九十七話 ライラ。
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アレン達が飲み始めて二時間が経っていた。
「それでよー。アレンー」
「大丈夫か? ちょっと飲み過ぎてないか?」
先ほどからスービアは完全に出来上がっていてアレンに寄りかかるようにしながら、エールを飲んでいた。
正直なところ、胸のところが少しはだけてしまって、スービアの豊満な胸が覗き目のやり場に困るようになっていた。
ざわざわ。
周りの客が少し騒がしくなった。
客席の前にある舞台に視線を向けると、銀髪の女性が姿を現した。
銀髪の女性は、耳先が尖がっていて……それはエルフの特徴であった。
「お、ライラちゃんだぜ。ひゃほー」
「……まさか、エルフ?」
銀髪の女性を見たスービアはご機嫌な様子で舞台に向けて手を振る。対してアレンは驚きの表情になって呟く。
「よく知っているな。ほら、水を持ってきてやったぞ?」
ダルファーが水の入ったジョッキを差し出しながら、アレンの呟きに答える。
「あぁ、ありがとう。エルフ、初めて見たよ」
「そうか。そうだな、エルフは少ないからな」
「他にも居るの?」
「あぁ、クリスト王国の端……カリアの密林と言うところに細々と暮らしているらしいぞ? 俺は行ったことないが、なかなか行き来するには辺境な場所らしい。ライラは人前で歌を歌うのを仕事にしたかったようで、リンベルクの街に出てきたんだな」
「そうなんだ。教えてくれてありがとう」
「おう。そんなことより……スービアの面倒を頼むぞ」
ダルファーはご機嫌な様子でライラに手を振っているスービアに一回視線を向ける。そして、アレンに近づき耳打ちして、その場から離れて行った。
そうか……。
エルフ。
サンチェスト王国では見たことがなかったな。
少し話を聞いてみたいところだが、俺は先祖返りのハーフエルフだから……。
嫌われているんだろーなー。
混ざり者はどこでも忌み嫌われるからな。
それにしてもあのライラと言う子は綺麗だな。
年齢はスービアより下くらい?
いや、アレ? エルフはかなり長命だと聞く。
ハーフエルフの俺ですら成長が遅いのだぞ?
女性に聞くには失礼なだろうが……何歳なんだろうか?
アレンが考え事をしていると、ライラが舞台の真ん中で一人立って客へと顔を向ける。
すると、先ほどまで騒ぎ酒を飲んでいた客が静まって……ライラの方へと視線が集まった。
「今宵は聖英祭です。英雄の語り歌を選びました。まずは一番新しい赤き龍の英雄から……」
ライラはそう口にすると、目を瞑ってスーッと長く息を吸ってゆっくり歌い出した。
ライラの声は透き通るように美しく、店の全体に響き通る。
その美しい声によって紡がれる語り歌は、内容が英雄の勇敢さを表しているからか……歌を聞く者達は高揚感に近い感覚を感じさせていた。
……素晴らしい声だな。
うん、素晴らしい。
素晴らしいよ?
うん。
これが俺のことを歌った曲じゃなかったら……より素晴らしかったな。
あぁ、何?
自分を題材にされた語り歌を聞くとか、なんかの恥ずかしい罰ゲームなのか?
おいおい、俺はそんなこと言った覚えない!
はぁーこれは罰ゲームか。
この声……マナが混じっているな?
ふーん、それによってより人に声を惑わせる力でもあるのかな? 一種の催眠術のような効果があるのか。
酒を飲んでいる影響もあって、効果は絶大か……。
しかし、危ない魔法の使い方だ。まぁ……実年齢はだいぶ高いだろうから、そこら辺は分かって使っているか。
アレンは周囲に視線を向ける。ライラの歌を聞く客達は皆、熱に浮かされたような視線をライラに向けていた。




