5 ニコラス・ローズ
あれから、ヒナタに念話をかけてみた。
ヒナタがコリンの立場で、
『エド王子に私が一方的に片想いをして失恋した』
という内容を本人に告げた件についてだ。
ちなみに、エド王子は記憶がなくなっているため、
私たちが入れ替わりカップルなことを知らないようだ。
ヒナタは飄々とした雰囲気で
『ああ。エド様、風子に喋っちゃったんだ』
そう言った。
「どういうつもりなの?…というか、
やっぱり私の態度ってそんな変だったのかな?」
『うん。勝手なことして悪いけど。
風子がエド様を見て泣きそうな顔してたり、おろおろして見えたから。
勘のいい彼に変だと思われる前に先手を打たせてもらった』
「そ、そうなんだ」
『それに、エド王子の記憶が消えたってことは、
風子はエド王子とのエンディングは迎えないということでしょ?
わざわざ記憶を掘り起こして混乱させることもないと思って」
「………うん」
そうなのかも。
『アイリス様にもそのように話を通してあるから』
すでに根回し済みとは…。
さっきから、ヒナタの声の聞こえ方が変だ。
何か動きながら喋ってるような感じだ。
「ヒナタ、今どこで何をしてるの?…」
『今魔物狩りでちょっと忙しいから。
あっ。レアなやつがいる。ごめん、また今度ね』
念話が切れた。
数分後にこちらから念話をかけても出なかった。
拒否されていた。
時間を置いて何回も何回もかけたけれど、
結局ヒナタは、その後数日ほど念話に出ることはなかった。
私は不安になっていた。
不安……というか、
一方的に失恋したことに仕立てられた上に、放置されてしまった。
一人で不満に思って、それをぶつける相手もいない。
エド王子には戻れないし、戻るつもりもない。
ヒナタは謝ってくれたけど、
私をエド王子に渡したくない、自分の物にしておきたいのだろう。
私の気持ちは優先されないのか。
また自分に選択権がないように思えて不満が募った。
自分で自分のことを決められない人生だったと、過去に悩んだこともある。
自分だってたまには好きに生きてみたい。
そんな時。
ニコラス様が声をかけてきた。
お茶会の招待状を持って現れた。
「レベッカさーん。お茶会!
お茶会なら参加できるよね?」
じゃーん…って感じで招待状を見せてくる。
「え?ええっと…」
キラキラした王子様スマイルで、(王子じゃないけど)
無邪気に言われると、どうしても怯んでしまった。
「誰かと一緒にでもいいんだよ?
お友達でもいいし。アル先輩でもいいし。婚約者の彼とか。
気軽な気持ちで参加OKだから!」
気軽にと言われても、相手は高位の貴族なのだ。
いいのだろうか?
「何で私なんですか?
どうして興味を持ってくださるのでしょう?」
以前からの疑問を口にする。
「僕だって男だからさ。一応鍛えてはいるよ。
魔法も練習してる。
だけど、パートナーが強かったら……っていう憧れがあるんだよね」
ホワホワした空気を漂わせながら、夢見る感じで語る彼。
「でも私には婚約者が…」
「そこはさ。後からどうとでもなるわけだよ。
話し合って婚約解消してもいいし。
大事なのは愛し合う2人の気持ちであってね。
婚約っていうのは形ばかりのものなんだよ」
「えっと…」
まずい。妄想のすごい人なのか?
愛し合ってはいないよね……
「ごめんね。先走りすぎたかな?
将来的にそうなったらって話だからね」
まともなのかな?
一応空気を読んだようだ。
「じゃっ、そういうことで」
笑顔で手を振って、あっという間に去って行った。
不思議な人。
非常識とも思えることも笑顔で消し去るような人。
圧倒されてしまった。
ニコラス・ローズ……彼は一体どんな人なのだろう。
公爵家は王家に近い存在だという。
私は王女であるお姉ちゃんに聞いてみることに決めた。




