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診察前の鹿島医院――
『事後処理』に追われ、徹夜を強いられることとなった鹿島は、こだわりの豆の焙煎によって抽出された珈琲を飲みながら苦虫を噛みつぶしたような表情をしていた。
当然、自分ひとりで後処理を行ったわけではなく、その筋の者を雇ってやらせたことではあるが。
ただ……診察室にひとり置いていた百合亜が姿を消していたことは、気になっていたが、それどころではなかった。
――色々と、処理が厄介だったな。屋根裏に侵入したネズミには逃げられてしまったようだし、いったい何者だったんだ……?
「先生」
ノックの音を聞き「どうぞ」と応えた鹿島の表情は、善人のそれに代わっていた。
「失礼します」
一礼して入ってきた看護師が手紙らしき封書を鹿島に差し出した。
「先生、こちら……」
「手紙かな」
怪訝そうな表情をしつつ、封を破って中を取り出した。
「―――」
それに目を通した鹿島は、目を見開いた。
「先生、どうなさいました?」
「いや、訃報だよ。電報だね。遠方に住む従兄が亡くなったらしい。悪いが急遽、葬儀に参列することなった。今日は休診だ」
「それは……ご愁傷さまです」
看護師は少しそれを怪訝に思ったようだが、鹿島の主張を受け入れることにしたらしく「では、そのように」と一言い残し、院長室をあとにした。




