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「……レオン、行ったぞ?」
ジョセフは百合亜が立ち去ったことを確認すると、店内中央の本棚の向こうの床下まで移動し、応竜語で声を掛けた。
床の一部の正方形の模様が扉のように開き、レオンが姿を現す。
「ああ……」
「ったくよ、おまえさん、ち~っとばかりのぼせすぎなんじゃねえのか?」
「何がだ?」
床から這い出てきたレオンがむっとした表情を作る。
「だから、あの娘に尾行されたこと、気づかなかったんだろ?」
「……まさか、ここに現れるとは、予想外だ」
「プロならともかく、完全な素人相手に、何やってたんだ? いったい何処から尾行けられてたんだ?」
ジョセフは呆れたように嘆息した。
「おそらく、彼女が勤める茶店から……」
「はあ? その格好で行ったのか?」
「だから、『千蔵』としてではなく、ほかの客に紛れる形で……少し休憩のつもりだったんだ。もしかして、俺だと気づかれたのだろうか……」
「ハッキリそうだとは言えねえだろうが、こんなとこまで追ってきたってことは、似てると思って尾行してきたのは確かなんじゃねえのか?」
「……やはり、そうか……」
「あれで誤魔化せたかどうかは知らねえけど、当分お嬢の勤め先に行くのは控えるべきだろうな。と……店じまいして俺も仕事といくかな」
「………」
「あのお嬢がその辺にでも潜んでるかもしんねえ、慎重に行動しろよ?」
「ああ……」
例の薬瓶を持ったジョセフはエプロンを外して紺のジャケットを羽織ると店の鍵を掛け、裏口からレオンと共に出た。
「こいつの調査料は、今度の依頼に上乗せしとくから。じゃ、くれぐれも慎重にな。尾行されんなよ?」
――しつこいな……全く。
レオンは微かに顔を赤らめ、彼とは違う方向へ向かって歩き出した。




