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【完結】異母妹に『ずるい』と言われ全て奪われたので、より『ずるく』生きてみせます【5/29後日談追加】  作者: 木風


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3/5

第三話 お姉さまはやっぱりずるい!

ルーシーの目が揺れた。

すぐに涙ぐむかと思ったが、彼女は低い声でいつもの言葉を吐く。


「……やっぱり、ずるい」


その声は、いつもの甘ったるい響きではない。


「お姉さまは、最初から全部持っていたのに。名前も、席も、教育も、未来も。わたくしは何も持っていなかった。だから欲しかっただけなのに、どうしていつも、最後にはお姉さまのところへ戻っていくの」


それは責める声というより、子どもじみた本音のよう。

エレーナは少しだけ、息をつく。


「あなたは、わたくしが持っていたものしか見なかったのね」

「だって、本当に持っていたじゃない」

「ええ。けれど、持っていたものの代わりに、失ったものもあったわ」


ルーシーは唇を噛み、結局また泣くのだ。


その数日後、社交界に奇妙な噂が流れた。


「エレーナ嬢は、婚約を奪われた悲劇を利用して王太子に取り入っている」

「気高いふりをして、実はずいぶん計算高い」


誰が流したのか、考えるまでもない。


だがその噂は、思ったほど広がらなかった。

なぜなら、王宮の茶会でエレーナがまた一度、見事に場を救ったから。


その日、東方からの客人が持ち込んだ献上品の名を、給仕役の若い貴族が読み違え、場が微妙に凍りついた。

下手をすれば礼を欠いたと受け取られるところだった。


エレーナは即座にその国の言葉で品を褒め、発音の揺れについて穏やかに補足した。

客人は笑顔を取り戻し、その場は和やかに収まった。

茶会のあと、クロヴィスは人払いをして言う。


「噂のことは知っている」

「でしょうね」

「気にするか」

「少しは。けれど、否定のために騒ぐほどではありません」

「なぜだ」

「わたくしが何者かは、見てくださる方が見てくだされば、それで十分です」


クロヴィスはしばらく黙っていた。

それから、いつになくはっきりした声で告げた。


「そういうところが好きだ」


エレーナは言葉を失う。


「……殿下」

「お前は、自分を飾ることもできるし、隠すこともできる。それでも肝心なところでは、嘘をつかない。欲しい」


最後の言葉だけが、不器用なくせに妙に熱を帯びて聞こえる。

エレーナは扇を閉じ、胸の奥が静かに揺れるのを感じた。

計算のつもりだったはずなのに、いつの間にか、心のほうが先に動いてしまう。


そんなある夜会で、ルーシーがエレーナの前へ立った。

アルフォンスを伴って。


「お姉さま」


久しぶりに聞くその声は、甘く、しかし棘を隠しきれていない。


「最近、王太子殿下とよくお話ししているとか。……ずるいですわ」


エレーナは穏やかに微笑む。


「まあ。相変わらず、また『ずるい』なのね」

「だって、お姉さまはもとから社交界で評判がよくて、それに乗じて殿下に近づいて。わたくしはあんなに頑張ったのに、殿下はお話しすらしてくださらなかった」


アルフォンスがわずかに眉をひそめたが、ルーシーは止まらない。


「昔からそう。お姉さまは何でも持っていて、最後には何でも手に入れるのよ」


エレーナは一瞬だけ、婚約指輪を返した日を思い出す。

自室で落とした、たった一滴の涙を。


「ルーシー。あなたは昔から、わたくしをずるいと言っていたわね」

「だって本当のことですもの」

「そうね。わたくし、少しずるいのだと思うわ」


ルーシーが目を見開く。


「婚約者を奪われても、両親の愛を失っても、人前で泣かなかった。笑って、立って、観察して、使えるものを使って、自分の居場所を取り戻したもの」

「……」

「あなたが涙を使うなら、わたくしは微笑みを使う。あなたがか弱さを見せるなら、わたくしは折れない姿を見せる。ただ、それだけの違いよ」


ルーシーは何も言えなかった。

アルフォンスもまた、黙ったまま。

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よろしくお願いします( *・ㅅ・)*_ _))ペコ

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