表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/13

 大切なもの(3)

   …

 

 ログインすると、ミラージュワールドのセーブポイントに現れる。現実世界からログインするときは、どこからでも可能だが、逆にミラージュワールドからログアウトするときは、基本的にセーブポイントに戻らなくては行けない。

 つまり、モンスターにヤラれそうになったからと言って、すぐに現実世界に逃げるというのは不可能なのだ。

 ユウトはC地区の北の方のセーブポイントに姿を現した。

 地区というのは、フィールドの場所の表し方で、現在A地区からJ地区までが確認されている。

 ミラージュワールドのフィールドは、現実世界の街の外見を模しており、『ミラーワールド』という言葉がふさわしい。ただし、すべての場所がフィールドになっているわけではない。例えば、同じ街の中でも、北はフィールドになっていても、南はそうではないという場合もある。

 ユウトの服装は、高校の制服ではなく、白いシャツに赤み掛かった黒いズボンというに変わっていた。一見するとただの私服だが、防御力を備えた『装備』である。

 さっき見たのが本当にモンスターのウルフなら、現実世界の小学校とリンクしているこのあたりのフィールドにウルフタイプのモンスターが居るはずだ。

 白い光りを放つセーブポイントから足を踏み出す。

 周りを見渡すと、学校の形をしたの建物が目にはいる。

 そこに向かって駆け出した。


   …


 最初の鳴き声が聞こえたのは、学校の敷地内に入ってすぐのことだった。

 それと同時に、弓を取り出して、構えるユウト。

「グァ!」

 短く吼え、横から狼が走ってくる。ユウトは、それに向かって性格に矢を放った。命中し、狼のHPゲージを2分の1以上減らす。

 大きく後ろに跳び、さらに矢を放つ。「ァ!!!」と短い断末魔をあげたあと、狼は消え去った。

 だが休む間もなく、校舎の影から同時に2匹の狼が飛び出してくる。

 ユウトは素早く矢を放つ。矢はクリティカルヒットし、狼のHPゲージをゼロにしたが、それと同時に、もう一匹が飛び掛ってきた。

 迎撃は無理と判断し、狼が跳び上がった直後に、横に大きく跳んだ。

 着地と同時に矢を連続で引いて放つ。2本の矢で狼が光りになって消滅する。

 完全にそっちに気を取られていた。だから、後ろからこん棒を振りかざしてくる狼男に気がつかなかった。

「!」

 咄嗟に目を瞑る、だかその前に、少女の声が響き渡った。

「ブレイズエンド!」

 炎の弾は勢い良く狼男にあたり、その体を吹き飛ばした。

 ブレイズエンド──炎系魔術の奥義だ。

 ユウトは呆然と、狼男が炎に包まれながら光に代わるのを見つめていた。

 そこに声の主が歩み寄ってきた。

「ハルカ──」

 声の主は、ハルカだった。  

「──強化結晶使ったんだから感謝しなさいよね」


   …


「何で……お前がここに」

「お前って呼び方止めてよ。ハルカ。ちゃんと名前で呼びなさい」

 そう言われて、ようやく我に帰った。

「……先輩。助けてくれたことには礼を言います。助かりました」

「そう」

「でも、先に言っておきます。俺の考えは変わりません」

「──」

 ハルカの透き通った目に見つめられると、思わず「ハイ」と言ってしまいそうだ。

「ふーん。まだ言うんだ。でも分かったでしょ? 無関係じゃないのよ。あなたの弟さんが危険に晒されるわ」

「……」

 言われずとも理解していた。

 だが──次の言葉はまったく予想外だった。

「C地区に『ダンジョン』が現れたわ」

 彼女は冷静に、しかしはっきりと事実を告げた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ