閉話 二百年前の話(前編)
二百年前に橘が黒龍を封印した時の話です。少し長くなってしまったので前後編に分ける事にしました。
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グライドナンバー893 神威。そのハイブリット生体システム、雪風。主を亡くして二百年経った今でも彼女の中に主の記憶は消えることはなかった。もちろんコンピューターに接続されている今、メモリーが消されぬ限りその記憶が消えることはない。しかしコンピューターに接続されていなくとも彼女はその記憶を忘れることはないだろう。それだけ彼女と主との関係は深く密接に繋がっていた。それは信頼できるパートナーとしてだけではなく、唯一の友として。だからこそ主に託された願い、それだけは絶対に忘れてはいけない主との約束を叶えるため二百年という歳月を生き続けた。
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ヴァーンの重力兵器により私達はヴァンデルワースと言う世界に飛ばされた。重力兵器に内蔵されたマイクロブラックホールが創り出したワームホールが元の世界とヴァンデルワースを繋いだのだろう。その効果はディスラプターに似ている。ディスラプターが空間ごと食い尽くすのに対し、物質を飲み込んで異世界に放り出すだけの差だ。
元の世界に帰るすべを無くした私達は、ヴァンデルワースに住まざるを得なかった。
幸運な事に元の世界とヴァンデルワースは非常に似通っている。生態系もほぼ変わらず、ごく普通にここで生活することが可能だった。おそらく超空間的に隣り合わせな状態なのだろう。物理定数のごくわずかな差以外に、この世界と元の世界に違いはないはずだ。
だがそのわずかな違いも、宇宙が生まれて数百億年という年月の後には大きな変化を生んでいた。
この世界には我々の世界にない魔法と言うものが生まれてしまったのだ。
魔法は生物にも大きな変化を与え、ついにはドラゴンと言う生物が現れた。
「主この村も全滅です」
「……そうか」
私達は黒焦げになった村の残骸を、見下ろしていた。黒龍にとって人間の村を焼くなど、ただの遊びなのだろう。黒龍のブレスによって薙ぎ払われた村は更地と化し、生き残りの住人など全く見当たらない。
「奴がどこに向かったかわかるか?」
「黒龍は、ほぼ無作為に動き回っているので予想がつきません。ただの気まぐれで進路を決めているようです」
「ただの気まぐれか。ふざけやがって。奴ほどたちの悪いドラゴンはいない。遊びで村を焼いていっている」
主は悔しそうにつぶやく。
ここ、ヴァンデルワースに着いた私達はドラゴンを倒す事により生計立てる事にした。
単機でドラゴンを倒せる物など私達しか居なかったからだ。
現状、ドラゴンを倒すためには何千何万と言う兵士とドラゴン専用に作られた兵器が必要になる。
だが、そんな物は簡単に用意できるわけもなく、人々はドラゴンの脅威に怯えていた。何らかの対策が必要だった。
そんな訳で私達は、軽薄な正義感からドラゴン駆除を行なっている。
ドラゴンと言えど、グライドの前には敵ではなかった。
私達は村や都市を襲う数多くのドラコン達を葬り去った。
だが、あの黒龍が現れ状況は変わった。これまでに倒したどのドラゴンより巨大で狡猾且つ残忍、人類に対し異常な嫌悪を持っているのか、奴が見つけた都市や村は根こそぎ焼き払われている。奴を倒さぬ限りこの世界の人類に未来は無い。
「主、黒龍を発見しました。南南西、約35㎞」
黒龍は膨大な量の魔力を確保している。そのあまりにも強力な魔力は、脳に魔力を感知することが出来る器官を持っているこの世界の人間なら、近づいただけで死に至るほどである。
だが魔力感知器官を持たず、魔法を使えない私達なら近づいても何の問題もなく、更に、魔力センサーは数十㎞離れていても反応する。
「よし雪風、急いで向かうぞ」
「了解。おそらく奴は近くにある農村、サルマに向かうと思われます。先回りしましょう」
私達は農村サルマに急行した。私の予想通り黒龍はサルマに近づきつつあった。
「見つけたぞ。雪風、ゼオフィールドを強化しろ。サルマを防衛するぞ」
私達は攻撃を加えるべく黒龍に近づいていく。
「また、邪魔しに来たのか、からくり人形」
私達に気づいた黒龍は言葉を発した。
驚くべき事にこの竜は人語を理解するのだ。知能が高いためこれまで何度も取り逃がしていた。
「今度こそお前を、倒す」
主が冷たい怒りのこもった声でさけぶ。
「何度来ようとも無駄だ」
黒龍がその怒りのこもった言葉をいなすように答える。
「雪風、ソニックブラストを使う」
「了解、ソニックブラスト起動」
右肩の装甲が開き内部の共振板が迫り上がる。ソニックブラストとは敵の固有振動数の音波を発生させ、組織を破壊する兵器である。強固な装甲で覆われていても、振動が内部に伝わり破壊することが可能である。
共振板が振動をはじめ、甲高い音が発生する。その音は昇りつめるように上がっていき、やがて聞こえなくなった。振動が終わったわけではなく音が人間の可聴域を超えた為聴こえなくなったのだ。
黒龍の首筋の組織が破裂し血が吹き出た。
「くそ、奴の体がデカすぎて効果が薄い」
その時黒龍の伸ばしてきた右手がグライドを掴んだ。
「しまった」
黒龍はそのまま握りつぶそうとしたのだがゼオフィールドで防御されているため握りつぶせないでいた。黒龍は握りつぶすのを諦め、グライドを岩壁に叩きつけた。そして岩壁にはまって動けないでいるグライドにブレスを放った。
今回は質問コーナーです。
Q シュバルツに切られた腕を治す描写が無いんだけど、腕はいつ治ったの?
A すいません、腕の修理は忘れていました。腕を直したシーンを追加しました。
Q. フロイデルさんがいい人過ぎます。
A. そうですねw
Q. 一人目の話は書かないの?
A. と言うことで書いてみました。




