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ご当地ヒーローになった俺が異世界で無双してウハウハな件  作者: 拝 印篭
聖王都到着編 オークションと御褒美の日々
25/42

22th 「華麗なる王子様」

 あれから三日がたった。


 百キロ先から見えていたように、この都市は、非常にでかい。

 形としては、中央の高さ千メートルの尖塔を中心に、世界遺産モンサンミッシェルの大きさを十倍にして、周りに万里の長城を配したような形なのだが、あの日以降、天気が悪い日が多く、今も上の方は雲がかかって見えていない。周囲40kmに及ぶ城壁のその中には、皇帝の居城にはじまり、教会本部、貴族のタウンハウス等が並び、この中まで入れる人が、この国の支配者層であることを示している。まあ、山手線の内側全部が城内と考えてもらえれば、間違いではない。


 俺達は、以前アコが世話になった、城内の外周部にある教会の老シスター ファビー=ラス=ムーアさんの経営する孤児院に世話になっている。場所柄小さな子供が多いのだが、こういう所で育ったテリーは嬉々として、小さな子の面倒を見たりしている。子供たちに対して優しい笑顔を見せて世話をするテリーは、ちゃんと女の子に見えるものなんだなぁと、感心して見ている。一方のエルノスは、どう接していいのか分からずにいるようだ。何となく居心地が悪そうで子供同士よりも俺達の方にいつの間にか、くっ付いていたりする。もっと、子供同士交流してほしいのだがな。


 昨日、三バカがこちらに向かっていると報告がロサのギルドからあった。今日、明日にも到着するそうで、到着次第一緒に、皇帝に謁見する予定になっている。


 本日は十二月の四日。教皇選挙が十四日からなので、十日間ほど間が空く。その間に大きなオークションが一度あるため、それまでに一度試しで出品しようと思う。と、いうわけで奴らが到着するまでに俺達は、オークションに出品する品物の目録を作るため、整理と鑑定なんかでそれなりに忙しくやっている。

 今回出品するものは、以下の通りである。

 

 神聖帝国大金貨 一枚

 これは、エルノスから貰ったものである。ここで、いい値段で売れるようならエルノスも自分の分を売却するそうだ。鑑定の結果は「エクセレント」予想価格は90万ドロップ以上というのがオークショニアの見立てである。手形が履行されれば、俺達もあと二枚は手に入るのだ。テンション上がってきた!

 刀剣類

 魔剣 三振り

 呪われた魔剣 一振り  

 古刀、古剣 十五振り

 ザンゲの砦で手に入れた品物の中で換金できそうな品を選りすぐってきたものだ。一応、アフレイムソードも参考価格を算出してもらったが、既に俺専用になっているため買取り不可であった。聖属性の高位魔法がかかっており、こういった土地では、需要は天井知らずで、もし、専用になってなければ、スタート価格でも一千万は下らないだろうと言われ、アコとヒロシにボコられた。

 他の魔剣は、

 アイスレイピア……氷魔法の加護がついた魔剣。比較的似たものが出品されることが多くスタート価格が百万、実際の落札価格が二百万程度であろうとのこと。

 あとの二本は、切れ味が良くなる魔法がかかっているだけで、それぞれ二十五万位ではないか?とのこと。

 むしろ、呪われた魔剣が一番高くなるかも、と言われた。ただし、これは大きすぎるため、実際人が持って使うには不向きである。恐らく魔界の魔人が持って来たものであろうとの見立てである。魔法ギルドの研究者が研究の為に買うか、好事家が飾るために買うか、取り合いになれば高騰する可能性が高いとのことだ。


 後の古刀や古剣は、アンティークとしての価値があるかどうか。一本一万にもなれば御の字であろう。

 その他に、迷宮のボス、ヒュドラのコア (例のスイカップである)がある。他のコアは、既に冒険者ギルドで売却済みだが、流石にレアなので、こちらの方が高額取引できるだろうということで持ち込んだ。推定落札価格は、六百万ドロップである。と、いうことは、迷宮のコアは、最低でも〝億〟か? 

 そうなると、何に使おうか?などと皮算用したくなる。

 やはり、定番は本拠地の取得であろうか? 嫁を八人も抱える身としては切実な問題である。

 いや、そもそも、レギオンを作るための軍資金だ。いくらあっても多すぎることはないか?

 それにしても、どんなものもらえるのかな? 皇帝陛下のご褒美って?

 と、思っていたら、エルノスがビミョーな顔で俺に教えてくれた。


「大体、こういった場合の相場は、決まっています。貴族なら、未開地を領地として下賜されるか、姫様の中から適齢期の方を選び降嫁されるか、ですが、フッカー卿は準男爵ゆえ、これらは出来ません」

「と、するとどうするの?」

「恐らく、宝石類を相場の一割分位と、希望すれば宝物庫の中にあるマジックアイテム一個ずつとか、悪くすると手形で、毎年いくらかの利息を支払うとか、記念大金貨の発行権だけということもありました」

 ふむ。それを踏まえて戦略を立てなきゃならんな。

「どう思う? ヒロシ、アコ?」

「大金貨の発行権は、うまくすると化けるかもねぇ。こちらにない技術を利用すればコレクション性の高い逸品をつくれるよ。そうしたら高値で売買できないかねぃ?」

「と、いうと?」

「例えば、表面の鏡面加工だとか、カラーコインとか、表面を水晶じゃなくてアクリルで固めて鑑定書を付けるとか、色々できそうだねぇ。また、おやっさんに相談しなきゃ」

 金属加工なら、あそこに持ち込むのが早いか。


「あたしも、マジックアイテム欲しいな。不可みたいにチートなやつ」

「お前、武器とかいらないじゃん。魔法だって、並のアイテムより強いの出せるし」

「だから、チートいのが欲しいんじゃん! ロマンだよ、ロマン」

 ロマンね。稼ぐ心配が無くなるなら手形でもいいかって思った俺、枯れてるかな?


「そういえば、ドメーヌ様もこちらに向かっているそうですわ♡」

 ようやく、租税の引き渡しがひと段落して、スーたちがこちらに戻ってきた。事務所で選挙の話がよく行われているらしい。

「彼女も、投票に来るのか?」

「いえ、被選挙権を返上して選挙管理委員をするそうですわ♡」

「それにしても、間に合うのか? あと、十日しかないのだが?」

「ええ、ドメーヌ様は飛空船をお持ちですから♡」

「「「飛空船!?」」」

 思わず喰いついちまった。そうだよ、飛空船買うって手もあるじゃん!

そんなことを考えていたら、スーから冷や水がかけられた。

「大体、小型の飛空船でも、数億ドロップ。ドメーヌ様の機体は、中型ですが、十六億ドロップもしたそうです。手に入れるには、皇帝陛下に許可を頂かなければなりませんし、維持費だけで年間一億ドロップ以上かかりますわ♡」

 ちくしょー。どこが一地方領主だよ! あいつ、金持ってんじゃん!

「それは、まあ、ドメーヌ様は、冒険者としても旦那様♡ 方よりも格上のSSランクですし」

「なにそれ!? そんなランク聞いたことないんですけど?」

「世界でドメーヌ様達しか居られませんから」

 うわー、チョー敗北感。そんなことを話していると、

「フッカー卿に伝言ですよ。トライイービルの御三方がご到着されましたとのことです。明朝、十時より陛下がお会いになるそうですので、八時までに御登庁下さいとのことです」

 人の好さそうな老婆が声をかけてくれた。彼女がファビー=ラス=ムーアさん。アコが誘拐された時にお世話して下さった方だ。

「承りました。明朝八時までに必ず登庁いたしますと、使者の方にお伝え下さい」

「かしこまりました。御準備の方、宜しくお願いしますね」

 そういうと、玄関口の方に戻っていった。


 アコの話によると、ファビーさんと、ロサの孤児院の責任者、メイさんは、家族同然の間柄で、メイさんがこちらに遊びに来た際に、たまたまアコが聖王都に連れ込まれたらしい。初めは教会の地下牢に閉じ込められていたそうだが、〝呪い〟を受ける直前に〝神託〟が下りてきて、慌てた教会関係者に、一時的なシェルターとして、ファビーさんの孤児院に押し付けられたそうだ。以来、こちらの世界に疎いアコに基本的なこの世界の情報を教えてくれたのが、ファビーさんとメイさんだということだ。


 ファビーさんに聞いたところ、こちらにも神託を受ける人が稀に現れるそうだが、アコ程長い時間神様と繋がっている人は初めてだそうな。これは、ひとかどの聖女ではないと、教会に報告してくれたおかげで、アコは(教会と敵対しないと条件はついたものの)ようやく解放されたのだ。その頃から、教会のアコ押しキャンペーンが始まり、神官としてのアコの名声が全国的に広まった。当初、敵対していても、需要があれば、掌を返して味方面する教会の方針には閉口するが、これもこの世界の掟かと、諦めることにした。おかげで、俺達全員が教会から狙われることが無くなったのだが。




 翌日、

「「「どわっはっはっは!!」」」

 皇帝への謁見の為、朝早くから皇宮に登庁した俺たちは、控えの間へ通された所で、先に来ていた三悪と合流した。そこで、信じられないものを見てしまったのだ! 

 なんと、喜死朗のサーコート姿だ(笑) 普段の着流し姿から一転したフルプレート姿にツボを刺激された俺たちは、危うく奴に笑い殺されるところだった(笑) フルプレートなのに、がに股って(笑) 足細過ぎ(笑) ぷすー(笑) ドンデラマ○チャのコスだぁぁっ(笑)

 こんな恐ろしい攻撃を隠していたとは……

 爆笑し過ぎてお腹痛くなってきた(涙)


「お前、一発芸に命をかけ過ぎだ!」

「うっせー! てめぇこそ笑い過ぎだ!」

 ギャース、ギャースと、いつものやつだ。

 今日は嫁が居なくてよかったよ。

「悪かったねぇ。今日の喜死朗は、〝コレ〟が正装なんだよ」

 今日はドレス姿の剛力が詫びてくる。

「ふん! 何分、幻聖騎士団十六分隊隊長というのが奴の正式な肩書であるが故」

 こちらは、今日は神官服で筋肉を隠している。が、

 は?

「「「えええええっ!!」」」


 コンコン!

 と、その時扉をノックする音がした。

「失礼します。隊長殿、間もなく謁見の間に陛下が御成りになります。移動の準備をお願いします」

「おう! そうだ、紹介しとくぜぇ。俺の部隊の副隊長で、アルベルト=フィエラ=ミェスクだ。こいつは、これでも皇太子なんだぜぇ!」

「えええええっ! 喜死朗ごときが、皇太子殿下にため口だとおぉぉぉっ!」

「うわー! 王子様、かわいそう!」

「事実は小説よりも珍なりだねぃ!」

「……揃いも揃って失礼な奴らだな!!」

 半笑いしながら、入室してきた皇太子殿下は、爽やかに言った。

「これは、隊長が普段からきちんと鎧を着なれていないのが悪いですよ。仮にも陛下の御前で宣誓した騎士なんですから、鎧姿でなければ謁見できませんし、第一陛下に対し不敬というものですよ」

 そう、喜死朗を窘める皇太子殿下は、サラサラの金髪を肩近くまで伸ばし、爽やかな笑顔のイケメンさんだ。彼の方はサーコートを綺麗に着こなしている。背も俺より拳一つ位高く、引き締まった体のやせマッチョというやつだ。

「かぁこいいですねぇ。女の子の夢だよ。素敵な王子様♡」

 むっ、アコが珍しく恋愛脳だ!?

「改めまして、アルベルト=フィエラ=ミェスクです。どうぞ、アルと呼んで下さい、フッカー卿」

「恐縮です。フカ=コオリヤク=フッカー準男爵です。私の方こそ、フカと呼んでください」

 と、言いつつ握手する。ちょっと悪戯しようかと思ったが、しっかりガードしていた。出来る。

「アコ=ナグリ=コオリヤクです。殿下にお目通り出来て光栄ですわ♡」

「お噂はかねがね。こちらこそお目にかかれて光栄です。神官さま」

「私のことは、プロフェッサーと呼んでください、殿下」

「魔水の燃料化を実現したプロフェッサー博士氏ですね。お目にかかれて光栄です」

「んむはぁー! ところで、時間のほうは良いのか?」

「あ、そうですね、ドク、それでは、準備が整いましたらご案内いたします」

 と、言われて慌てて身だしなみを整える一行。

「整いました。ご案内宜しくお願いいたします」

「では、参りましょう」

 爽やかに、華麗に、殿下はエスコートしてくれた。









「フッカー卿、此度の活躍、誠に大義であった。卿の働きに対し褒美を取らせる由、そちらの財務尚書と相談の上、何でも遠慮なく申し出るがよい。後ろの諸卿も、大儀であった」

「ははっ、ありがたき幸せ」

 それだけ宣うと、皇帝陛下は、早々に退室された。選挙のこともあるので、人となりを観察しようと思ってたが、これだけでは全く分からん。

「財務尚書のベルハルト=フォン=バウアー伯爵である。これより、別室にて今回の褒賞について詰めようと思う。係りの者が案内するので、それまで控室で待機せよ」

「畏まりました。それでは一先ず失礼いたします」

 俺が挨拶すると、全員が一礼して退室する。

 控室まで戻ると、体中に汗をかいていた。


「ふう、なんとか、無事にすんだねえ。もっとも、お宝の選別はものすごく時間かかるけどね」

 剛力が、嘆息しながら言う。彼女らは、前にも一度こういう経験があるとか。

「それにしても、しゃべっちゃいけないのつらーい!」

 アコは女性が皇帝に対して話してはいけないという規定に不満があるようだ。

 何度も何度も念を押されたため、余計にストレスになったようだ。

 俺だって、一言しか喋ってないけどな。


 


「準備が整いました。皆様、別室へ御案内いたします」

 ややあって、案内人が俺たちを別室へと案内する。途上、自己紹介した彼は、財務官僚のフォン=ゲイツと名乗った。ここから、移動するのに、30分程かかるそうだ。

「フッカー卿と神官様は、今回の教皇選挙に投票されるとか。一つだけ、守っていただきたいのですが、陛下が出馬しておりますが、絶対に陛下に投票しないでいただきたい。これは、国家と神殿の総意です」

「わかりました。しかし、陛下はなぜ、当選の可能性もないのに出馬なさるのでしょう?」

「陛下としましては、この帝国に陛下以上の上位の存在が居ることに心を痛めている様子。神に対してはともかく、せめて教皇様方とは同格でなければとの御意志かと存じます」

 ふむ、気持ちは分からんでもないが、この国のシステムからすると、余計な事をするなということか。


「ときに、フランディック=ゴーディシュという人物のこと、何かご存じありませんか?」

「フランディック? ……あぁ、名前が間違っていますよ。正しくは、フランケル=ゴーディシュ。聖王都に店を構える金貸し業の男ですな。確かに今回の選挙にル=セッヅ猊下の推薦で出馬されるとか」

 眉をしかめて語るゲイツ卿。

「王都の外で名を聞いたものですから。しかし、金貸し……ですか。何故猊下はそのような者の推薦をされたのでしょうか? 或は、その者に金を借りているとか?」

「はははっ! まさか! 猊下は竜人(ドラコー)の長ですぞ。十分な財をお持ちですし、第一、清貧を旨とする竜人族の掟に反しますな。しかし、それ故理解に苦しむ結びつきなのですが……」

 だんだんと、尻すぼみになったところで、目的地に着いたようだ。

「間もなく、バウアー卿もこちらへ参られると思います。そうしたら、始めましょうか」

 そう言って、我々を奥の席に案内し、自分は、対面の下座に座した。


 さあ、ネゴシエイト(パーティー)の時間だ!




 次回予告


 さて、いよいよ、本気の交渉(勝負)の時間である。

 手練手管を駆使してより多く、優位に交渉を進めたいものだ。

 問題は、三悪の存在か? 前門の尚書、後門の三悪ってか?

 奴ら、どれだけかすめ取ろうとするか。命取られないだけマシってことを忘れてんじゃないか?

 どうする、どうなる、俺達の報酬

 次回 「怒りの報酬」

「「「ギャース、ギャース!」」」

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