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「――一応、簡単に調べといた」
翌、早朝――
レオンが現れたタイミングで、ジョセフの声が彼の耳に届いた。
「そうか。さすがだな」
「しっかし、おまえは闇の商売をしてる割に、早起きなんだな。こっちはついさっき寝入ったとこだっつのに……」
店の奥にある畳の部屋から枕を抱えてあくび混じりに姿を現したジョセフは、夜空を模したような星柄のナイトキャップを被り、同じ柄のスリーパーを着ていた。
「……店が空いてからでは話がしづらいと思った」
「んじゃまあ、一応警戒すっか?」
レオンの言葉を受け、ジョセフが応竜語で返した。
――とはいえ、応竜語をリスニング出来るヤツが聞いてたらなんも意味ねーんだけどな。
百合亜の地獄耳を思い出しながら、ジョセフは苦笑する。
「やっぱあの医者がおまえに渡したあのクスリ、ロクでもないもんだった。でまあ、あとはこいつ――」
ジョセフは深夜までかかって現像した写真をレオンの目の前に出した。
「……これは?」
「一見すると座敷牢。表向きは入院患者なんだろうけど、まあ、実験体として使われてるって感じだな」
「彼女たちは?」
粗末な布団が並べられた座敷牢の趣の病室での、荒んだ様子の女たちの写真を眺めながら、レオンが険しい表情をした。
「――身元を調べるところまでは……。だけど、全員が庶民だってのは間違いないだろ。ただ、俺がしくっちまってな、申し訳ないことに……」
「隠蔽のために殺された?」
「……やっぱもう少し慎重にやるべきだったんだ」
彼女たちのことを考えると自分のふがいなさに震えそうになる。
もっとうまくやりようがあった気もするが、気づかれないように、というのはやはり難しかっただろう。
百合亜の協力もあってどこか油断が生じたのかも知れないが。
「……だったらもう、やるしかないな」
レオンが決心したように、顔を上げた。
「レオン……?」
「これ以上犠牲者を出すわけにはいかない。なるべく早く、ケリをつける」
「バシッと決心できたなら、なによりだけどな」
見合い相手とイイカンジ――大事な人が出来たことで、迷いが見られたが、調査報告を受けてからレオンに躊躇う気持ちが消え去ったようだ。




