ルクシール隊長の疑惑
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王女にマリエちゃん以上の適性があることがわかったが、マリエちゃんのように気楽に乗ってもらう訳には行かないだろう。仮にも王族だからなあ。
色々あって疲れていたのだろう、王女は後ろのシートでスウスウと寝息を立てている。黙っていれば可愛いのだがなあ。
王女を起こさぬように俺はグライドを納屋の横にそっと着地させた。
王女を抱き抱え、コクピットから飛び降りる。慣性制御フィールドを働かせているので、静かに降りることが出来た。そのままマリエちゃんの部屋まで行き、王女をベットに寝かせる。
さてマリエちゃんはどうしているのだろうか?卵は孵ったのか?
気になったので納屋まで様子を見に行く。
納屋の奥にある孵化器の中には卵はなかった。辺りを見渡すと、納屋の隅の麦わらを置いてある場所に体を丸くして寝ているマリエちゃんを見つける。マリエちゃんに抱きかかえられるようにして灰色の何かがいた。
俺が近づくと、その何かは俺に気がついたのか細い首をヒョイっと持ち上げた。
「ギャ、ギャ」
生まれたばかりの小竜は警戒するようにこちらを見上げ、鳴き声を上げる。
「あ、ケーチさん」
マリエちゃんを起こしてしまったようだ。
「ごめん、起こしちゃったね」俺が言うと
「大丈夫です。ほらリュースケです」
マリエちゃんは小竜を抱き上げると、俺に見せた。
「リュースケって名前付けたのか」
「はい、やっと生まれました」
頭には既に二本の角が生え、背中にはコウモリのような羽があった。
小さいながらも、立派なドラゴンの姿をしている。
何処かにリュースケの小屋でも作らないといけないな。
外を見るとそろそろ空が白み始めている。もうすぐ朝になる。
ーーーーー
朝になり、起きて来た家族にリュースケを見せると、意外なことに一番興味を示したのはユリーシア王女だった。
「この子、何を食べるのかしら。ミルクとか飲ませればいいのか?」
「う〜ん、どうなんでしょう?今まで竜を飼育した例がないのでよくわからないんです。食べれそうなものを用意して、少しづつ与えて様子を見ていくしかないですね」
「私、台所に行って何か食べ物をもらってくる」
「はい、お願いします」
こんな感じで二人で仲良く世話をしている。
「さてと」俺は小竜の世話をしている二人を見ながら考えた。今頃、王宮では王女が居なくなったせいで騒ぎになっているだろう。早く王女を返さないといけないが、彼女は素直に城に戻ってはくれないだろうなあ。隊長は何を考えて、王女をここに置いていったのだろう?
仕方ない。ここで思い悩んでいても事態が解決するわけでもない。フロイデルさんに相談してみよう。俺より王宮に詳しいし、何か良い手段を考えてくれるかもしれない。
善は急げと言うことで、俺はグライドに乗るとフロイデルさんの家まで向かった。
フロイデルさんの家の横にグライドを降ろすと、フロイデルさんが家から出て来た。
「ケーチ殿か。こんな朝早くからどうしたのだね?」
「すみません、早急に相談したい事がありまして」
「そうか。それでは中で話を聞こう」
フロイデルさんに促され、俺達は家の中に入った。
家の中は外観とは異なり、かなりきれいに整頓されていた。
「すまないな、狭い屋敷で。ああ、そこの椅子にでも座ってくれ」
俺が椅子に座ると、湯気の立つカップを俺の前に置いた。紅茶かな?良い香りがする。
「それで相談とは?」
「ええと、良い話と悪い話があるんですがどちらからききます?」
「?、妙にもったいぶっているな。それではまず良い話から聞かせてくれ」
「今朝ドラゴンの卵が孵って、子供のドラゴンが無事に産まれました」
「おお、それは良かった」
「思ったより大人しくって、今二人で小竜の世話をしています」
「二人って、マリエちゃんとアーウラさんかい?」
「ええっと、これが悪い話になるのですが実はマリエちゃんと一緒に小竜の世話をしているのは、ユリーシア王女なのです」
「は?」
まあ、驚くよね。俺は昨日の晩にルクシール隊長がユリーシア王女を連れて来たことを説明した。
「ルクシールの奴、何を考えているんだ。前々から考えなしとは思っていたがこんな事をやらかすとは」
フロイデルさんは憤慨したように言う。
だよねえ。こっちも大変迷惑しています。
「とにかく、イエスタにでも連絡して王女が無事である事を王宮に伝えなくては。それで、ルクシールは何処にいるのだ」
「王女を連れて来た後、いつのまにか居なくなりまして」
「…困った奴だ。アーとベーは何しているんだ」
そう言えば、いつもならあの二人がルクシール隊長の暴挙を抑えているはずだが、今回は二人とも居ない。どうしたのだろう?
「王宮の方には我輩から連絡しておくので、ケーチ殿は迎えがくるまで王女の身柄を確保しておいてくれ」
「わかりました」
俺はフロイデルさんと別れると、とんぼ返りで王女のもとに向かった。
家に戻ると王女の姿が見えない。マリエちゃんに聞いてみると。
「朝食を食べるまでは一緒にいたのですが、その後居なくなりましたね。何処にいったのでしょう?」
どうやら俺が王宮に連絡したのに気がついたみたいだな。感のいい奴だ。
しかし逃げてどうするつもりだろう?そんなに城に戻るのが嫌なのだろうか。
逃げるにしても始めて来た村で匿ってくれる人もいないはずだし、彼女の足ではまだ遠くまではいっていないだろう。
「エリシエル、王女の居場所はわかるか?」
「嗅覚センサーで王女の匂いを追跡してみます」
嗅覚センサーを積んだ小型ドローンを飛ばし、王女を追いかける。
順調に王女を追跡していたドローンだが川まで来たところで、センサーが反応しなくなった。
「川で匂いを消したのか?」
「いや、そんな事考えたわけじゃないと思います。多分川に落ちて流されたのでは」
ありえる、あの王女ならありえる。俺は焦って川までグライドを向かわせる。
王女の匂いが消えた場所から下流に向かってグライドを飛ばす。相当下流まで調べたが王女は見つからない。川の底に沈んでしまったのか?
「エリシエル、もう一回戻って調べ直すぞ」
センサー類をフル稼働させて王女を探す。下流から上流に戻りながら王女を探し続けたが、結局最初に王女を見失った場所まで戻って来てしまった。
「何処に消えたんだ、ううむ」俺が途方にくれていると、川岸でアーウラさんが手を振っているのが見えた。
「ケーチ!」
アーウラさんがずぶ濡れになった王女をつかんでいる。どうやら入れ違いになっていたようだ。特に怪我とかも無く無事のようなので俺は安堵した。
グライドから降りた俺は王女のところまで走り寄る。
「ユリーシア、探したぞ。まったく…心配かけさせるな」
「川で彼女が溺れているのが見えて私が助けたのよ」
「とにかく無事でよかった。風邪ひくから家に戻って着替えよう」
「いやよ。戻ったらまたお城に連れ戻されるのでしょう」
プイッと横を向いて、ふくれっ面でユリーシアは言う。
「なあ、なんでそんなに戻るのが嫌なんだ?お前の家だろう」
俺がそう言った時、後ろから誰かが近づいて来た。
「それについては私の話を聞いていただきたい」
「ルクシール隊長」
そこには、ボロボロになったルクシール隊長の姿があった。




