喫茶店
ある日お兄ちゃんとねぇねに「大学で授業を受けてない時何しているの?」と聞いてみたところ、喫茶店にいるという回答を得たので、みんなで行ってみようということになりました。
「まさか、あんたも同じところに来ていたなんてね」
ねぇねが少し不服そうにそういうと、お兄ちゃんは特に気にした様子は見せずに答えます。
「こっちは知ってたけどな、お前がここに来てるの」
明るい茶色が基調となっている温かみのある喫茶店。席数もそこそこ多くてカウンター席もありお店の人と話したい人はそこに座り静かに過ごしたい人はボックス席に座るといった態を成しているようです。
今日は夏休みとは言え平日の昼間だからなのかあまりお客さんは来ておらず、あたしたちはボックス席で注文を決めます。
そうしているうちにお兄ちゃんたちよりも何歳か年上に見える女の店員さんがやってきました。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
いろんなところで聞くそのセリフを言った後で、店員さんは面白いものを見つけた様な表情を見せます。
「珍しい組み合わせね。何二人付き合ってんの?」
「それはない」「それはないです」
急に普通の話し方になった店員さんの言葉にお兄ちゃんとねぇねが同時に否定します。
息ぴったりのその返答に店員さんはニヤニヤと笑い、それからあたしを見つけると口を開きます。
「それで、その子は……」
「家の妹」
店員さんが言い切る前にお兄ちゃんが説明をしたので、あたしは少しあわてて「は、初めまして」と頭を下げました。
「なるほどね」
店員さんは何かを理解したかのようにそれだけつぶやくと「それで、ご注文は?」と仕事に戻りました。
「いつもの」
お兄ちゃんがいち早くそういって、続いてねぇねが「エスプレッソで」と言います。
あたしは少し迷ってブレンドコーヒーを頼みました。その時に店員さんに「苦いけど大丈夫?」と聞かれましたが、「大丈夫です」と答えると何故か店員さんはねぇねの方を見てくすくすと笑ってカウンターの方へ戻っていきました。
少ししてまずあたしとねぇねが頼んだコーヒーが運ばれてきました。コーヒーのいい香りがしてすぐに手を付けようと思いましたが、お兄ちゃんのがまだ届いていないので気兼ねしていると「飲まないのか?」と促されたので「ううん、ありがとう」と言ってカップに口を付けます。
苦みが少なくやや酸味が強いあたしとしては飲みやすいもので、あたしがカップを下すとねぇねがこちらをじっと見ていました。
「ねぇねは飲まないんですか?」
あたしが首をかしげながらそういうと、ねぇねは「そ、そうね」と焦ったように言ってからカップに口を付けます。
それからカップを下すと不自然な笑顔で「やっぱりここのコーヒーは美味しいわね」と棒読みで言いました。
そんな反応にあたしが首をかしげていると、店員さんがお兄ちゃんの頼んだものを持ってきてねぇねに声を掛けました。
「本当は美味しいなんて思ってないくせに。あなたいつもカフェオレ頼んで砂糖を入れてるでしょ?」
店員さんが意地悪そうな口調でそう言うと、ねぇねは「そ、そんなこと……」と言いながら小さくなってしまいました。
「見栄を張るのも大事だけど、張りすぎても辛いだけよ? はいこれ、特別だからね」
そういって店員さんはコトンと小さなポットみたいなものを置きます。中を見てみると白い液体が入っていました。
ねぇねは小さいままで「ありがとうございます」と顔を赤くします。それが少しかわいく見えました。
「変に見栄を張ろうとするから」
お兄ちゃんが呆れた口調でそういうと店員さんもため息をつきます。
「貴方は少しくらい見栄を張ってもよかったんじゃないの?」
それだけ言って店員さんは戻っていきましたが、あたしにはその言葉の意味が解りませんでした。
何せお兄ちゃんの前に置かれたカップの中はコーヒーのように黒いですから。
「あーにぃは何を頼んだの?」
結局わからなかったので直接尋ねてみると「ホットチョコレート」という答えが返ってきました。
一人で喫茶店とか行ってみたいですね。




