鋼鉄の凱歌
20
観客席に居るはずのイエスタさんを捜すが、移動したようでさっきの場所にはいない。
「う〜む、困ったな」
「フロイデルさんの応援に来ているって言っていたので、そっちに行っているのではないでしょうか?」
そうかもしれないと思い、フロイデルさんに連絡してみる。
幸いにトランシーバーを持っていたらしく、フロイデルさんにはすぐ連絡がついた。
「ケーチ殿か。さっきの試合は凄かったな」
「ありがとうございます。ところで、そちらにイエスタさんは居ないでしょうか?」
「イエスタか。居るぞ、ここに」
「よかった。今から直ぐにそちらに行くので、待っていてもらえないでしょうか?」
「ああ、わかった」
フロイデルさんから居場所を聞き、急いでそこに向かう。
出場選手の機体の待機場所に居るとのことだったが、なかなか見つからない。
「景一は方向音痴と言うわけでもないのに、居場所とか探すのが下手ですねえ」
「うるせ〜」
出場者多過ぎだろう、とか思って焦ってウロウロしていると後ろから俺を呼ぶ声がする。イエスタさんが大きく手を振っているのが見える。
「やっと見つかった」
「見つかったと言うより、見つけてもらったと言うのが正しいのでは?」
「うるせ〜」
イエスタさんのところまで、小走りで駆け寄る。
「どうしたんだい?そんなに慌てて。私に話があるとの事だが?」
そうイエスタさんに尋ねられたので、さっき起こった事をそのままイエスタさんに伝える。
「という事なので、王に伝えてもらい対策を取ってもらおうと思うのですが…」
「ふ〜む、困ったな」
イエスタさんが、どうも煮え切らない様子だ。
「ドラゴン出現の件は、そもそもあの場所は過去に何度かドラゴンが現れていた場所であり、フロイデルの書状もあったので王に直ぐ伝えたが、今回のケーチ君の話は君がその女から聞いたという事でしかない。もちろんケーチ君を疑っているわけではないのだが、王に伝えるには信憑性が低いと言えるのだよ」
「証拠がいると?」
「ちょっと違うな。我が国の周りには三つの隣接した国があり、現状においてどの国とも微妙なバランスをとっているような状態なのだ。ケーチ君の言う通り帝国が我が国を侵略しようと攻撃を仕掛けて来たとしても、防備を帝国側に大きく振ることは出来ない。そんな事をすれば公国も共和国も同時に攻めてくるだろう。現状維持で何とかしないといけないのだ」
「そんな無茶な」
「確かに無茶だな。しかし今まで国王はその絶妙なバランス感覚で全ての外交を取り仕切りなんとかしてきたのだ。だからフェイクとわかっている情報を王の耳には入れられない」
「彼女、ギオルギーネが嘘をついていると?」
「まず間違いない。何故そんな重要な情報を君に話したと思う。嘘だとしても王の耳に入ってしまえば用心せざるを得ない状態になる。彼女が帝国の人間というのも嘘だな。公国か共和国どちらかの者だろう」
「それじゃ、今の俺は何もしないほうがいいって事ですか?」
「いや、ケーチ君にしか出来ない事がある」
イエスタさんはニヤッと笑い言った。
「大会でその女の機人をぶっ潰す事だ」
ーーーーー
「やれやれ、本当に厄介なことになった。エリシエル、俺は勝てるかな?」
「アーメスのデータベースに彼女と彼女のグライド、シュバルツシュテレンのデータがあります。機体性能はアーメスとほぼ同等ですね。まあ当たり前ですが。ただ接近戦においてはシュバルツの方が有利かもしれません。」
「う〜む」
「こっちにも有利な点はありますよ。ヴァンデルワースに来てリアクターがまともに動かなくなったのは私達だけではないはずです。シュバルツのリアクターも同様の不具合を起こしているなら、こちらにもワンチャンあります。エネルギーが少ないため短期決戦で済むように調整を行なっているようなので、試合を長引かせ、まあ泥試合になるのが理想的ですが、試合が長引く程こちらが有利になります」
「なんか、嫌な展開になってきた」
その後、俺達は次々に勝ち進んでいった。相手は雑魚ばかりなので当然なのだが。
そして次の試合、ついにシュバルツと当たることになる。
解説も兼ねた審判の声が拡声器から響く。
「大会も中盤となりました。次ぎなる闘技者は黒い死神シュバルツシュテレン。相手は竜殺しアーメス。さて、解説のユリーシア王女、今回の試合はいかがな者でしょうか」
へえ、王女様が解説かあ。アーメスにも竜殺しなんて言う二つ名がついたか。うむうむ。
「ご紹介に預かりました王女ユリーシアです。そうですね、まずシュバルツシュテレンですが、この機体対戦相手を全て10秒とかからず倒しています。文字通り秒殺ですね。底知れない力を持った機人と言えますね」
「ほほう、ではアーメスの方はどうでしょう」
「ぽっと出の新人ですね。最近ドラゴンを倒したなどという噂も聞かれていますが、格付けのために話をもったんじゃないんですか」
なんだよ、ぽっと出の新人って。今回初めて大会に出るのに、ぽっと出も何もあるかい。格付けのために話を持ったあ?ふざけるな、だんだん腹たってきた。
「なるほど、では王女はシュバルツ有利だと見ているのですね」
「7ー3、いや、8ー2でシュバルツですね」
「ふむふむ、ありがとうございました」
むう〜、ツッコミどころ満載な解説だった。ところで審判。解説なんぞしてないで、さっさと試合を始めさせろ。俺もギオルギーネも闘技場で、既にスタンばってるぞ。
「皆さまお待たせしました。シュバルツシュテレン対アーメスの試合を行います。双方とも準備はよろしいでしょうか。では、始め〜!」
俺は手にチェンソーを持つ。カチンと音を立ててホッケーマスクも装着される。
「なあ、エリシエル。ホッケーマスクっているのか?」
「様式美ってやつです」
なんだかよくわからないが、外させてはくれないようだ。
シュバルツが横殴りに大剣を振ってくる。かわしきれずモロに剣にぶち当たり20mぐらい吹き飛ばされる。
「シュバルツの一撃。アーメス秒殺か〜」
審判の声がする。終わってたまるかい。俺は即座に機体を立ち上がらせる。
審判の手がクロスされる。試合続行の合図だ。
シュバルツは今度は上段からそのまま切りつけてくる。それもモロにくらい、地面に叩きつけられる。
「まだまだ〜」俺は即座に機体を立ち上がらせる。
シュバルツの突きをそのまま受け、観客席と闘技場の境目まで飛ばされる。
俺は即座に機体を立ち上がらせる。
シュバルツの攻撃を食らう。俺は即座に機体を立ち上がらせる。
そんな攻防?が繰り返される。
「ちょっとまて〜、何で避けない。何で立ち上がれる。お前はゾンビか何かか?」
ついに堪り兼ねてギオルギーネが叫ぶ。
「ふふふ、ノーガード戦法」
実はエリシエルの忠告を受け、エネルギーの大部分を防御に使っている。そのせいで、動きが鈍くなり相手の攻撃を避けれないが、その実、大したダメージはもらっていないのだ。
こうやって、相手のエネルギー減少を待ち、エネルギーが減ったところで叩き潰すというセコイ作戦だ。
「頭脳戦といって欲しいですね」エリシエルがなんか偉そうに言う。
「仕方がない、まだ中盤なので使いたくはなかったが。シュバルツ、リミッター解除」。
ギオルギーネはそう言うと剣を青眼に構える。両手に持った剣が青白い閃光を放つ。
「プラズマソード起動。喰らえ、エターナルギャラクシーボルト。これを受けた相手は死ぬ」
「何いきなり中二病発症してるんだよ」
「景一、避けて。避けないとまずい」エリシエルが悲痛な声で叫ぶ。
身体を捻って避けようとしたが、間に合わないので左腕を盾がわりにして剣の軌跡をずらす。
何とか攻撃は避けれたが、左腕は半ばから断ち切れた。
「どーすんだよ。予想外の攻撃力だぞ。今回は左腕を犠牲にして何とか避けたが、つぎは無理だぞ」
「くくく、我は無敵なり。我が技に敵うものなし」ギオルギーネは益々調子に乗ったようだ。中二病の度合いが増している。
「クソ、このままじゃ俺はともかく、マリエちゃんまで巻き込んでしまう」そう思った時、後ろのマリエちゃんの様子がおかしい事に気がつく。
「負けない。私は負けない」
「マリエちゃんの魔力値、急激に上昇。これって主人公がピンチに陥った時、新たな力に目覚めるって奴では」エリシエルが興奮したように言う。
(作者注 主人公は景一です)
「ゼオフィールドの出力を上げろ。突っ込むぞ」大きく踏み込みと硬い地面が抉れ、機体に急激な加速がかかる。そのままシュバルツに体当たりをかける。肩からシュバルツに激突する。左肩がへしゃげたが気にせず掌底をボディに打ち込む。
シュバルツの身体が崩れるように倒れる。
「勝者、アーメス」
審判の声が上がると、堰を切ったような歓声が湧き上がる。
ゼグライド本編の連載も開始しました。
外伝と違いかなり暗い話なのですが、良かったら読んでみてください。




