21 序でだから……
両手一杯に抱えた薪をテントの横に降ろす。
「ふ~、疲れた」
誰に向けて言う訳でもない独り言が、思わず口から出てしまった。
洞窟からの帰り道も薪を拾い集めた結果、それまでに集めた薪と合わせて両手では抱えきれない程の薪を手に入れることが出来た。
(一度に全部持って行くのは無理だな)
薪は、あればあるだけ良い。
あの洞窟に何者かが居るのか分からない以上、火を絶やす訳には行かない。
もしかすると、火を怖がることのないものが居るのかも知れないが、そうだとしても火を絶やしても良いと言う理由にはならない。
火があれば水を沸かして安全な飲み水にすることもできる。
それに、川魚を捕まえられたとしても生のままでは食べると危険だが。煮たり焼いたりなどの火を通すことにより、安全に口の中へと入れることが出来るようになる。
火がある事でデメリットが無いわけではないが、メリットはそれを遥かに上回る。
テントの前にあった焚き火は、燻ってはいたものの熱を発していた。
薪を上に置いて横から息を吹きかければ、直ぐにもまた炎となり薪を燃やし尽くそうとするだろう。
(少し追加して、また薪を取りに行ってくるか)
途中、何度もバランスを崩して両手から零れ落ちそうになった薪から、細く火のすぐに着きそうな2本と、それよりは太めの2本を選んで焚き火の上に乗せる。
そして、焚き火を横から覗き込むような体勢になり、口を窄ませて空気を焚き火へと送り込む。
『ボワッ』
「危ね」
2~3度空気を送り込んだ所で、焚き火から突然炎が上がる。
咄嗟に顔を焚き火から逸らしたが、少し何かが焦げたような臭いがした。
(前髪でも焦がしたかな?)
確認しようにも、鏡なんてものは持って来ていないし、その代わりになる様な物も持ち合わせていない。
(まぁ、少し焦がした位なら別にどうでも良いか……)
今現在、此処には俺しか居ないのだから、他人の目を気にする必要は無い。
前髪を焦がしたことや、それにより少し短くなってしまったとしても、恥ずかしがる必要は全くない。
気を取り直して、再び、薪を拾い集めておいた所へと向かって歩いた。
(序だから、もう少し探していくか……)
此処にある薪を拾い集めて持って行けば、今日だけではなく明日中も火を絶やすことなく燃やせ続けられるかもしれない。
だけど、量的には両手一杯と言うほどではなく余裕がある。
そうであれば、持てるだけ持って行った方が良いのは間違いない。
少し拾った薪を再びその場へと降ろして、森の中へと入って行く。
時折、来た方向が分からなくなることが無いように振り返りながら……




