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ご当地ヒーローになった俺が異世界で無双してウハウハな件  作者: 拝 印篭
聖王都到着編 オークションと御褒美の日々
27/42

24th 「聖王都の休日」

 ほけら~



































 ええいっ、埒が開かんわーーっ!

 と、いうわけで、久方ぶりの登場である。困ったときの、何かの正体。そう、俺様が、俺様が、

 エクストプラズム。

 エクストプラズムだぁーーーー!!

 大事なことなので二回言いました。


 あのあと、俺様の本体が、完全にオヤスミモードに移行してしまったため、大事な話ができない状態になっている。これまでいろいろとあったせいで、半年以上の長きにわたり気の張りつめた臨戦態勢だったのだから無理もない。戦士にも休息は必要なのである。

 で、まあ、代わりにあの後どうなったか、説明するとしよう。


 あのあと、無事、刺客などに襲われたりすることもなく帰宅した。そこで嫁たちに顛末の報告をすると、その偉業を称え、下へも置かぬおもてなし。嫁たちは元よりエルノス、テリー、アフのチビーズ、ファビーさんや、孤児院の子供たちも総出で大宴会。飲めや歌えや、の大騒ぎで、普段は慎ましやかにしている孤児院から大迷惑な騒音をまき散らしているため、衛兵が来て説教する騒ぎになったりしたのもご愛嬌。その後、子供たちが寝静まると、次はお決まりの夜の大運動会。あっはん、うっふん、どったん、ばったんと、またしても衛兵に説教される始末。そうして、飲んで、喰らって、騒いで、ヤッて、一晩たったら、緊張の糸がぷっつり切れて、今日は朝から賢者モードを通り過ぎ、廃人モードにイってしまったというわけで、孤児院の居間で一人ほけら~、としているのだ。

 ちなみに、ヒロシは、もらった飛空船を確認しに行ってるし、嫁ーずは、アコと貰ったドレスの寸法合わせに仕立て屋に行っている。子供たちは、孤児院の子たちに連れられて外へ遊びに行ってるし、残っているのは、本体と、文字通り身の内から出現した真の身内、俺様とアフだけだ。

 いい機会なので、アフと会話してみようと思う。

『なあ、お前さんは本体様から分離して生まれたんだよなぁ?』

『? わかりませぬ。ぽっとでのみのうえゆえ』

『本体様がお前の親なんだよなぁ?』

『それはまちがいないかと』

『父親が本体様だとしたら、お前の母親は誰だ?』

『? わかりませぬ。あるいはよりこうじのそんざい?』

『こうじ? 麹? ! 高次か!』

『はなまるきなら~』

『味噌の話じゃねーー!』


 はぁはぁ、意外と大変だな。こいつと話するの。途中でなにかがぽっきり折れる気がする。


『質問を変えることにしよう。本体様と合体したらパワーアップするよな。』

『うい』

『あれやると、アポートの最大距離も伸びないか?』

『うい』コクリ

『やっぱりか。あれで数百キロの距離を大荷物移動させるには、どうしたらいい?』

『ぼくらきょうりょくするー。いっぱいはいるー。はいじんなるー。おすすめしないー』

『げ! やっぱりダメか? 他に方法ないか?』

『なかまのこあー、ゆうこうかと。ないぞうむりならそとづけーしかないかと』

『仲間のコア? ! もしかして、やっぱりお前らの正体は!』

『それはいわぬがは・な・ま・る・き~』

『だから、味噌の話じゃねーー!』ぽきん

 あ、折れた。悪いが、どうやら俺はここまでのようだ。

 さらば、アディオス アミーゴ。ジカイヲマタおーたーのーしーみーにー。




「あなた、あなた、起きてください。こんなところで寝てるとかぜひきますよ♡」

「んあ?」

 ふわ~。なんか、まだまどろんでるにゃ。お、おっきしてるにゃ。あんだけ出したのに人体の不思議。

「おーかーえーりー。むにゃ」

「もう、お昼すぎてますわよ。そろそろ起きないといくらなんでも子供たちに示しがつきませんわ!」

 ん、ブーケのいう通りだな。こりゃこりゃ。

「わかったー。いまおきるー」

「旦那様♡ アフくんみたいなしゃべり方になってるの~♡」 ぷるぷる

 うむ。ん? あれ? アフ? 

「アフは? そこらにいたと思ったんだが」

「いまは、台所でアコさまとマダムのお手伝いしてるよー」

 大きな袋を抱えたチヨが教えてくれた。

「ドレスはどうだった? 気に入ってくれたかな?」

「もちろんですっ! とっても可愛く仕立て直してもらえました」

「旦那様の目を釘付けにしてさしあげますわよ♡」

 ジュンもミナミも絶好調であるか。うむうむ。

 ようやく、目の覚めた俺は、顔を洗いに洗面所に行く。

 後ろからタオルを持ってついてきたアナが、

「♡ 旦那様♡ 夕べあんなにしてくださったのに♡ すごい♡」

 と、俺の股間に話しかけていた。ヤベ。

「ちょっとばかし、手伝ってくれる?」

 と聞くと、こくりとうなずいたので、洗面所の隣のトイレで排出してきました。ええ、スイカップで。








すっきりとしたところで、昼食と相成った。子供たちは昨日おこずかいをあげたので、今日は外で買い食いで済ますはずだ。従って、大人組(?)で昼食会だ。と、いっても簡単なサンドイッチと、紅茶のみの略式だがな。

「あなた♡ 今日は、これからどうしますか?」

「ヒロシが飛空船を見に行ってるんだよな? 俺も見に行こうかな? それとも、オークションの下見も必要かな?」

 目は覚めたが、まだ、どうやら決断力が鈍っているようだ。

「フッカー卿、もし宜しかったら、この子をお散歩に連れて行ってくださいな」

 ファビーさんに頼まれたので、快く引き受けた。チビたちは、流石に乳飲み子までは遊びに連れて行かなかったか。

「流石に俺一人じゃ心配だな。誰かついてこないか?」

「なら、私が♡ デートしましょ♡ あ・な・た♡」

 一瞬の差でスーが勝利。と、いうわけで、午後は二人で子守デートだ。




 まず、オークショニアを訪ねることにした。さっきの夢の話じゃないけど、例のスイカップは一度引き上げておいたほうがよさそうだ。

 赤ちゃんを連れてスーと二人きり(いや、三人なんだけどな)でお散歩というのは、エッチの時とまた違った気恥ずかしさがあるものだなぁ。そんなことを考えていたら、隣のスーも顔が真っ赤だった。

 なんとなく、周りの人が、スーと赤ちゃんを交互に見ている気がして、はずかちー♡

 いや、そんなはず無いんだが。


 ややあって、オークションの会場へ着くと、オークショニアのジーンさんが出迎えてくれた。

「これはこれは、フッカー卿、それに奥様まで、ようこそお出で下さいました」

「急にお邪魔してすいません。実は」

「本題は落ち着いてからにしましょう。とにかく中へ」

 そういって案内されたオフィスは、重厚感のある作りだ。

 ローズウッドで統一された室内は、なるほど、ザ オークショニア といった感じで好感が持てる。


「そうですか。ヒュドラのコアを」

「はい。申し訳ありませんが、今回は出品を取りやめようかと」

「残念ですな。今回の目玉商品でしたのに」

「そのかわり、刀剣の類はすべて出品いたしますし、神聖帝国大金貨が、更に十枚増えました。これらの一部を出品しようかと思います」

 オークショニアは、ふむ、と一瞬考えるような顔をしたが、

「あまり、同じものを同じオークションに出品するのも、うまくはないですな。出品は二枚程度にした方が良いでしょう。出品する順番も離したほうがいいですね」

「そうなのですか?」

「これは、私が若いころにしてしまった失敗なのですが……」

 ジーンさんの話によると、同じ商品を連続三個続けて出品したことがあったそうだ。

「あの時の私は、独り立ちしてあせっていたのでしょうな。ある日、別々のルートから、希少な嵩天王国の聖者さまのマスクを三つも仕入れました。これは、次のオークションの目玉になるぞと、意気込んでいたのですが……」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「さて、次のお品は、なんと、なんと、嵩天王国の聖者様、サント公爵のマスク!」

 会場は、物凄いヒートアップで怖いくらいでした。最初の一枚は、仕入れ値の二倍近い百万ドロップで売却されました。そうすると、会場からは、落札者にやっかみの野次やら、おめでとう、やら凄い盛り上がりで、最後には、

「「「「おっかねもち! おっかねもち! おっかねもち! おっかねもち!」」」」

 と、お金持ちコールまで起こる始末。この瞬間までは私もこのオークションの成功を疑っておりませんでした。

 しかし、つぎの商品を出した瞬間。

「次のお品も、なんと、なんと、嵩天王国の聖者様、サント公爵のマスク!」

「「「「えええええっ!」」」」

 それまでの盛り上がりもどこへやら、特に最初に落札した方は、意気消沈といった感じで、そのまま会場を後にしました。まあ、おかげでその後の悲劇を目撃せずすんだのですが。

 結局、次のマスクは五十万ドロップで落札され、どうやら、損だけは免れるかな?という感じだったのですが、結局、自らとどめを刺してしまったのです。

「次のお品も、なんと、なんと、嵩天王国の聖者様、サント公爵のマスク!」

「「「「「「「「「「ずこっ!」」」」」」」」」」

 あんな大勢の人が一糸乱れぬ動作でずっこけた所は生涯二度と見ないでしょうな。

 しかも、最後のマスクは、たった、三万ドロップで落札となりました。

 それからしばらくは、出品する品物の真贋を疑われたり、高値で落札されたお客様から、苦情を受けて買戻しを迫られたり、ということが続きました。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「まあ、若かりし時の失敗というやつですな。がはははは」

「「お、恐ろしいですね。オークション」」

 汗ジトの俺たちは、お茶だけはごちそうになってオフィスを後にした。

 大金貨の処分方法は、ジーンさんが、別のオークションや、両替商を利用する方法を教えてくれた。

 需要によっては、両替商でも、プレミアがつくこともあるそうだ。

 特にお勧めされたのが、「ゴーディシュ商会」であった。飛空船の船着場の近くに店があるそうなので、そのまま探してみることにした。


「え~と、この辺のはずだがな」

「あ、あれではないですか?」

 うおっ! 

 その建物は、小さなパルテノン神殿のような、円柱が何本も周囲を飾った建物でむしろ、大銀行の本店のような佇まいであった。

 ん、店の前に不似合いな男が立っている。こっちに来た!?

「おい、兄ちゃん、悪いことは言わねぇ。ここで金借りるつもりならやめとけ! 命まで取られるぞ!」

「あ、いや、俺たちは、両替を頼もうかと……」

「け! 金持ち様かよ」

 男は、それだけ言うと面白くなさそうにその場を後にした。

「えーと、どうします?」

「多分、俺の想像通りの仕事をしてるんだと思う。こちらに害は無いはずだから、ちょっと覗いていこう」

 店内に入る扉も巨大だった。まるで、試しの門である。

「「「「いらっしゃいませー」」」」

 店員が一斉に挨拶をしてくる。スーが慌てて返礼するのが、かわいい♡

 客は、他にいなかったので、近くのカウンターごしに美人の店員に話しかける。

「先程、オークショニアのジーン氏に紹介されて来たのだが、こちらでは、大金貨の両替もしてくれるとか」

「はい。両替でございますね。こちらが本日の両替価格でございます」

 そう言って紙に書いた一覧をくれた。スーと余り変わらない年頃だと思うが、教育が行き届いてるな。

 ふむ、神聖帝国大金貨が百二十五万、これは、お、直近一年の高値と安値も出てる。

 最高値が百四十万。安値が九十四万か。安くはないかな。

「これから冬になりますと、商人たちが手持ちの資金を大金貨に両替するため、需要が高くなります。今のうちに両替していただけるのでしたら、キャンペーン期間ですので、あと一万高く買い取りしておりますが、いかがでしょうか?」

「キャンペーン期間というのは、いつまでですか?」

「再来週の14日までです」

 ふむ、選挙までか。

「わかりました。それまでに纏めて持ってきましょう。この紙はもらっても?」

「はい、どうぞお持ちください。お待ちしております」

 そう言うと店内のスタッフも全員頭を下げて送り出してくれる。

 俺は向こうの世界で慣れてるが、スーは委縮しっぱなしだったな。

「悪かったな。こういう店は初めてか?」

「は、はい。ちょっと怖かったです」

 若干涙目だな。かわいい♡


 飛空船の発着場はそこからすでに見える所だったので、迷うことはなかった。




「おーい! こっちだねぃ!」

 ヒロシの声がしたので、見上げると、でかい! 双胴の飛行船みたいな形の船だ。真ん中の結合部が搭乗スペースだろうか? あ、いた。窓から顔出してた。

「どこからはいればいいんだー?」

「後ろの貨物スペースからはいればいいねぃー」

 後ろか。トコトコ、歩いて後ろに回ると、けっこうあるな。

 赤ちゃん抱いてるスーは大変だろうに。俺が代わろうか? というと、大丈夫と、首を振って触らせてもらえない。

 後ろの貨物ハッチ? が開いている。けっこう広いな。ゴーリーヴォーグ、入れるんじゃないか?

 そんなことを考えていると、ヒロシがむかえに来てくれた。

「ずいぶんでかい格納庫だな」

「元々貨物用だったらしいねぇ。セコハンなんで、ちょっと古いけど、動力も変えてあるらしいし、まだまだつかえそうだねぇ」

 貨物用か。クルーザーみたいなのを想像していたが、これはこれでいいかな。

「これで、ゴーリーヴォーグも運べるらしいねぃ」

「動力源は何だ?」

「迷宮のコアだよ」

 見知らぬ男が答えてくれた。なかなかの大男である。二メートル近くあるかな?

「紹介するねぃ。この船の船長を務めてくれるアーネスト=レイザー氏だ」

「初めまして。私は」

「フッカー卿ですな。お噂はかねがね聞いております」

 と、言って握手する。むこうの方から悪戯を仕掛けてきたが、ガードしていたので、微妙な顔になる。

「流石にガードが堅いですな。安心しました、オーナー。私のことは、キャプテンとお呼びください」

「どっかにもいたなぁ。肩書にやたら拘る人」

「うるさいねぃ!」

「奥様も宜しく」

「ええ、頼りにしています。キャプテン レイザー」

「ん? んぐぐ、あ痛たたたたた」

「おほほほほ♡ どうかなさいまして?」

 左手の塞がったスーにしてやられたキャプテン。以前教えたことが、今生きた!

「やーい、やーい、ひっかかった! 俺の後にスーと握手したら、絶対油断すると思ってたんだ」

「くーっ! ひっかかってしまいました。それにしても、お強い。もしや、奥方も落ちもの様で?」

「いや、落ちものの奥方は別におられるねぃ」

「私自身は騎士爵家の娘ですが、れっきとしたこちらの人間です」

「くやちぃーーっ! フッカー卿の御婦人方も一騎当千の強者というのは、本当でしたか」

 そんなことをして遊んでると、

『ウゥーーーーウゥーーーーウゥーーーーウゥーーーー』

 と、サイレンが鳴る。何事かと思っていると、

「もうすぐ、着陸してくる機体があるのです。ブリッジへどうぞ」

 と、奥へと誘われた。ブリッジは、思いのほか開放的であった。

 彼方を見やれば、飛んでくる機体が丁度見えたところである。


「あら? あれは、ドメーヌ様のガルガンチュア号ですわ」


 その威容は舞降りてきた白鳥を思わせるシルエットをしていた。

「ずるいーっ! 全然スマートでかっこいいじゃんかぁぁぁっ!」

 次回予告 

 

 翼よ。私はもどってきた。

 愛するあの人の胸の中に。

 しかし、あの人の隣には、いつの間にかあの娘が。

 そして、腕にはあの人の、

 あああっ! これ以上言えないっ!

 どうする、どうなる、私の純愛。


 次回 「ガルガンチュアは舞い降りた」


 ……それでも、私は、私は、


「おおい! 誰か、もらってあげてー」

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