八十六話 ガンガン行こうぜ。
「そうだな。ついでにホップの奴も連れていってやるか……本当はリナリーの奴もと言いたいとところだが、アイツつれねーしなぁ」
「ハハ……それはスービアがリナリーに対してガンガン行き過ぎているからじゃないかな?」
「何を言ってんだ? 女は押して何ぼだぜ?」
「そうなの?」
「そうだ。ちょっとくらい強引にいかねーとモテないぞ? 覚えておけよ? ハハ」
「……」
「よし、こんなもんだろう」
テントが組み上がったところでスービアは胡坐をかいて座った。
対して、アレンは一瞬考える仕草を見せると、小さく笑みを浮かべて立ち上がった。そして、スービアにスタスタと近づいて行く。
「……」
「ん? どうしたんだ?」
「スービア……」
アレンは膝を付き、キリッとした真剣な面持ちでスービアとまっすぐに視線を合わせる。そして、手を握り、もう一方の手で肩に触れた。
突然のアレンの行動にスービアは面食らって動揺しているようだった。
「お、おい、なんだ。突然」
「スービアって美人さんだよね。肌も綺麗だし、目もパッチリで大きく……瞳もとても綺麗だよ」
アレンはほほ笑むような笑みを浮かべると、スービアの肩に置いていた手をスーッとなぞるように動かして、あご先に触れる。
「スービア……」
「……っつ」
アレンがスービアの名前を呼びながらゆっくり顔を近づいて行くと、頬を少し赤めたスービアはギュッと目を閉じる。
ただ、アレンはすぐに体を離して首を傾げながら口を開いた。
「……こんな感じかな?」
「ん……あ? なななな、ななにがだよ」
スービアはゆっくり……恐る恐ると言った感じで目を開けると、動揺して口籠る。
「いや、スービアみたいに少し強引に女性に迫るフリをして見たんだけど。俺はモテそうかな? 俺、普通よりも子供ぽいから、女性からはからかわれていることが多いんだよ。だから、スービアに直接見てもらおうかと思って……どうだった?」
「い、いいんじゃねーかな?」
アレンの問いかけに、スービアは少し赤くなった頬と動揺した表情を隠すように少し俯いて答える。
「ほんとか?」
「お、おう、いい感じだった。ちゃんとできていたと思ったぜ」
「そうか、それは良かった。うむ、今度からちょっと積極的にしてみようかな?」
アレンが立ち上がって、スービアから離れようとした時だった。スービアは離れようとしたアレンのほっぺたをつまんで左右に引っ張った。
「しかし、そういうことならちゃんと言っとけよなぁー」
「え、スービアりゃってリナリーにいきにゃりやっていたじゃにゃいか」
アレンは両頬をスービアに引っ張られて、喋り方が変になりながらも、反論する。
「そ、それはそうだが、言えと言ったら言うんだ!」
「わりゅいわりゅい、ありゃまりゅからはなしれ」
スービアが更に強く頬っぺたを引っ張り上げたところで、アレンは謝ったのだが……。
いつまでも機嫌の直らないスービアにリナリーとホップが水汲みから帰って来るまで、アレンの頬っぺたを引っ張り続けた。




