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その後のアーメス

日曜出勤とかあって、またまた更新が遅れる。

毎日更新とかやってる人ってどうやってるんでしょうね?

21


シュバルツを倒して安堵したのもつかの間。コクピット内がみょうに暑い。後ろのマリエちゃんを見ると様子がおかしい。ぐったりとシートにもたれかかり、呼吸も荒い。

慌ててマリエちゃんを抱きかかえ、外に連れ出す。

マリエちゃんの体温が異常に高い。それどころか、周囲の温度まで、徐々に上がって行く。


「いったい、何が起こってる?」


俺は焦ってエリシエルにわめくように、尋ねる。


「魔力の制御ミスで暴走しかかっているのでは」


淡々とエリシエルは答える。


「暴走って…」


「魔法というのは魔素を観測することにより、人間が使用可能なエネルギーに変える行為のことです。魔素そのものは膨大に存在するためエネルギーはいくらでも作り出せますが、エネルギーが増えれば増えるほどコントロールが難しくなり、制御できないエネルギーが生まれます。制御しきれなかったエネルギーは無作為な状態で発現します。通常は熱ですね」


「まさか、さっきのあれは…」


「自分の制御できる以上のエネルギーを引き出そうとしたのでしょう。強引に抑え込んでいたものの、緊張が解けたときに抑えきれなくなった。ということでしょう」


なんてことだ、マリエちゃんが無茶をしてエネルギーを増やしてくれただけだったのだ。

エリシエルが新たな力に目覚めたとか言っていたのは、何だったんだ。

頭につけた猫耳型の生態モニターからのデータは、マリエちゃんの体温が四十度になっていることを示していた。この状態が続くとマリエちゃんの命に関わってくる。


「このままじゃマリエちゃんの命が危ない。何とかしないと…」


「コントロールしきれなかったエネルギーが徐々に熱となって放出されている状態です。マリエちゃんが意識を失うと、そのエネルギーが一気に噴き出してくる可能性があります。このまま意識を保ってもらい沈静化を待つしかないです」


何か打つ手はないか。


「エリシエル、医療用ナノマシンを使おう」


「それは反対です。あれは景一専用に調整されたものです。他者に使用すれば逆効果になりかねません」


「ナノマシンのプログラミングを変更し、彼女に合わせて調整し直すしかない。出来るよな」


「変更そのものは可能ですが、それでは効果がだいぶ落ちる上にナノマシンを多量に使用する必要があります。医療用ナノマシンは、それ程多くあるわけではないので今後景一に何かあった時に使う事ができなくなります」


「かまわん、今はマリエちゃんの命が大事だ」


「…わかりました」


エリシエルは不満そうだったが、俺の命令に従いナノマシンの再調整を行った。エリシエルは俺の安全を第一に考えるよう作られているため、こういう時に応用がきかない。

再調整したナノマシンをマリエちゃんに投与すると、体温は徐々に下がっていった。

何とか大丈夫になったようで、一息つく事ができた。


「よかった。これで一安心だ」


「ごめんなさい、ケーチさん」マリエちゃんがかすれた声で俺に言う。


「謝るのはこっちだ。済まなかった。…だが、もうこんな無茶はやめてくれ」


マリエちゃんはかすかに頷いた。


しかし、これではもう次の試合は闘えないな。

左肩は潰れた二次装甲を外せばとりあえず何とかなるが、千切れた左腕はどうしようもない。

そもそもマリエちゃんがこの状態だ。棄権するしかないか。


「ケーチ、大丈夫?」


外で待っていたアーウラさんが、心配して様子を見に来た。


「マリエちゃんの容態も安定したし大丈夫だと思う。だけど試合は無理だし棄権しようと思う」


俺がそう言うとアーウラさんは


「え〜、せっかくここまで勝ち進んだのにもったいないよ。よしっ、それじゃあ」


アーウラさんはコクピットによじ登って来た。


「私がマリエの代わりに、ぐっ。せ、狭い」


「お、おい。無理するなよ」


無理やりコクピットに入ってくるアーウラさんに、慌てて俺は言った。

もともと小柄なマリエちゃんだからこそ、コクピットに入る事ができたがアーウラさんでは相当きついはずだ。


「よいしょ、よいしょ。グエッ。ん、何とか入ったよ」


マリエちゃんの代わりにリアクターを動かすつもりらしいが


「エリシエル…、どうする?」


「せっかくだし、試すだけ試してみたらどうでしょう?」


「はいは〜い。それじゃ行くよ」元気に声を上げるアーウラさん。


「仕方ない、リアクター起動するよ」俺は渋々そう言うと、リアクターを再起動し計器をチェックする。


かすかな起動音と共に動き出したリアクターだが、


「これは驚いた、凄いですね」エリシエルが言う。


「まさかこれ程とは」と俺


「どうよ。私でもいけるでしょう」ドヤ顔で言うアーウラさんだが。


「マリエちゃんの100分の1も行ってないです。まさかこれ程低いとは思わなかったですよ」


「え〜〜」


叫ばれてもこっちが困る。落胆したのはこっちだ。いや、どっちかというと予想通りだったかもしれない。


「気持ちはありがたく受け取っておくよ。とにかくコクピットから出なさい」苦笑いしながら俺がそう言うと。


「…」


アーウラさんがコクピットから出てこない。


「? どうしたの」


「出れない」


「え」


「シートにお尻がはまって出れなくなった」


「え〜〜!!」


結局、アーウラさんを救出するのに1時間かかった。



魔法についての考察


この世界における魔法とは、作中にも書かれていたように人間が魔素と呼ばれる素粒子を観測した結果、望んだエネルギー形態として発現させる行為のことです。(後でわかったことですが魔素は実際は素粒子ではなく陽子や中性子のようにレプトンが結びついて出来たもので、グルーオンのかわりに魔力で結びついています)


本来、魔素は重力、電磁力、強い力、弱い力のどれとも反応しないためどれだけ大量に存在していても、この世界に影響を及ぼすことはありません。魔素を観ることにより収束し、エネルギーとしてこの世界に発現します。魔素を観るには魔素と反応する第五の力、魔力と言うものが必要になります。魔素を魔力によって観測することによりその性質が変化しエネルギーとして発現します。その際、魔法陣を使うことにより望んだエネルギー形態として発現します。

(ここでは核力のように働く魔力と電磁力のように働く魔力を同一のように記述していますが二つの力は別のものなので、後に二つの力を媒介する素粒子、ミステリオンとエンデミオンが発見され、その誤りが指摘されました)

どのようにしてエネルギー形態を変化させるかの仕組みですが。

量子力学の実験の一つに二重スリット実験と言うものがあります。縦に細く切った二つのスリットに電子を粒子として打ち出し、スリットの反対側に用意したスクリーンに打ち出された電子の跡が残るようにします。普通に考えれば、スクリーンにはスリットの形をした跡が残るはずですが、実際には干渉縞と呼ばれる濃い部分と薄い部分が交互に続く縞模様が現れます。これは電子が波の性質を持つためです。

しかし、スリットの前に観測器を置き電子を観測しながらこの実験を行うと、干渉縞は現れずスリットの形をした跡が残ります。観測したために実験の結果が変化したわけです。

魔素も人間が観測することにより、その形態が変化します。魔法陣が二重スリットにあたるものになります。

もちろん二重スリット実験と同じことが魔法を使う際に行われているわけではなく、実際にはもっと複雑なことが行われているのですが、その原理的な部分が似通っているので説明する際の参考にしました。

魔法陣を上手く使うことにより、熱や電気、位置エネルギー等様々な形態に変化させると言うのがこの世界の魔法の仕組みになります。


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