②-2
智毅は俺の顔を見ると、にやりと笑ってこう言った。
「あ、そういえば瞬!おまえに妹できたんだってな!」
出た!その話題!
まあLINEしたときから、次会うときには色々聞かれることは覚悟してたけれど。
智毅には弟がいる。
俺は1人っ子。
親戚も男ばっか。とかで、姉とか妹だとかに無縁の生活を送ってきた俺たち。
智毅は、なぜか無類の「姉」好きで、昔から年上の女性に強い憧れを持っている。アニメでもドラマでも好きになるのは「おねえさん」タイプだ。
でも……杏奈見たらコイツでも…きっとロリに走るんじゃなかろうか。
それほど、杏奈は絶対的な美少女だった。
「写真あんだろ。見せろよぉ~」
「今はないよ。だってついこの間できた家族だぜ。家族写真なんて撮れねえっつーの」
「そりゃそっか~」
智毅の単純な性格に救われる。
一応用意はしてあった。杏奈の写真。
例のごとく俺につっかかってきたときのぶーたれた顔だ。
あっかんべーをしてるのだが、それも見方によっちゃ、可愛いかもしれない…。
杏奈は、なにしても絵になる、まさしくアイドルになるために生まれてきたような女の子だった。
まあ…いつかは杏奈とも会うときが来るとは思うのだが。
智毅と俺とはよく家も行き来してるし。
「まあ、話に聞くと、杏奈っていうガキよりかは、都さんっつーおかあさまの方が俺的に好みだけどな」
「やめろよ。親父の再婚相手なんだからな」
「うしししし……」
智毅が心底嬉しそうに笑う。
こいつは……。
俺はあきれ果てて、智毅を見る。
ドアが開いて、熊谷教授が帰ってきた。
「あれ、井坂も来たのか。困ったな……。お前にもおごらなきゃならないじゃないか」
「あざーっす! ミックス亭のステーキランチでいいっすよ」
「ミックス亭は、昨日から年末年始の休みだ」
「ガーン……」
智毅がわざとらしく、壁に手をついてよろける真似をする。
熊谷教授と智毅のやりとりを聞きつつ、俺はいそいそとコートを着込んだ。
マフラーは……親父のを借りた。
(ぐりとぐらのショックを、俺もひきずっているみたいだ)
……ハートがちらばるピンクのマフラーだってことに気づいたのは、駅に着いてからだった。
仕方ない。あくまでも彼女からもらったんだぜ~という顔をして、大学まで来た。
「う~ん、そしたら……隣の静蘭の学食に行くか!!」
熊谷教授のその言葉を聞いて
俺は持っていたマフラーをぼとりと床に落とした。
「えっ!女子高なのにいいんすか~? 乙女の園なのにいいんすか~?」
智毅が嬉々としてはしゃいでいる。
「あそこは確か、ホテルオークラが経営してるレストランがあるんだ。そこは出入り自由だったはずだ」
「やったな! 瞬! ……瞬?」
俺は、ゆっくりと智毅の方に顔を向けた。




