20 洞窟
(何か良いものでも落ちてないかな……)
森へと入り、薪を拾いながら他にも何かないかと探していた。
枯れ木ならば至る所に見つけられるので、薪集めには困らないのだがそれ以外の者も欲しい。
元居た世界ならば、何処へ行こうともごみの1つや2つは落ちていただろうが、此処にはごみ1つ落ちていない。
ごみが無いという事は、此処へ来た人間は居ないという事を表す。
(ホント、もう少し街の傍にでも置いてくれても良いと思うんだけどな……人が住んでいる世界なんだよな? 本当に……)
満員電車に揺られたり、街中の雑踏を歩くだけでも注意しないと他人にぶつかったり、会社に行けば何かと難癖をつけてくる上司が居たりと、他人の存在を疎ましく思うことが多かった。
だから、『寂しくないの?』とか、『ぼっちかよwww』とか言われてもソロキャンプに行くことが多かったし、楽しんでいた。
普段は他人が疎ましいと思うからこそ、時折行うソロキャンの価値が上がる。
今はソロキャンがどうのうより、生き残る事を考えなければならない。
街や村でもあれば、俺1人くらい増えたとしても暮らして行けるだろう。
まず、肉食動物に襲われる可能性が減るのは大きい。
俺1人で立ち向かうのは無理でも、他人と力を合わせれば立ち向かえるだろう。
また、食料も手に入るだろう。
当然、対価を差し出す必要はあるだろうが、身体を差し出せば良い。
言い方が悪かったが、その分働らくことになるだろうが、それは当然の事だ。
働かざる者、食うべからず。
多分、この世界でも有効な真理だと思う。
もしかすると、働かなくても良い世界なのかも知れないが、それはそれで良かったと思うだけだ。
そんな事を考えながら森の入口付近を彷徨っていると、昨日下りてきた崖へと近づいていた。
(石なんて拾っても、仕方が無いしな……崖沿いに探してみるか)
元来た方へと戻っても、粗方目ぼしいものは拾って来た筈だ。
それならば、先に進む方が何かあるかも知れない。
崖に沿って進んでいけば、迷う様なことも無い。
崖の近辺だと落石の恐れもあるのだけど、先の方を見ても落石により倒されたような木や、地面には下敷きになった様な草も見当たらない。
という事は、それ程頻繁に落石がある訳ではないという事だ。
(ま、大丈夫だろ?)
それまでに拾い集めた薪をその場に置いて、崖沿いに進むことにした。
それでも、念のために森の浅い所を崖沿いに進んでいく。
木がなぎ倒されるような岩が落ちてきたらどうしようもないが、そこまで大きくない石ならば木の陰に隠れれば防げるだろうと考えたからだ。
多少、歩き難いが、安心・安全には代え難い。
(こっちの方が、薪に出来そうなものが多いかも知れないな……)
薪は帰りに拾い集めることにして、手ぶらのまま森を進んでいく。
暫く進んで崖の方を見ると、洞窟らしき穴を見つけた。
(こういう洞窟には、大抵、肉食動物がいるものだよな……)
此方の武器となりそうなものはナイフ1本だけ。
この装備で勝てそうな相手と言えば、小動物ぐらいなものだろう。
ギリでキツネと言った所か? それも、キツネを目の当たりにして、立ち竦むことなく戦う事が出来たのならと言う条件の下で……だ。
(中の住人が、どんな奴なのかだけでも分かれば嬉しいんだけどな……)
俺は中の気配を感じることができる特別なスキルなどは一切持っていない、何処にでもいる一般成人男子だ。
暫くの間、洞窟の入口を見張っていたが、入り口を利用する者は現れなかった。
近くの住人が大人しい奴だったら良いが、凶暴な奴でこちらに遠征してきたら……と思うと、テントの中でのんびりと寝ていられない。
(このまま、ここでこうしていても仕方がない……今出来ることと言えば、火を絶やさない様にすること位だろう。
薪を集めて帰るか)
踵を返して、テントの方へと薪を拾いながら帰った。




