06 光の射す方へ……
(先ずは、水源を探さないとな……水が確保できなければ、そう長くは生きていけないだろうし……)
俺はスマホで地図アプリを起動した。
だが、当然と言うか『通信中』のままで、一向に地図アプリが起動することはない。
「俺は何をやってるんだ?」
異世界に来たんだから、異世界の地図がある訳がない。
それに、さっき神様が『電気が無い』とも言っていた。
電気が無いのに電話、ましてやスマホなんて使える訳がない。
そもそも、携帯のキャリアがある訳がない。
(これも、使い物にならないか……)
置いて行こうとも考えたが、それ程邪魔になるものでもないから持って行くことにしよう。
それに、音楽を鳴らしながら進めば、熊除けぐらいにはなるだろう。
熊の様な生物が居れば、の話ではあるのだが……
(闇雲に進むのも問題あるしな……どうしたら良いのか……)
鬱蒼と木々が生い茂る森の中。
何か目標となる者が無いと、真っすぐに進む事すら難しい。
『歩き回って、結局元の所に戻ってきました』の様なことになる事だけは避けたい。
辺りを見回して、何か目標と出来そうなものが無いか探す。
(あっちの方が、少し明るいか?)
遥か先に、ほんの僅かではあるが明るくなっている様に見える所がある。
(何も手掛かりが無いよりはマシだろ……)
俺は、その少しだけ明るくなっている方へと歩み始める。
(おっと、印を付けておかないとな)
木の幹へ、ナイフを立てて傷をつける。
×印と進行方向へ矢印のの先を向けた形で木の皮を剥ぎ取る。
(これで、迷わなくて済むだろう)
同様に、×印に木の皮を剥ぎながら進んでいく。
暫く進んで明るい場所へと進んでいくと、少しずつではあるが、木々の間隔も開けて来ている様に感じた。
(広場みたいだな……)
漸く着いたその場所は、小さいながらも少し拓けていた。
ここを拠点とすることも考えたのだが、直ぐに否定した。
(ここを拠点としても、水が確保できていないからな。
拠点は水場の近くじゃないとダメだ)
此処からの目標を探そうとした時に、更に遠くの方で明るくなっている場所を見つけた。
(よし、今度はあそこを目指そう)
今までと同じように印を付けながら、明るくなっている方を目指して進んだ。