸に多重攻撃を放った。
全てが高速で動く。打撃、斬撃、光の閃光。衝突音が嵐のように空気を震わせ、三人の動きは調和している。
レイジは人間離れした速度で、しかし絶対的な精度で前進する。その拳と蹴りにはマナのオーラは含まれていないが、全ての動きが正確で、鋭く、そして致命的だ。彼は再び回転し、ヴァウの頭部に強烈な一撃を叩き込む。骨が砕ける音が響き渡った。
ヤイは息を切らしているが、レイジは優しく彼女を見つめて言った。
「お前は強い。迷うな」
ヤイは微笑み、目に涙を浮かべた。「はい、先生……」
ミジャルンは兄をちらりと見て、かすかに微笑んだ。「相変わらずのスタイルね、レイジ」
ヴァウの中に潜む謎
しかし、レイジは突然動きを止めた。彼はヴァウを鋭く見つめ、目を細め、瞳を輝かせた。
「待て……奴の体の中に何かいる……」
レイジはそう思った。すると、突然、異質な囁きが頭の中に響いた。
「……レイジ……助けて……」
その声は、アシアだった。
レイジは拳を握りしめ、周囲のオーラが揺らぐ。一瞬にして、その体は視界から消え、超音速の速度で青い閃光だけが残った。
「出力00000.000001%」
彼は淡々とそう言った。
レイジの拳がヴァウの腹部を貫く。巨大な爆発が宮殿全体を揺るがした。
崩壊
黒いエネルギーの渦から、女性の体が弾き出される。意識を失い、傷を負っているが、生きている。
「アシア!!!」
ミジャルンが叫んだ。彼女はすぐに駆け寄り、体が床に叩きつけられる前に受け止めた。涙がミジャルンの顔を伝い、彼女はアシアを強く抱きしめた。
魔王の終焉
魔王ヴァウは震え、その体はゆっくりと干からびていく。その体内の全てのマナと力は、知らぬ間にレイジに吸収されていたのだ。その体は痩せ細り、骨が浮き出ている。
レイジはヤイを見つめ、小さく微笑んだ。
「さあ……お前の番だ、ヤイ」
一瞬にして、レイジは吸収した全てのマナをヤイの体に転送した。青と白の光が彼女を包み込み、そのオーラは頂点に達し、髪はエネルギーの圧力でなびいている。
ヤイは叫び、前に飛び出し、全力を込めてヴァウを斬りつけた。その一撃は空気を切り裂き、王座を破壊し、そして初めて……魔王は苦痛の叫びを上げた。
そして、静寂が訪れた。ヴァウの体はガラスのようにひび割れ、そして暗い塵となって消え去った。
戦いの後
ミジャルンは兄を見つめ、まだ意識を取り戻し始めたアシアを抱きしめている。
「……兄さん、私……もう二度と会えないかと思った」
レイジは二人を見つめ、久しぶりに優しく微笑んだ。
アシアはゆっくりと目を開けた。
「レイジ……あなたは……まだ生きていたのね……」
「いつもな」
彼は短く答えた。
「また会うって約束しただろう?」
ヤイは立ち上がり、安堵と感動で体が震えている。彼女は先生の前に跪いた。涙が頬を伝う。
「ありがとうございます、先生……どうお礼を言えばいいのかわかりません」
レイジは温かい眼差しで彼女を見つめたが、その顔の上の作り笑いは深い苦悩を物語っている。
「それなら……友好的な悪魔と友達になりたいか?」
ヤイは泣きながら微笑んだ。
「はい……もしよろしければ」
レイジは小さく笑った。「それなら、すぐに会えるだろう」
一瞬にして、ヤイの周りの空間が震えた。青い転送光が彼女の体を包み込み、彼女が何か言う前にレイジは彼女をニリオン多次元宇宙に転送した。そこはニリオン王国の最初の門の真上だ。
青い光が消え……ヤイは巨大な黒い門の前に立っていた。その上には奇妙なシンボルが回転している。空気は異質だが、脅威は感じられない。
数人の悪魔が通り過ぎる。彼らの肌は金属のように輝き、翼は非対称で、瞳は二色だ。彼らは一瞬立ち止まり、ヤイを角からつま先まで見つめた。
「悪魔か?」
「ふむ……オーラが違うな。まるで別の世界から来たようだ」
ヤイはただ黙って、困惑した様子で周囲を見渡している。門の前で、二つの黒い翼を持つ銀色の鎧を着た女性がゆっくりと降りてきた。
「ニリオン多次元宇宙へようこそ」
彼女は淡々とそう言い、その眼差しは鋭い。
「私は、最初の門の守護者、ヴェルキラ。名を名乗りなさい、新参の悪魔」
ヤイはしばらく黙っていた。そして、小さく、しかし確かな声で答えた。
「ヤイ……ヤイ・ホムラ」




