第2話 海の中で仕事
このプロジェクトでは、AIマシンをぶん回して、といってもAIコンピュータを時間単位で購入して使うわけだが、三つのレアメタルの精錬方法を探し出し、実際に1トンの精錬を行うのが最終目的だ。
2049年現在、日本の人口は目に見えて減少してしまった。優秀な理工系を卒業する学生は少ない。いや、絶対的に大学生が少なくなっている。かといって、海外から留学生や移住者を積極的には求めていないのは、数十年前から変わっていない。
それを補っているのがAIコンピュータのデータセンターだ。海外、特にアメリカでは2030年ごろには大規模なデータセンターが飽和し始めていたが、それは、電力が足りないのでそれ以上建設ができなかっただけだ。日本も5年ほど遅れた。でも、原子力発電所の新規建設が間に合い、需要を満たすAIデータセンターが設置されている。
あと10年遅れていたら、発電所を建設する人材や設計者の経験者がこの世の中にいなくなるところだった。
21世紀が始まったころに、深海にマンガンモジュールが転がっているのが確認された。でも、テスト的には採掘されただけで、商業的な採取には至らなかった。
中国から、その手のレアメタルを含む金属材料が輸入できたからだ。しかし、世界の資源にかかわる情勢はすごく流動的で、輸入が突然止まったりする。すると、例えば、インドで精錬が始まって輸入ができるようになるとか。
でも、それでは翻弄されすぎるということで、1兆円をかけたプロジェクトが企画されたのだ。遅すぎるという声は多くあったが、始めないと何も結果は残せない。
今、南鳥島の近くの6千メートルの海底のある地域の海上基地「アホウドリ」にいる。この施設は直径300mの円形で、海が荒れると100m近くまで潜れる。
マンガンモジュールは、海底に潜った自立型潜水艦が、集めた鉱石類を定期的に金網に入れて浮かせてくる。
プロジェクトのメンバー2人が、この作業で指揮を執っていて、作業者は大学や企業から契約社員を20人雇っている。
自衛隊の基地が近い。南鳥島自体に頻繁に補給が飛んでくるわけでもないが、緊急の時は利用できる契約になっている。国のプロジェクトだしね。
AIコンピュータは、一般企業での利用は一般化している。事務処理のサポートに優秀だからだ。また、大規模なソフト開発でも活躍している。
新しいソフトの90%は、過去のコードやデータ構造が流用できるからだ。ほとんど完璧なプログラムが短い時間で作業者に提示される。もちろんコンパイルでエラーは出ない。そのソフトに必要な修正を加えると、完成するための時間が飛躍的に短縮出来きる。
でも、優秀な作業者が必要なことは昔と変わらない。
プロジェクトABCで利用しているAIはそれとは異なる性質のものだ。昔、固体電池の開発で、手に入るあらゆる金属や化学物質の膨大なデータから、組み合わせられるものを抽出し、起電力や電子の移動速度などをAIコンピュータに探させるという手法が成功した。
レアアースの精錬現場では、製造可能なものの中からAIが提示した確度の高い材料の組み合わせを実験していく。そして長期テストを行う。けれど、時に人類にとって猛毒な物質が製造過程で生成されることもあっる。
レアアースは、マンガンモジュールを破砕し、粒度を細かくした粉になった材料から、三つのレアな金属を精錬するのだが、上記のような、猛毒の物質が途中で生成されたり、精錬された余剰物に猛毒なものが含まれることが多い。
AIコンピュータは、猛毒物質が最終的な生成物に含まれないよう、適切なそしてコストの安い精錬過程を探し出すために使われる。
この作業には5人が割り当てられている。
また、プロジェクトリーダ、副リーダーがいる。




