41.興味本位は時々危険です
※飲酒の描写がありますがお酒は20歳になってからにしましょう
あまりにもエリがシロークを見てるので食事の用意ができるまでは預けることにした。
シロークも街に入ってから俺の首に巻き付きっぱなしだったから久々にのびのび動けて楽しそうだ
シロークとエリが遊んでいるのを見ているとボックさんが家に入ってきた
「ジュースとお酒買ってきましたよ」
「おぉ、ありがとな」
「エリちゃんは何して……って魔獣!?」
あぁ、ボックさんにはまだ説明してなかった
「安心してください、なにかされない限り人を襲ったりはしないので」
「安心ってどういうことです?なんで魔獣がここに」
とりあえずシロークの事を出会った経緯から説明した、本日三度目の説明をすることとなった。
「ボックは人に懐く魔獣なんて聞いたことあるか?」
「ありませんよ、そもそも魔獣と意思疎通ができたことがある人なんていないでしょう」
魔獣は基本出会い頭に襲ってくるため、意思疎通どころの話じゃないからな
森で出会った魔獣はたくさんいたけど襲う意思がなかったのはシロークだけだ、襲ってくるどころか目の前で倒れられたしな。
そうこう話していると食事が運ばれてくる、どうやら用意ができたみたいなので俺も配膳を手伝った。
テーブルの上には四人分の食事が並ぶとエリがそれに対して疑問を持つ。
「シロークはご飯食べないの?」
シロークは魔獣だから俺と同じく数日間食べなくてもなんの問題もないがみんなが食べてる中食べないのは可哀想だ、かと言って今からラビッテさんに一人分だけ作ってもらうわけにもいかない。
仕方ないのでアイテム袋から魔獣の足だけ取りだし以前切り取った跡があるところからまた同じようにとりラビッテさんから皿を1枚貰い俺の料理の横に置く
するとシロークはお肉の前にするすると移動し俺とお肉を交互に見るので「食べていいよ」と言うとガツガツ食べ始める。
ヘビって丸呑みのイメージだったけどシロークは一口ずつ食べている。
まぁ、正確にはヘビ型の魔獣なので蛇とは違うんだろう
それを合図にみんな食事を口に運び始める中、俺も「いただきます」と言ってから食べる。
師匠の家では毎食言っていたのでもう癖づいてしまったのだ
「そういえばコハクくん明日はどうするの?」
ラビッテさんに明日の予定を聞かれるが特に予定が決まってる訳では無い、ただ悩んでることがある。
「予定は無いんですけどしばらくここで活動するので拠点をどうするか悩んでるんですよね」
「拠点?」
元々は師匠と泊まった宿に泊まろうと考えていたんだがそれだと困ったことがある。
困ったこととはつまりあの宿屋の食事は魚しかないということだ、別に魚が嫌いな訳では無いが毎日毎日魚を食べるのは正直飽きるしどれくらい滞在するかも分
からないので出来れば避けたい。
ギルマス達はいつまででも泊まっていっていいと言ってくれるがそれは申し訳ないし俺も気が休まらないので丁重に断る
別に他の宿屋に泊まればいいだけなのでおすすめがないか程度で話してみるとラビッテさんから意外な提案が出てくる。
「それじゃあこの辺に小さい家でも買ってみたら?」
小さい家?確かに名案な気もするがいくら小さくたって家はそんなに気軽に買えるものじゃないだろう
「小さい家と言っても俺そんなにお金ないですよ」
「あら、お金の心配ならいらないわよ。だって今日出してもらった魔獣だけでお屋敷がたつくらいの金額になるはずよ」
あれってそんなに高値で売れるのか
ラビッテさんの言葉に俺が出した魔獣を知らないボックさんが怖々とした表情をする
「御屋敷がたつくらいって一体どんな魔獣を出したんですか……」
「王虎とオーガを複数体よ」
「なんかもうずっと常識外れですね」
どうやら、あの虎は本来群れを作らず一匹でいるらしい。王と名前につくだけあって強いため群れる必要が無いとか
それに関してはおかしいのは俺じゃなくて群れていた虎の方だ、あの森の生態系がおかしくしてるんだろう。
しかし、家か……
考えてみればそう悪い話でもないかもしれない。
自分の家ならシロークものびのびできるし、料理だってすることが出来る。
「そういえばお金っていつくらいに用意できそうですか?」
未解体の場合は解体後に料金が決まるため後日に貰うことになっている。
「明日、解体を終わらせて商業ギルドの職員に来てもらうからお金を渡せるのは明後日ね」
それなら明日物件を見回って明後日に支払いをするという流れで動くか、しかしそこでひとつの疑問が湧く。
「そもそもこんな子供に家を売ってくれるんですか?」
俺の見た目はパッと見十二歳くらいだ、家買いますと言ってもおままごとだと思われかねない。
「それなら冒険者カードを見せれば問題ないはずだぞ。心配だったら俺が紹介状書いてやるよ」
断る理由もないありがたい申し出だったので紹介状は頼むことにした。冒険者カードを見せても何となく信じられない気もするし
「なんなら僕もついて行きますよ」
「私も行きたい!」
「シャーン!」
いや、シロークは俺と一緒に行くのは当然だからな?
「お店はいいんですか?」
「自営業の魅力は営業時間を自由にできることですよ」
急に休んだら困る人もいるんじゃないのか?
そう伝えても大丈夫ですと言うので結局明日はボックさんやエリと一緒に商業ギルドに行くことになった。
食事も終えると俺はお礼に皿を洗いエリとラビッテさん達が先にお風呂に入っている。
最初は皿を洗おうとしたら断られたが泊めてもらって食事もご馳走になったので皿くらいは洗わせて欲しいと頼んだら渋々引き下がってくれた。
ちなみにギルマスとボックさんはまだテーブルでお酒を飲んでいる。
食事をしていた時よりほんのり顔が赤い
師匠もお酒は飲まないし今までお酒を飲んでる人と接したことがなかったから気にしたことがなかったがどんな味なんだろう?
皿も洗い終わり気になった俺は酒を飲んでいる二人に近づく。
「んあ、どうしたんだコハク」
「お酒って美味しいんですか?」
「なんだ興味があるのか、なら少しだけ飲んでみるか?」
「ちょっとダグマさん!ダメですよコハクくん、お酒は大人になってからです」
どうやらこの世界もお酒は大人になってかららしい
しかしどうしても気になった俺は二人の飲んでいたお酒を魔法で少し取り出し手の上にのせる。
ボックさんは止めようと手を伸ばしてくるが俺が口をつける方が早い。
手のひらに注いだお酒を口の中に入れると妙な味がした、苦いようなほんのり甘いようななんとも言えない味だ。
「まずい……」
うえっとなり口の中の味を変えるためにジュースを飲む。
「だははは、子供にこの味の良さはわからんか!」
「ちょっと、ダグマさんが飲むかとか言うからですよ!コハクくん体に変なところはありませんか?」
ボックさんは心配をしてくれるが特におかしなところは無い、飲んだ量も一口だけなのでそこまでどうこうなることは無いだろう。
なので大丈夫だと伝えると「お酒は大人になってからですよ」と怒られた。
魔人の体は人間とは違うので大人どうこうではない気もするがそういうものなんだろう、それにあんな不味いものまた飲もうとは思わない。
俺も椅子に座ってジュースを飲んでいるとたまに酔ってるのかギルマスがふざけて酒を俺に渡そうとしてその度にボックさんが止めている。
二人が遊んでいるだけだと思い無視しながらジュースを飲んでいると洗面所の方から女性がこちらに向かってくる。
ギルマスやボックさんはまだそれに気づいておらず酒を勧めそれを止めるやり取りを繰り返している。
心做しかこちらに向かって歩いている女性もとい、ラビッテさんさんの周りに黒いオーラが漂い始める。
シロークにも見えたのか床で寝転がっていたのに急に俺の首元に巻きついてくる
ついにラビッテさんがギルマスとボックさんの後ろに立ち思いっきり頭を殴った。
わぁ、あれは痛そう……
殴られたギルマスとボックさんは顔をテーブルにぶつけそのまま床にころがったかと思うと、殴られた頭を抑えながら悶え始める
「ぐあぁぁぁ」
「くぅぅぅぅ…………ラビッテさん一体何するんですか...」
「あんたらこそ子供に酒勧めるとかなにしてんのよ」
ラビッテさんの顔が般若のようだ、首元のシロークが震えているのが伝わってくる。
「さ、最初に進めはしたけど勝手に飲んだのはコハクだぞ……?」
「ちょっ……!」
ギルマスの余計な言い訳にボックさんが慌てる
「飲ませたの?」
「僕は止めたんですよ!」
酒を勧めていただけでなく実際飲んでいたという事実にラビッテさんが二人の顔に殴りかかった。
ギルマスの方は割と自業自得なところもあるがボックさんは完全に巻き込まれただけの人だ。
元の原因は確実に俺なのだがしかし、俺も下手なこと言うと殴られそうなので目の前でボコボコにされる二人を見守ることしか出来なかった。
ギルマス、ボックさんごめんなさい。
安らかに眠ってください。
心の中でご冥福を上げたので良しとすることにした。
「シャーン……」
首元でシロークが小さく鳴くがそんな事はもういちいち気にしない
「コハクくんも、目の前で飲んでて興味を持つのはしょうがないけど大人になるまではダメよ」
「ごめんなさい」
ここでわざわざ怒らせるようなこと言うつもりもないので素直に謝っておく。
すると同じくお風呂上がりのエリが洗面所の方から出てくる。
「お母さん怒ると怖いでしょ」
どうやら怒りが収まるまで向こうで待っていたらしい、さすが家族なだけあって慣れてるな。
俺は気絶している二人は置いといて先にお風呂を借りる。シャワーだけ被って体を洗って出ようかと思っていたら湯船にお湯が張ってあったのでせっかくなので浸かってみるととても気持ちよかった。
シロークもお湯が気持ちいいのか湯船をすいすいと泳いでいる
家を買ったら湯船付きにしよう...
小さな楽しみが増えお風呂から上がり着替えると気絶していた二人が顔をパンパン腫らしながら水を飲んでいた。
「僕は止めてただけなのに……」
「まぁまぁ、悪かったって。ああなったらもう誰にも止められないんだからよ」
なんとなく悪い気はしてたので謝っておく
「二人ともすいません」
「もう風呂から上がったのか、なぁに気にするな。いつもの事だから」
「そうですね、いつものことには違いありません」
二人とも昔を思い出すようにしみじみとそう言う。
あれがいつもの事なら二人とももう今頃生きてはいないんじゃないのか?
もうだいぶ遅い時間になってきたのでその日はもう寝ることにした。
ギルマスたちの家は立派な家だが元々三人で暮らしているため寝る部屋がひとつしかないためボックさんはリビングで寝ることになり俺とシロークが部屋をひとつ使わせてもらうことになった。
ベットは無いので毛布を床に引いてその上に寝転んでもう一枚の毛布を被る。
シロークは俺のとぐろを巻いて目を瞑っている。
「おやすみ、シローク」
「シャーン」
そう声をかけて目を瞑るとすぐに意識が遠くなって言った。
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