第80話
落し穴を拡張して簡易的なリングにする、戦い終わったら元に戻せばいい。
「そんなに焦らなくても、君と戦うためのリングを作ったんだよ」
「そうか、そうか、戦うのだな俺と、戦うんだな」
「始めようか」
闘争君と勝手に呼んでおく。猛然と棍棒を振りかざして走ってまた力任せに棍棒を振りかざしてくる。でも彼の流儀に合わせていたらこちらの命がいくつあっても足りない、どう身体強化魔術を駆使してもあの膂力には勝てない。ならどうするか
【クレイプラウ】
上位オーク共をはめた魔術によって足元は泥濘、泥の沼の様にその足をからめ捕る。無理矢理に泥から足を引き抜こうとすれば力を込めた足が沈む。
「俺は殴り合いは得意じゃないんで」
「ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるな!こんなものは戦いではない!こんなものは俺の戦いではない!戦いでは戦いでは」
「悪いけど、得物で殴りあうのは俺の戦いじゃないんだよ」
【サンダーアロー】
雷の矢が眉間に突き刺ささり、激しい痙攣の後ゆっくりと体が倒れていく、泥の沼と化した地面は柔らかくその屈強な体を受け止める。
もちろん俺は泥の跳ねて来ない距離にいる、まぁ彼からしたら卑怯者なんだろうけど勝ち目のない戦いをするような馬鹿はいないでしょ。
【ストーンケイジ】
頑強な石の牢で囲んで落し穴を元に戻す、というかミーデに戻してもらう。
すると国境の砦からみんながこちらをじっと見ていた。何十人も砦の守りをしている兵士が落し穴をずっと見ていたんだよ。
仕事しろよと言いたくなったけど俺と闘争君との勝負次第では次は自分達が戦うかもしれないと考えれば見るしかなかったんだろう。
檻の中にいる闘争君はそのまま2日程寝たままだった。
俺はその間に国境線上をいくらか移動して侵攻してくる敵軍を牽制して回っていた。
砦経由で移動魔術を使っていた為(俺一人でしか移動できないと嘘はついておいた)戻ったタイミングで傍にいた兵士に闘争君が起きたことを知らされて、会いに行くことにした。
だって誰も食事も水も出してあげようとしないんだもん、そりゃ駄目でしょう。
一応施設外に牢を作ったけど一応あの状態なら捕虜だ。
そして、俺は気が付いた。そう牢には入口もなければ何かを水瓶や食事を通せるような穴が無かったことに・・・・・。
ゴメン、みんな俺が悪かった。闘争君の居る場所から一番離れてる場所に取り急ぎ入口をあけて闘争君に近づく、しかし顔を上げる事もなければ動きもしない。
牢屋の中に入って収納袋から水筒を取出して、闘争君の目の前に差し出すと引っ手繰る様に受け取り一気に中身を飲み干した。そりゃ、丸2日飲み食いしてないんだからそうなるわな。
次に聞こえたのは腹の音、正直びっくりするくらいにデカい音がしたよ。
「負けた俺には食事などない、だからもう一度戦い、それに勝ち美味い物を食って・・・・・」
「ほい、お前の分だ」
収納袋からいくつかのパンと干し肉を取出す。
「俺は負けた、俺の知らない戦い方をするお前に負けた、だから俺は・・」
「なら勝った俺が食えって言ってんだから食え。勝負なら、このパンを先に食べきるってのはどうだ」
「戦いは命を賭けるモノだ、食事は命を作る物、勝負にはならない」
「そうか、勝ちたければ食えよ、また来る」
牢を抜けるとまた誰も出入りの出来ない様に入口のようなものは消えた
さて、魔国の連中はどう動くかな?きっと助けに来るだろうけど。と思いながら砦近くの宿に戻って寝る事にした。
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