↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
LOVERSコード  作者: 蒼貴みかげ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/58

code04:vision03 休憩室

 今日は『定時に帰れ』と言われていた。

 三朝は白石に退庁を告げ、司令室を出た。

 オレンジ色のノートPCを抱えて。


「立樹警部補がいらっしゃるというので、

限定カラーのオレンジを確保しておきました。

よく似合ってます。

ちなみに高桐警視は黒、奈守警部はグレー、

白石警部には白を手配させていただいています」


 僕のこだわりです、と。

 警務の職員が届けてくれたノートPC。

 オレンジ社の『オレンジブックPro』。


 持ち出しOKなので、抱えて帰るつもりだ。

 その前に。

 本部1階の片隅にある休憩室に来ていた。


 狭いスペースに自販機が2台ほど。

 長イスと、短いカウンター席が2席。

 『電子たばこのみOK』の張り紙があって、

 換気扇が常時まわっている。


 休憩室で座るのは、はじめてだった。

 他には誰もいない。

 

 オレンジブックを開いた。

 被害者のスマホ写真を表示させる。

 2台の画像を見比べて。

 

 ――確認した。


 煌びやかなスマホケースに貼られた、

 いくつかのステッカー。


 どちらも可愛いキャラが貼ってあり。

 どちらのスマホにも、混ざっている。

 ……ゲームのキャラが。


 ゲームのタイトルはちがう。

  『キャスティング4ザ・グレイテスト』。

 青春群像コマンドRPG。

 もうひとつは『Wild Fang』。

 世界で人気のハンティングアクション。

 スマホゲーではなくゲーム機用ゲーム。


「C4Gのエコクマちゃんと……ワイファンのリンクスくん……」


 クマと山猫のキャラクターステッカー。


 次に。

 被害者の『自宅捜索記録』を確認する。

 だが被害者2人の、どちらの家にも、

 ゲーム機が確認された記録はなかった。


 どういうこと――?


 ただ可愛いいから貼ったのだろうか。

 別の、なにか理由があるのか。

 ゲームしない人がゲーム系のステッカー?

 それも。

 2人とも……?


「立樹警部補」


 突然、声がして、はっとふり返ると。

 すぐそこに高桐が立っていた。

 いつもの平然とした顔で見下ろしている。


――警部補?


「何度か呼んだぞ。帰るんじゃないのか」


 言いながら自販機の前へ行く。

 大きめの缶のブラックを買った。

 三朝は、高桐を見上げたまま言った。

 

「あ、今からですか」


 本庁へ寄って→張り込みと聞いていた。

 

「もう出るけど。その前に。ちょっと喫煙、よろしいですか」


 口調がすこし厳しめだ。

 居残りを怒っているのかもしれない。

 

「あ、どうぞ……」


 三朝は横へズレて、スペースを空けた。

 高桐が座る。

 狭い椅子で、距離は、ほぼない。

 慣れた手つきで電子煙草をセットした。

 

「午前の議事録、出しておきました。確認お願いします」


「あとで見る。部長に突っ込まれて困ってたな」


 前を見たまま、苦笑いした。

 分かるよと言いたげな笑い方。

 三朝の手元を見る。

 

「さっきも言ってたな。それ」


 表示されたままのスマホ写真。

 2人ともゲームのステッカーをですね?

 言えなかった。

 

「そうですね……気になって」

「たしかに意味は絶対ある」


 缶コーヒーを飲み、煙草を口にした。

 煙りの匂いは苦にならない。

 

「ただ、いま考えても分かるとは思えないな」

「そうなんですよね……」


 スマホを残した――意味。


 たとえば何か仕込んでいるなら。

 メッセージとか、警察への煽り文句とか。

 白石の解析完了が待たれるが。

 

 もし――スマホの中身ではなく、

 "外装に”意味があった、としたら?

 ステッカー……。

 確証のない事は、しかし言えなかった。


 三朝は、少しだけ、隣をうかがった。


 高桐は、ただ隣に座っていた。

 腕がすこし触れ合うくらいの隣に。

 

 換気扇が空気を巻き取っていく音が、

 1人の時より少し大きく聞こえる。


 以前に戻ったようだった。

 研修生の頃、道警の休憩室に、

 よく連れて行ってもらった。

 自販機と長イスだけの狭いスペース。

 この場所と本当によく似ている。

 

 1年4か月――離れていた期間。

 けれど、あの頃に戻ったのではない、

 そっくり同じ感覚のまま今にある。

 

 あのままの高桐が横にいる、

 遠ざけるべき、落ち着く空間――。


 やがて煙草を捨てて、立ち上がった。

 

「時間だから行く。

今日は送って行けないから、早く帰れよ」


 さっきとちがい、優しい声に聞こえた。

 精一杯、歪んだ笑顔で送り出した。


「わかりました。気をつけて」


 また1人になった休憩室で。

 PCを見つめて。

 15分ほど、たっただろうか――。

『LOVERSコード』および関連作品に掲載されている文章・画像・動画・ロゴ・キャラクター・設定等の権利は、作者・蒼貴みかげに帰属します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。