第14話 救出
慶の母は、養護教諭の深田教諭と寺田さんが亡くなった場所へ向かって歩いた。
「慶君、美由さんのこと大切なんですね」
先程の様子を思いだし深田教諭が、慶の母に話しかけた。
「初恋なのかしらね?」
慶が相談してきたときから見守ってきて彼女のために必死で立ち向かった息子を目の当たりにして微笑ましくもあり寂しくも感じていた。
「息子をとられちゃう気持ちとか無いんですか? よく、あるじゃないですか」
深田教諭は、興味津々といった様子で慶の母親に問いかける。
「無いわよ。彼女を紹介してくれるのを楽しみにしているのよ」
慶の母は嬉しそうに話した。
<対象者が接近中>
組織本部からの連絡がイヤホンを通して二人に告げられた。慶の母と深田教諭は顔を見合わせ頷き合うと作戦を開始した。
事故はあの交差点で起きている。暴走した車が信号待ちの歩行者に突っ込んで数名が犠牲となった大きな事故だった。
あの交差点に向かって歩いてくる寺田さんを確認すると、深田教諭と慶の母は行動に移る。
「あらっ、寺田さんじゃない」
深田教諭が声をかけた。
「深田先生、生徒より帰りが早いってどうなの?」
「あら失礼ねぇ、養護教諭の集まりよ」
「集まって何してるんだか」
その会話をしていたその時、背後で大きな音がしてざわつき出した。
寺田さんが巻き込まれていた事故が起きていた。起きた事故は変わりない。しかし、被害に遭った内容が少し変わった。
<任務終了、撤収せよ>
イヤホンから組織本部から連絡が入る。深田教諭と慶の母は、何事も無かったように寺田さんと別れた。




