39.ミッションコンプリートです
カリンさんのもとへ行けと言われた俺はまっすぐギルドの受付に向かうとカリンさんの方から声をかけてくれる。
「コハクくん、こちらにいいですか?」
「ギルマスに言われてきたんですけどどうしたんですか?」
「いえ、ギルマスにコハクくんのランクを上げておけと言われましてかーどを借りてもいいですか?」
昇格?
「俺まだ何も依頼とかうけてないですよ?」
「何言ってるんですか、ギルマスから聞きましたよ。珍しい魔獣を大量に持ってきたそうじゃないですか。」
どうやらさっき持ってきた魔獣でランクが上がったらしい。カードを渡すとDだったランクがCランクになって帰ってきた。
この調子でいけば師匠から出されたBランクというお題も直ぐに達成できそうだ。
「それにしてもそんな歳でCランクなんて凄いですよ、どうやってそんなに強くなれたんですか?」
当然気になるところだろうがそれに関しては、魔人というのが大きい。俺もちゃんと毎日修練は欠かさずやっているが人間だったらここまで強く離れていないだろう。
当然まるまる正直には話せないので「秘密です」と誤魔化せばそれ以上詮索されることは無い。
カリンさんにお礼を言いギルドに置いてあるテーブルと椅子があるところに座ってジュースを頼んでギルマスたちの上がりを待っていると知らない冒険者らしき男に話しかけられる
「噂のチビってのはお前さんだな?」
ここのギルドは絡むことが義務化でもされてるのだろうか?
「噂のかどうかは知らないけど何か用?」
「そう怒るなって、さっきお前さんが出した魔獣を見たから気になって話しかけただけだよ」
少し魔力を出して威圧的に言うも男は大して気にしてなさそうにヘラヘラしながら俺の向かい側にある椅子に座ってくる。すると横から女性が走ってくるのが見えた。
「ちょっとレイン!なにして………ひっ!」
女性は俺の体から漏れ出る魔力に少し脅え、顔色が一気に青ざめたのを見て少しやりすぎたかなと思い魔力を抑える。
「何してるって冒険者同士仲良くしようと思っただけだよ」
「収まった……?ってこの子には絡んじゃダメってここに来た時受付でも言われたでしょ!」
「だから絡んでないって!あんな魔獣どうやって倒したか聞こうと思っただけだよ」
二人が目の前で言い争い始めるがわざわざここで始めないで欲しいんだけど
「あの、そういうのはよそでやって貰えます?」
「あ!ごめんなさい、ほらレインも行くよ」
俺の言葉に女性はすぐに男の手を引いて連れていこうとするが男はその場から動かない
「あ、名前を言ってなかったな、俺はレインCランクの冒険者だ。よろしくな!」
いや別に聞いてないんけど……
握手を求めて手を差し伸べてきた。
ただ敵意がある訳ではなさそうなので俺も警戒を解いて握手に応じる。
「俺はコハク。よろしく」
そこから二人は俺の向かい側に座って少しだけ話すことになった。
女性の方はミーシャというらしく最初にみせた魔力のせいか俺に対して少し脅えてる気がする
「それで、何か用?」
最初にタメ口で話してしまったので今更敬語に戻す必要も感じなかったのでこのまま話すことになった
「いやいや、用って程でもないんだよ。ただ噂のちびっこがほんとに居たから思わずな」
「その噂って何の話?」
さっきも言ってたがそんな噂今のところ何も聞いてない
「あー、ベテラン冒険者をボコボコにしたとか」
それはしたな
「それを見て襲ってきた冒険者十人を魔法で殺したとか」
それは俺じゃない師匠だ、それに殺してない
「この街の領主に喧嘩売ったとか」
売ってない……とも言いきれないな
ゲビタのことがあった
「それに今日新しく追加されたのが山ほどの魔獣を持ってきたってのだな」
噂っていうのがいかにいい加減に広まるのかが理解出来た。
「そんなのを見た目十二歳くらいのちびっこがしたとなれば気にもなるだろ?」
「逆によく話しかけましたね」
噂だけ聞けば危険人物だ、俺なら近寄らない
「まぁ、そんなジュースを飲んで椅子に座ってるのを見てたらいけるかなって?」
「すいません、レインってば考え無しに動くものだから」
「いや、別に話すくらいいいんだけど」
ここに来て二回中二回とも絡まれたことで少し敏感になっていた
「ところでコハクの持ってきた魔獣見たけどすげえな、あんなのどうやって倒したんだ?」
「魔法を使ったり武器で切ったりだけど」
至って普通だ、普通すぎて話すことがないくらいだ
「へ?武器って近接もできるのか?」
「出来るよ、だいたいその噂のベテラン冒険者?を倒したのだって素手だし」
師匠みたいな魔法での寸止めはできる気がしないからな、加減をするなら素手が一番だ。
「確かにそっか、てっきり魔法専門とばっかり」
レインはブツブツと考え出す。
「ごめんなさい、こうなっちゃうとレイン周りの声が聞こえなくなっちゃうんです」
ところどころ冒険者として大丈夫なのか心配になるがミーシャさんがしっかりしていそうなので何とかなっているんだろう。
俺が心配することでもないのでジュースを飲んで一息つく。
「コハクくんって得意な魔法の属性はなんなんですか?」
突然今度はミーシャさんから話しかけられる。
魔力も抑えたのでやっと少し慣れたんだろう
「得意な属性はわかんないんですよね、教会に行ってもちょっとトラブルがあったので」
「それで魔法を扱えるのは凄いですね、普通得意な属性から魔力の扱いを勉強するのに」
「師匠のおかげです」
実際は魔人だからなんだけど師匠のおかげというのもホントのことなので嘘は言ってない
それからはミーシャさんの質問に俺が答えるような形で話しているとずっとブツブツ言っていたレインが顔を上げる。
「なぁコハク、良かったら俺たちと戦ってみねぇか?」
「……!ちょっと、急に何言ってるの!」
「いや、近接もできるし魔法も扱えるってんなら一回戦ってみたいじゃねぇか」
レインの急な提案に俺より先にミーシャさんが怒ってレインの肩を掴んで揺らしている。
「いやいや、考えても見ろって。あんな魔獣を罠もなしに魔法と武器だけで倒してるんだぞ?俺たちも勉強になるし」
レインの発言にミーシャさんが悩み出す。
いやその前に俺が許可してないんだが?
「確かにそれはそうだけど、コハクくんに迷惑だし……」
そうだ!その調子で遠慮してくれ!
「コハクも勉強のためと言えば断らないって、冒険者同士お互いの命を守るためって考えてくれるさ」
うっ、なんか断りずらいこと言い出した
というかこの二人は俺が目の前にいることわかって話してるんだよな?
話の内容的に俺がいないところでする内容な気がするんだが?
「確かにそれはそうだけど……冒険者同士教えれることは教えるべきなのはそうだけど……」
こいつらわざとか?わざとだろ
「一回頼んでみよう、それでダメだったらもう一回頼めばいい」
じゃあ最初から二回頼んでみようと言え、ダメだったら諦めろ
「そうね、わかったわ。三回だけ頼んでみましょう」
もう突っ込むのも面倒くさい……
「コハクちょっと提案が」
「やだ」
「頼むよコハク、それにほらお前にとってもメリットはあるんだぜ?」
メリット?
今のところめんどくさいというデメリットしか内容に思えるが
「俺たちはこんなでもCランク冒険者だ、やられれば今まで以上に絡まれることは少なくなるし、もし俺たちがいる時は俺たちが対処してやる」
ほう、それはちょっと魅力的な提案だ
きっとこの街にも他の町から来た冒険者は来るはずだ、それをギルドがとめてくれてるとはいえ俺に絡んでくるのは一定数いるだろうしそれをこいつらが止めてくれるって言うんなら……
「わかった、けど俺三十分後くらいに予定あるからそれまででいいならだけど、そもそも場所はあるのか?」
ギルマスたちが上がるまでそこまで時間はもう無いはずだ、今から街の外に行ってたら時間に間に合わなくなる
「それなら大丈夫!ギルドの後ろに冒険者たちの広場があるから受付に言えばそこを借りれる」
なるほど一応ほんとに冒険者同士技術を交換したり新人を鍛えたりするみたいでそのための場所があるらしい
二人と一緒にギルドの裏手に回るとたしかに少し大きめの広場があった。
端の方には木製の剣やナイフ、槍なんかも置いてある
レインはそこから剣を取りだしレインは自分の杖でやるらしい。
「それで、試合って言ったってルールはどうするんだ?一人ずつやるのか?」
「そうだなー、まずは俺とやろう」
レインが剣をかまえるとミーシャさんは少し遠くに離れる。
武器か……
『コエダー』を使ったらさすがに怒られるかな?
「シャーン」
首元から呆れたような鳴き声が聞こえてくる。
と言ってもここに俺の使える武器なんてナイフしかない。
現代社会で剣や槍なんか持ってたら即逮捕だ。
ちなみに銃やナイフも即逮捕だろというツッコミは受け付けてない
とりあえずナイフを持ってレインの前に行く
「ナイフでいいのか?」
「ほかは使えないからな」
試合はミーシャさんの合図で始まることになり二人ともそれまで構えたまま待つ
「はじめー!」
その声を合図にレインはまっすぐ向かってくる。
しかし師匠や森の魔獣たちに比べればいくらか遅い。
俺にたいして振り下ろされる剣をすんでのところで避け横腹に蹴りを入れる。
俺はここでやらなければならないことがある。
二人が勝てないなと思う程度かつ人間の範囲内の実力で勝利を収めることだ。
ここでやりすぎてしまったら後々正体がバレてしまう可能性だってある、それは避けたいのでちょうどいい勝ち方をしなくてはならない
師匠相手では無いので今回はほとんど魔力を込めていない。
それでもしっかりと内蔵目掛けて蹴れば子供の力でも十分ダメージは入る。
「ゲホッ、ゴホッ!」
肝臓辺りに蹴りを入れられたレインはその場でうずくまって咳き込んでいる
見た目子供でも前世で暗殺を生業にしてた分急所は熟知してるし対人戦だって負けたことは無かった。
あんなに強い師匠がおかしいのだ
「まだやる?」
少し休憩をさせたあとそう聞くと「当然!」と言われたのでその後はレインの体力が切れるまで付き合うこととなった。
最終的にはレインの腕を掴み後方に投げると上手く受け身が取れずそのまま動かなくなった。
息はうるさいほどしてるしほっといてもいいかな
「それじゃあ次は魔法でお願いします」
いつの間にかミーシャさんが俺の前に立っていたのでレインの寝転んでいる地面を移動させ端に寄せる。
「いつでもいいですよ、加減せずどうぞ」
「これは……確かに手加減はしてられなさそうです」
俺がレインを移動させた魔法を見てミーシャさんは気を引き締め直し魔法を打ってくる。
ミーシャさんの方からたくさんの火の玉や医師の礫が飛んでくる。
壁を作って防いでもいいがそれだと芸がないのでとりあえず全て撃ち落としてみる。
おぉ、これちょっと楽しいかも
飛んでくる火の玉や石を俺にあたる前に撃ち落とすのはゲームみたいで楽しかった。
しかしずっと相打ちをしていてもしょうがないのである程度満足したところでミーシャさんを囲むように氷の槍を生やす。
森でやった物の中身が空洞バージョンだ。
ミーシャさんが氷に囲まれてる中でへたり込むのが魔力越しに見える
このくらいかな……?
自分でもなかなかちょうどいい塩梅の実力を見せれた気がする。
素手は魔力を使わないことでそこまでの力は感じさせなかったはずだし魔法は相手とほぼ同じのを使ってただけだしな!
シロークもそう思うよな?
「シャー……」
なんかフードの下で首を横に振ってる気がするが気の所為だな
今回はなんのミスもなく出来たからな。
なんか、遠くで呆れてる師匠の顔も見えるが絶対気のせいなんだ!
とりあえず、そう自分に言い聞かせることにした。
「スピードも力も段違いだ……これに喧嘩うった冒険者やべえな……」
「何この魔法...むりだ...絶対勝てない……」
そもそも魔人なので素の力が人間より強いことも最後に使った氷魔法が人間で再現できるものがほぼいないことを知らないコハクには、そんな地面に寝転がったままの男と氷の槍に囲まれた女の小さな嘆きが聞こえることは無かった。
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