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演目41 奇術師魔法少女ネロ

 

 魔王を名乗ったリリスを倒して一ヶ月が過ぎた。

 ようやく今回の事後処理が片付き、街も平穏を取り戻し――てはいない。今日も今日とてナイトメアが出現し、俺たち魔法少女は戦って倒して平和を維持している。


「ふぅ。一丁上がり」


 ナイトメアを単独で倒した直後、スマホから着信が入った。取り出して画面を見れば、珍しくカエサルからだった。あれからちょくちょくトコトークで連絡を取り合っているが、忙しいらしく今まで通話なんてして来なかった。

 不思議に思いつつ担当エリア内で一番高いビルの屋上に瞬間移動し、夕焼けの街並みを眺めつつ通話に応じる。


「はいもしもし。皇ネロです」

『カエサルだ。こうして話すのは久しぶりだな』

「ん、久しぶり。声からして元気そうで何より」

『ああ、こちらは忙しくやっているよ』

「だろうね。ヨーロッパを纏めてローマ帝国を復活させたってテレビでやってたのを見た。笑ったよ」

『そうか。笑えたか』


 今のカエサルは皇帝兼魔法少女協会本部の本部長をやっている。魔法少女として現場で活動することは少なくなったが、後進の育成には力を入れているとかテレビで言ってた。


「で、用件は?」


 単に世間話をしたくて電話して来たとは思っていない。カエサルは真面目だから。


『……ネロ、君はまだ新人で魔法少女ランクが最低のFだろう?』

「まぁ、そうだけど」

『今度、六月の昇格試験を受けるのだろう?』


 あぁ、嫌な予感。


「……ブロンドさんから最低でもBランク以上は受けろって言われてる」

『そうだろうな。私から見ても君の実力はA相当……もう少し経験を積めばSでもいいと思う。でだ。今度の昇格試験、会場は本部の百合園――ヨーロッパで行うように働き掛けた。是非来てくれ』

「あっはい」

『フフフ、楽しみにしているぞ。話は以上だ。短い時間だが声が聞けて良かった』

「私も。現地で会おう」

『ああ、待っている』


 通話が切れた。


「……なんっか、裏がありそうなんだよなぁ」


 でもそういったことを調べる気は無い。めんどくさいし。

 スマホを仕舞おうとしたら着信。今度はマイカだ。

 ちょっと気まずくて、五コールで出る。


「もしもし」

『ちょっとネロ、あんたどこにいるの!? ナイトメアはちゃんと倒したんでしょうね?』

「ナイトメアは倒した。場所は……あー……ちょっと高いところに」

『はぁっ!? 今日は智子の家でお泊り会でしょうが。ナイトメアを倒したんならさっさと帰って来なさいよ!』

「いやちょっとカエサルから電話があって――」

『だったら戻ってから掛け直しなさい。私たち心配したんだから!』

「お、おう」

『ほら、さっさと帰って来る! マシロだってしょんぼりしてるわよ』

「あー分かった分かった。すぐ帰るから」


 こっちから通話を切り、はぁっと息を吐く。


 まくし立てて言われると言い返せないから困る。


 さて帰るか、と思った直後、今度はナイトメア出現の警報が鳴った。


「はぁ、今度はどこだ?」


 確認すると、少し離れた位置だった。


 シャキンッ!


 スマホを仕舞って行こうとすると、もう聞き慣れてしまった音が聞こえた。振り向くと魔法少女衣装である軍服風の黒いゴスロリ衣装を着たマコトがすぐ近くにやって来ていた。


「ネロ、今日はもういい。友達の家でお泊り会だろ? 後は私とブロンドでやっておく」

「分かりました。ではお先に」

「ああ待った。さっき支部長から連絡があった。お前、昇格試験終了後に暫く本部に異動な」


 ……そういうことかぁー。だからカエサルは元気だったのか。


「どうした?」

「あーいえ、ちょっとカエサルから連絡があって、会うのを楽しみにしてるって」

「ハハ、向こうの奴に好かれたのが運の尽きだ。諦めろ」

「はい。でも日本は――この街は大丈夫なんです?」

「問題無い。ぶっちゃけ私とブロンドさえいればどうにもでもなる」

「さいですか」

「ほら、さっさと行け」

「はい」


 指パッチン。


 瞬間移動でトモコが住んでいる、でかいお屋敷の玄関に到着。

 変身を解いて制服姿に戻り、身嗜みを整える。


 ……よし。

 帰りが遅かったから怒られるかもしれないけど、なんてことなかったように振る舞おう。奇術師らしく。


「ん?」


 ドアノブに手を伸ばしたところで、ドア越しに物音が聞こえた。それは段々と近くなっており、嫌な予感がしつつも開けるとマシロが物凄い勢いで走って来ていた。


「ごーしゅーじーんーーー!!」


 ちょっ、勢いあり過ぎ――


「ぐふっ」


 突進というレベルで抱き着いて来て、俺はマシロと一緒に吹っ飛んで地面に倒された。


 あー痛い。魔法少女じゃなかったら怪我してるよ。


「ご主人おかえり! マシロちゃんと待ってたよ! えらい?」

「ああ、偉い偉い」


 頭を撫でてから退かし、立ち上がって軽く汚れを払い落とす。

 そうしていると屋敷の中からマイカが遅れてやって来た。


「随分と遅かったじゃない。苦戦したの?」

「いいや。ちょっとめんどくさい相手だっただけだ」

「そう。無事ならそれでいいわ。おかえり、ネロ」

「ただいま、マイカ」


 ――――――――


 ――――――


 ――――


 ――


 時は少し経ち、一連の事件の復興が終わったその記念式典でマジックショーをすることになった。ナイトメアの脅威がいつでもどこでもあり得る世界だからこそ、こうして事あるごとに区切りとお祭りを兼ねて行われている。そうしないと夢と希望を抱いてやってられないとも言う。

 でかいライブ会場では既に大勢の人々が詰めかけ満員御礼。

 式典だから偉い人の厳粛な挨拶があり、静かな中、犠牲者への追悼と新東京市の復興、これからも希望を抱いて生きていこうと高らかに宣言して式の始まりを告げた。

 拍手と歓声が上がる中、俺は魔法少女衣装を着てハットにステッキを装備し、スタッフの合図に合わせて舞台への階段を昇る。

 トップバッターを迎える拍手と歓声が上がる。

 本格的な舞台での初公演が嬉しくて顔がにやけてしまいそうだが、我慢して不敵な笑みを浮かべ、真ん中にあるバミリを基準に立つ。

 被っているハットを手に持って恭しくボウ・アンド・スクレープでご挨拶。

 姿勢を戻し、口を開く。


「奇術師魔法少女の皇ネロ。後の者の為に盛り上げていきたいと思います。では、ショータイム!」


 指パッチン。


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