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九十八話 いのちだいじに。



 十五分ほどして、ライラの歌がすべて終わった。


 客達からは一斉歓声が上がる。


 歓声の中でライラは舞台から客席に降りて、客達に挨拶して回り始めた。客達はこぞってライラに声を掛けて、チップを渡していく。


 先ほどまで、舞台で語り歌を披露していた者達は銅貨や銅板が多かったのに対して、ライラのもとには銀貨、銅板……そして、金貨までがチップとして渡される。


「ライラちゃん! 来たぜ!」


 アレン達のもとにライラが近づいてきたところで、スービアが大きく手を振った。


 スービアが声を上げると、それに気づいたライラは近づいてきた。そして、スービアとアレンに視線を向けると目を見開いて驚きの表情を浮かべる。


「あら、スービアよく来てくれたわね。嬉しいわ……って貴女、男が出来たの? ただ、ずいぶん可愛らしい」


「いや、こ、コイツはそんなんじゃねーよ」


「そうなの? どう見ても……」


「それよりも、今日もよかったぜ。俺は感動したぜ!」


 スービアは懐から銀板数枚を取り出すと、ライラに手渡した。


「ふふ、ありがとう……こんなにいっぱい」


「いいってことよ。あんな、良い語り歌を聞かせてくれたんだからな」


「そう? また聞きに来てね」


「もちろんだぜ」


 アレンはスービアとライラが話している間、ライラに視線を向けて様子を伺っていた。


 どこからどう見ても、二十歳前後の女性にしか見えないな。


 俺は……今年で確か四十九歳を迎えるが、外見は十二~十五歳ってところである。


 エルフとハーフエルフとでは歳の取り方はだいぶ違うだろうが。どちらも長命には違いない。


 ライラが、どの程度の歳でそこまでの外見になったのかやっぱり知りたいなぁ。知りたいなぁ。


 けど、ブッ飛ばされるかなぁ


 子供特権で教えてくれねーかなぁ。


 子供ぽく聞けば教えてくれるかな? ちょっと、小動物ぽく?


 無理かな? あ……そうだ。あとでダルファーにそれとなく聞いてみようかな?


 アレンがライラの様子を伺っていると、それに気づいたライラが小首を傾げてアレンに問いかける。


「ん……? どうしたの? 僕?」


「え、と、ライラさんの歌、すごく良かった」


 アレンは懐から銀貨を一枚取り出して、ライラに手渡した。


「それは良かった」


「ライラさんはずっとここで歌っているの?」


「そうよ。また来てくれると嬉しいわ」


 アレンへとニコリと笑みを浮かべたライラは、すぐに別の席から声が掛かっていってしまった。


 アレンはライラの後ろ姿を見送っていたが、突然にアレンの体がスービアによって引き寄せられる。


 アレンの体を引き寄せたスービアはアレンの顔を胸に押し付けて、両手でアレンの頭を抱きしめるように締め付ける。


「うお? 何だ? アレンもーライラちゃんが好きにやっちゃったのか?」


「ぶご……んんんん」


「んお? 駄目だぞ」


「んんんん」


 アレンはスービアの肩を叩いてギブするが、それを気にすることなくスービアは更にグイグイと締め付ける力を強くした。


「あぁん? ライラちゃんは俺が先に目を付けていたんだからなぁ?」


「んんんん……ふはっ! 分かったから!」


「あーん? そうかぁー? 本当だろうなぁ?」


 スービアは疑うような表情で首を傾げるだけで、アレンの頭を抱きしめる手の力は緩まない。


「ほんと! ほんとだから!」


「絶対だからな? ライラちゃんは俺のだから」


「ふぅ……」


 スービアの腕から力が抜けたので、アレンはスービアから離れて席に座る。ただ、スービアの手が伸びてきて、アレンの肩に手を伸ばして抱き寄せる。


「フハハ、じゃ飲み直すぜ……オヤジ、エール二つおかわりだ!」


「え? そろそろお開きだと思っているんだけど」


「まだだ。まだ全然飲み足りねーぜ」


「そうか? もう十分に飲んだだろ?」


「えーそうなことねーよ。んん……」


 スービアがそう言ったところで、突然脱力してアレンの体にもたれ掛る。スービアからはスースーっと寝息が聞こえだした。


「え? 寝た?」


 アレンは突然眠りだしたスービアの体が倒れないように抱き寄せる。




「……おっと、エールはいらなかったか?」


 少し間が空いて、先ほどスービアが注文したエールの入ったジョッキを二つ持ったダルファーがやってきた。


「まぁいいよ。俺がもらう」


「……大丈夫か?」


「うん、すごく美味しいから大丈夫」


「ゼハハ、それは理由になってねーよ。しかし、見かけによらず、酒強いんだな」


 アレンはダルファーからエールの入ったジョッキを受け取った。


「そうかな? あ……そんなことより、さっき歌っていたライラさんってこの店でずっと働いてるの?」


「そうだな。大体入ってくれてるぜ?」


「そうなんだ。これは興味本位……父さんから聞いた話だと、エルフってすごく長生きなんだよね?」


「おぉ、良く知っているな」


「ライラさんって何歳なのかな?」


 子供っぽくニコリと笑みを浮かべたアレンは首を傾げながら、先ほどから気になっていたライラの年齢についてダルファーに問いかける。


 アレンの質問を聞いた瞬間、ダルファーは表情を強張らしてアレンに近づいて耳打ちする。


「ガキ……命が惜しかったら、その質問はするんじゃねぇぞ?」


「……」


「仮に……仮に俺が知っていて言っちまったら、俺が明日生きてられるかわからねーから言えねーよ」


 ダルファーはそう言うと、いそいそと厨房に戻って行った。


 それからアレンはエールを飲み干した後、ホップをたたき起こして、スービアを担ぎながら店を後にして……その日は冒険者ギルドの寮に泊まることになった。



 ◆


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