王都ヒッチハイカーズガイド
GWになり休みが取れたので、少しは更新が早く出来そう。
しかし平成ももう終わりかあ。
17
大会の登録を済ませた俺達は、せっかく王都まで来たのだから王都見物でもしようと言うことになり、急遽王都観光ツアーが組まれた。グライドは中庭で待機させ、俺達は王城を後にした。
大会が近いせいか街中、特に大通りには無数の屋台が出ており、肉を焼いた物やお好み焼きのような食い物。肉や野菜などを煮込んだシチューのようなスープなど、様々な物が売られている。
俺は串に鶏肉を刺して焼いて塩を振った物、要は焼き鳥だな。それを何本か買って食べながら街中を散策した。街は人通りが多く活気にあふれている。
アーウラさんはいつのまにか大量の食い物を買い込み、口の周りをベタベタにしながら食べている。その様子を見かねて、マリエちゃんがハンカチで口の周りを拭いてやっている。どっちがお姉さんだかわからないぞ。
「王都の観光名所として有名なのは、ラインソール教会ですかねえ」胸元に入れた通信端末からエリシエルの声がする。端末の位置を調整して、カメラからエリシエルにも外が見えるようにしておく。
「200年ほど前に建造されたラインソール教会は、我々の世界のゴチック様式とよく似た感じで造られているそうです。二つの高い塔とその周りにある三つの礼拝堂。その全てに細かい彫刻やレリーフが施されている豪華できらびやかな建物だそうです。彫刻はこの世界で著名な彫刻家、サンデウイット作で、全部で253個もあるとか。王城からそれほど離れていないので、すぐに着くと思います」
どこからその情報を仕入れたのか知らないが、エリシエルによるウンチクを聴きながら俺達は教会に向かう。
街中の建物のほとんどは石造りで、高さもせいぜい3階建てくらいである。王城と教会を除けば高い建物はほとんどなく、そのため教会の場所はすぐにわかった。
ちなみに中世ヨーロッパなどの街とは異なり、下水道がキチンと作られ整備されているので、通りが糞尿まみれにはなっていない。
王城周辺は馬車の通行が制限されている。そのかわり、荷物運搬に特化した機人が荷車を引いてたり、荷の積み下ろしを行っている。街中への荷物の運搬は街を通る水路によって行われており、荷を積んだ船が沢山ある。
しばらく歩くと教会に到着する。教会は観光名所だけあって外国からも沢山の人が訪れている。
教会内は見学自由とのことで、俺達はお上りさんよろしくゾロゾロと教会に入っていった。
正面の入り口をくぐると直ぐに礼拝堂である。
「うわあ、天井高いなあ」
天井には宗教画と思われる壁画が全面に描かれ荘厳な雰囲気を醸し出している、ような気がする。
実際のところ、元の世界でもこんな教会とかほとんど行ったことはないし、宗教画とか見せられても正直よくわからない。エリシエルは気に入ったようだが、俺にはこんな高尚な場所は性に合わないので早々に退散することにした。
「次はギピリニアス公園にある噴水でも見ますか?」とエリシエル。
「コインを投げ入れて願いをすると叶うとか、そういうところ?」
「さあ?そういう場所ではないと思いますがねえ」
「鉄の斧を落とすと、女神が出てきて金の斧と銀の斧をくれるとか?」
「そういう場所でもないと思います」
「なんかもっと面白い場所はないのか?嘘つきが口の中に手を入れると喰われてしまう顔のレリーフとか」
「何処のローマですか」
などと俺達がギャーギャー騒いでいると。
「兄ちゃん達、観光で王都に来たのかい?」と、ガタイのいい親父が俺たちに話しかけてきた。
「ええ、まあそんなもんです」俺が答えると
「ならば、ロウドリエンツ博物館とかいいぞ。この国の歴史的遺物とか陳列されていて、観光客には評判が良い。特に目玉は、王のコレクションの機人が大量にあることだな。変わった機人が多いので意外と面白い」
「へえ〜」
俺達は親父に礼を言うと、ロウドリエンツ博物館に向かうことにした。
博物館までは結構距離があるがタクシーとか便利な物はないので、そこら辺を走っている機人の荷車とかを適当に捕まえて乗せてもらうことにする。
簡単に言ったが、実は俺がやっても車がなかなか捕まらなかった。仕方ないのでアーウラさんに頼むと一発である。
こう言う時女性は得だと思ったり思わなかったり。
さて、何度か車を乗り換えやっと博物館に到着する。
入場料が馬鹿高いが、そこは我慢してチケットを買って中に入る。
館内は思ったより広く、中を見ると有るは有るは数十体の機人が所狭しと並んでいる。一体づつ細かい説明が書かれた看板があり、取り敢えず一番手前に有った恐竜型の機人のを読んでみる。
「え〜と、何々。ドラゴンを模した機人で口から火炎を出し足底のロケット噴射で空も飛べる」
「MechaGodzilla!!」エリシエルが妙に良い発音で叫ぶ。
「俺はガンダムで行く」しまった。つい乗ってしまった。ええい、次行くぞ次。
「次はっと。三体合体し、合体の順番を変更することにより様々な状況の変化に対応できる。ゲッ◯ーロボかな?」
「高速猿人サルベガス」
突っ込まない、突っ込まないぞ。
「今度も三体合体か。特徴は非常に遠距離まで届くパンチ」
「名付けて無限軌道パンチ」
「三体合体多いな。次のは六体合体かよ」
「六神がった〜い」
「次のは。ブハハハ、十五体合体だってよ。笑える」
「積み木合体とか言われてましたね」
日本人は合体ロボ好きだな。これ作った奴、絶対アニメオタだな。
まあ、とにかくこれだけ日本のアニメカを模倣した物を作っていると言うことは、作ったのは間違いなく俺達より先に来ているグライドだ。やはりまだ生存しているのだろう。
これだけの数を揃えたのだから、王様はグライドの居場所について何か知っているはずだ。
何とか話ができないものか。