第6話 魔獣討伐戦
2014.4.18 話を大きく修正しました。
(ぜんぜん頭がスッキリしない……)
敏文は首の奥に感じる鈍い疼きを首を左右に振って振り払おうとする。そして部屋におかれた魔道具の灯りを頼りに手桶の水で顔を洗い、無理矢理頭を起こした。
すると、扉の外から声がかかった。
「トシフミ様、お目覚めでございましょうか」
「ああ、起きているよ」
「失礼致します」
そう言うと一人のメイドが入ってきた。
「追加の灯りをお持ちしました。まもなく、集合の刻限となります。出立のご準備をお願い致します」
「ああ、わかった。ありがとう」
敏文はブンゾーからもらった革のベストをはおり、腕に革の籠手をつけた。左腰にダイカクから借りた刀をつけ、脚に短剣をつける。ブンゾーからもらった剣は、館に預けていくことにした。腰の左後ろにコウ用の籠をつける。
『コウ。今日もよろしくな』
『トシフミ大丈夫? 寝てないからつらいんじゃ』
『ああ、大丈夫だ。少しだるいが何とかなる』
敏文はコウを籠にいれて部屋を出る。そして階段を降りて、集合場所になっている昨日の会合室に向かった。
会合室の扉は開かれていて、灯りが煌々と灯っており、既に男爵やダイカク、ブンゾーも揃っていた。敏文が最後だったようだ。
「おはようございます。申し訳ありません。遅くなりました」
「いや、まだ予定の時刻に少し早い。気にすることはないぞ」
装備を整えた男爵が、茶を飲みながら答える。
ブンゾーは少し眠そうだ。ブンゾーも前日あまり寝ておらず、馬車に揺られて仮眠しただけだった。無理もない。
その時、カージが入ってきた。
「第一警備隊第一小隊、準備整いました。館玄関前に集合しております」
「それでは、行こうか」
「はっ!」
玄関前には、50名の第一小隊が揃いのカーキ色の服装を身に纏い破魔の武装を装備して整列していた。男爵は整列している警備隊員に訓示した。
「これからシーバ近郊の魔獣掃討戦を行う。シーバだけではない。場合によってはこのミヤザも危険にさらされる可能性がある魔獣が相手の戦いだ。グレイウルフについては既に各員説明を受けていると思うが、何が出てくるか、何が起こるか分からない状態だ。決して気を抜かず、しっかり勤めて、全員無事に帰還するぞ。いいな!」
「「「「「はっ!」」」」」
50名全員が返答する。
「各員乗車せよ!」
御者を含めて10人乗りの馬車が、荷駄も含めて7台連なり、シーバを目指す。
玄関には、男爵の夫人だろうか。メイドや男性の従者たちと共に見送りに出ていた。
「あんた、しっかりね」
「ああ、心配ない。いってくるぞ」
「出発!」
見送りの人々が頭を下げるなか、馬車は出発した。
◇◇◇◇◇
敏文達は男爵と同じ幌つき馬車の荷台に乗っている。
「男爵様も警備隊と同じ馬車に乗るんですね」
「今回は遊びではないし、実用性重視だからな。俺は昔から王宮に向かう時や、他の貴族の館を訪ねるとき以外で警備隊を連れる時は、隊員達と同じ馬車に乗るようにしてるのさ。隊員達と同じものが見れるようにしたいんだよ」
「なるほど」
「ところで、男爵様とダイカク様はどのようにしてお知り合いになられたのですか?」
「うん? あれは5年ほど前だったか。王都の近隣、ホーエン本島の南部で大規模な武装強盗団が暴れた時があってな。当然国としては放っておけないということで国軍が動員されたのさ。何故かその時、その討伐隊に現在の第一王子であるキヨノブ様が参加されることになったんだ。そこで国軍で中隊を預かっていた俺と魔法生物研究所から随行指示を受けていたダイカクとがキヨノブ様の警護を仰せつかったのさ。その時以来の付き合いだな」
「そこで活躍されて男爵に?」
「あれを活躍と呼べればな」
「相変わらずダイカクは厳しいな。まあ、実は強盗団の待ち伏せにあってな。どこかの王子様が勝手に突撃したおかげで、完全に包囲されちまったんだが、ダイカクが風魔法で相手の態勢を崩してくれてな。その後は俺の隊とダイカクの魔法でなんとか強盗団の粗方と首領を捕縛できたのさ」
「さすがですね」
敏文は感心する。
「まあ、手柄の第一は最初に突撃したどこかのお方が持っていっちまったがな」
「宮仕えの悲しさだな」
ダイカクは両手を広げて苦笑いをしていた。
「違いない。その時以来、俺とダイカクはよく杯をかわすようになったのさ。もっとも、少しして俺は男爵を拝命してここに来たから、暫くはお預けだったんだが、ダイカクがこっちへ帰って来てからは、たまに付き合ってもらってるのさ」
「暑苦しい男の顔を見ながらだと、そんなに旨い酒にはならんがな」
「その割には、いつもしっかり飲んで部下に送らせているように思ったが、あれは気のせいか?」
「さあな」
二人は飲み友のようだ。
(そう言えば、こっちに来て飲んでないな。まあ、そんな気分でもなかったが。)
敏文がそう思っていた時、外から声が聞こえた。
「まもなくシーバです」
男爵が顔をパチンと両手でたたいて言った。
「さて、無粋な狼どもをとっとと排除して、旨い酒を飲もうや!」
◇◇◇◇◇
シーバに到着した敏文達は、里の広場に降り立った。
ここを離れるときは、里の者達の遺骸がたくさん並べられていたが、今はもうない。埋葬されたようだ。
「……キクエ。後で会いに行くからな。少し待っていてくれ」
ブンゾーは里の者達が埋葬されたという、里の南に面した斜面へ顔を向けて呟いている。
広場には第二、第三小隊の隊員達が整列していた。副隊長のタケイが男爵に報告をするところだ。
「閣下、現状をご報告します。所在が不明だった9名については、全て確認されました。残念ながら9名とも亡くなっておりましたので、南の斜面へ埋葬しております。今まで埋葬した遺骸には全てに名主に確認のもと墓標を立てておりますので、全員の埋葬場所はわかるようになっております。向かわれますか?」
「いや、掃討が先だ。終わったら、皆に安心して眠るように報告に来よう。やつらの動きはどうだ?」
周囲を見回しながら男爵が尋ねる。
「はっ! 昨晩は、里の随所にかがり火を灯し、名主の家の蔵を借りて交代で休息をとりました。結果、何事もありませんでした。朝になり、周辺を確認しましたが、里の周囲を伺うように動いたと思われる足跡がいくつか見つかっております。やはり、まだ残存するグレイウルフがいるようです」
「そうか、どちらの方向に向かったかは把握しているか?」
「はっ! 途中までは足跡がありましたので。途中の沢を越えたところで足跡が途絶えております。知恵のまわるやつのようでそれ以上は追うことができませんでした。申し訳ありません」
タケイが男爵に対して頭を下げる。
「そうか、ご苦労。破魔の武装を持たない状態でよくやってくれた。第二、第三小隊は、名主と共にミヤザへ引き上げるように。ゆっくり休んでくれ。後は、第一小隊で対応する」
「はっ! 畏まりました。しかしよろしいのですか? 我々が引き上げても」
「大丈夫だ。破魔の武装を装備させているし、ダイカクもいる。お前達はあまり寝ていなかったはずだ。戻ってゆっくり休め。第一小隊は20分後に行動を開始する。各員それまでは休憩とする。但し、呼集がかかった場合、すぐに参集出来るように」
「はっ!」
男爵は、振り返るとダイカクに尋ねた。
「探索はお前の風魔法に頼ってもいいか?」
「ああ、任せてくれ」
しばらくすると、集合がかかった。
「各員、揃っているか?」
カージが点呼を取っている。
男爵とダイカクは里の状況を確認しながら、これからどちらに向かうのかを検討していた。
「ダイカクどうだ?」
「沢の向こうの里の北側の山中がもっとも怪しいな。他にはあまり強い魔力を感じないが、あの方向にはなにかありそうだ」
「わかった。 よし、まずは北にむかうぞ! 10名で1班とする。周囲の警戒を怠るな!」
敏文達は周囲を警戒しながら、グレイウルフと思われる足跡を追って少しずつ進んで行く。
しばらく歩いて追っていたが、確かに沢にかかったところで足跡が途絶えていた。
「ダイカクどうだ?」
「ああ、少し待ってくれ」
そう言うとダイカクは、静かに何か呟くと右手を前に差し出して、ゆっくり体を回転させた。
「こちらだな。10頭ほどの気配がする」
そう言うと沢の上流を指した。男爵が指示を出す。
「よし、では沢に沿って進むぞ。できるだけ物音や話し声は立てるな」
そして、少し沢を登ったところでダイカクが右手を横に上げて、全員に止まるように指示した。
それを見た男爵は、指を2本、続けて3本立てると沢の右側を、次に4本、5本と示して左側を指さした。
すると、2班と3班が沢を渡り右側へ、4班と5班が左側へ進んで行く。そして俺たちは1班と共に前方の様子を伺いながら進む。
沢の奥、少し開けたところにやつらはいた。全部で12頭ほどいるようだ。
うち2頭がこちらに気がついたようで、吠えて向かってきた。
「しまった。気づかれたなら仕方ない」
男爵は指笛を短く1回鳴らした。
すると、各班の弓隊がすっと弓を引いて一斉に放った。
次々と破魔の矢がグレイウルフに突き刺さる。
残るは、周りより一回り以上大きな1頭だけだ。
でもなぜかこちらを襲ってこず、何かを守るように最後の1頭はその場を逃げ出そうとはしない。何か守るものがあそこにあるのか? ダイカクも敏文の隣で考えているようだ。
「よし、最後の1頭やれるか!」
男爵がもう一度弓の斉射を指示しようとして指笛を吹こうとしたときだった。
“ワォーーーーーーーーーーーーン”
最後のグレイウルフが一際大きく、長く遠吠えをした。
「これは……」
『トシフミっ! まずいよ。周りにどんどん魔獣の気配が増えてくる。このままだと囲まれるよ!』
『わかった。コウは紋章に!』
そして敏文は叫ぶ。
「ダイカクさん!」
「ああっ。トシフミわかってる! まずいぞヨシノリ! 周りのやつらを呼び戻せ! 魔獣に囲まれるぞ!」
「わかった!」
男爵は指笛を2回短くならした。
周囲から、2班から5班の隊員たちがこちらをめがけて走ってくる。
その後ろには……。
毛並みが灰色になったさまざまな動物、いや魔獣たちが集まってきていた。その数は、200を優に超える。
兎、猿、鼠そして鳥等もいるようだ。そのすべてが通常のそれより二回り以上大きい。それぞれ兎は大型犬、ニホンザルに似た猿はゴリラ、飛んでいるフクロウは畳一枚分ぐらいは有りそうだ。
普通は無さそうな鋭い牙や爪を構え、みな敏文達とグレイウルフの間に割って入る。
「くそっ! なんて数だ!」
「おい、まずいぞっ!」
隊員たちも動揺が隠せない。
「ダイカクさん! あのグレイウルフの後ろになにかあるんじゃないか? 魔力だまりでは?」
敏文の叫びにダイカクは目を凝らす。
「いや、魔力だまりではなさそうだ。もっとこう、強い……あれは! 散魔石か!」
「ダイカク! 散魔石ってなんだ!」
剣を抜き放った男爵が叫ぶ。
「自然に魔力が非常に高まった場所にできる高い魔力を蓄えた石だ。これがあると魔力を強く周囲に発散しつづけるので、周囲にいる動物や植物が魔獣化してしまうことがある。今回の原因はこれだったのか!」
「ダイカク! 原因はわかった! 今は、目の前のこいつらをどうするかだ!! おい、全員弓隊を中心に半月陣形をとれ! 前衛が剣・刀、中衛に槍、内側に弓だ!」
男爵の指示に隊員達は一斉に陣形を固める。
「よし、おれが風と雷の魔法を使う。少しだけ時間をくれ」
ダイカクは右手と左手を胸のまえで交差させて、なにか呪文のようなものをつぶやいている。
「お前らそれまで持ちこたえろよ!」
「「「「おう!!」」」」
すでに指示がとんでいる間にも、魔獣たちは敏文達を襲い始めていた。
鳥に対しては弓隊が、近づく兎、猿は刀・剣の持ち手や槍隊が必死に応戦している。男爵も剣を抜いて前衛で戦っており、ブンゾーは弓で鳥を撃っていた。
敏文もムラサメを抜いて猿と戦っている。一頭の猿を切り捨てた所で敏文はコウに聞く。
『前やったみたいな炎の槍をどれくらいの数打てるか教えてくれっ! 後、あの散魔石をコウの炎で壊せるかっ!』
『《炎槍》は10回は撃てるよ。あの石を壊すことは多分出来る! 炎を小さく集束して弾にする《炎弾》なら! 《炎弾》使うなら《炎槍》は7回ぐらい!』
『解った!』
破魔の武装を用いているせいか、各隊員とも、怪我をしたものはいるものの、何とか持ちこたえているようだ。
「よし、いくぞ!」
ダイカクは、両手を広げて上にあげたかと思うと、それを下に振り下ろした。
すると、半月形をとっていた隊員の前に大きな風の渦が3本地面から立ち上がり、その中に取り込まれた周囲の魔獣たちを切り刻み始めた。同時に、風の渦の中で雷のような光が、上下左右に走っており、魔獣たちにダメージを与えているようだ。
「すごいな!」
「さすがダイカク様だ!」
隊員たちは歓声を上げている。
ただ、全部の魔獣を巻き込んでいるわけではない。
その時、地響きが沸き起こる。
「なんだっ!」
すると渦と渦の間から巨大な猪が2頭突進してきた。その大きさは圧倒的だ。
密集していたところに突っ込まれたため、10人ほどの隊員が弾き飛ばされてしまった。
「お前ら気を抜くな! デカイのが戻ってくるぞ!」
カージが叫ぶ。
(あの突進は人間じゃ食い止められない!)
そう考えた敏文はコウに指示する。
『コウ!』
『わかった!』
敏文は左手を突進してきた猪2頭に向けて《炎槍》を撃ち込んだ。
2本の炎の槍が猪目掛けてまっすぐに飛んでいき、《炎槍》を喰らった魔獣は体の一部を削られて吹き飛ばされた。
「おおっ!」
「助かった!」
「すげぇ!」
隊員達は歓声を上げる。
「ブンゾーが言ってたのはあれかっ!」
ダイカクが叫んでいる。
そして前衛が戦っている前で渦を巻いていた風が収まると、たくさんの魔獣たちが、倒れていた。
だが、気がつくと新たな魔獣たちが集まり始めている。巨大な猪もまた3頭あらわれた。
「まずいな、これはきりがないぞ。あの、散魔石をなんとかしないと、ジリ貧だ! ダイカク、あれはどうすればいいんだ!」
「風の魔法で周囲の魔力を吹き飛ばして、雷の魔法で石を割るしかないか……」
「すぐに準備できるか?」
「ああ、ほんの少し持ちこたえてくれ!」
「お前らやれるかぁっ!」
「弓隊はほとんど矢がなくなりましたぁっ! 通常の剣で防御に徹します!」
「わかった! 剣と刀、槍はやつらを後ろにそらすなよ!!」
「「「おう!!」」」
敏文は突っ込んでくる3頭の猪目掛けて次々に《炎槍》を放つ。
「グギャッ」
《炎槍》を喰らった猪は隊員たちの側にたどり着く前に3頭とも倒される。
すると、ダイカクの準備が整ったようだ。
「よしっ! いけっ!」
今度は大きな風の渦が1本、動きながらグレイウルフがいた場所に向かって動いていく。
グレイウルフは、最初は耐えようとしていたが、弾き飛ばされたようだ。その後には、丸い文様の刻まれた人の頭ほどの大きさの石が大きな樹の洞のなかにあった。
「あれかっ! 雷でいけるかっ!」
ダイカクは右手をボールを投げるように振り下ろした。
すると、眩しい雷の刃がまっすぐに散魔石に向かって飛んでいった。
だが、ものすごい音がしてそれが散魔石にぶち当たったが、弾き飛ばされてしまう。
「雷が効かない。雷の耐性がかけられているのか! なんてことだ!」
「どうすればいいっ! ダイカク!」
「くそっ。ならば水で……」
今度はダイカクが短く呪文を唱えるとダイカクの頭の上に、水と氷の刃が現れた。
「これならばっ!」
二つの槍は、凄いスピードで散魔石めがけて飛んでいく。そして、石の右と左から挟み込むようにしてぶち当たった。
「いけたか!」
しかし、薄い膜のようなものがあって、二つの槍は石を壊せないまま水は霧散し、氷は粉々になってしまった。
「くそっ。俺の属性では、あれを壊すことはできん!」
「そんな! ダイカク様でも……」
隊員達に、焦りの色が見え始める。
(あれでは……。コウにやってもらうしかないか……)
『コウ』
『わかった!』
敏文は左手の手のひらを散魔石に向けて突き出し、炎を小さく小さく集束させるイメージをしてコウに呼び掛けた。
『頼んだ!』
その時、敏文の手のひらから、オレンジと紅と白が入り混じった小さな、でもとても強い炎の玉が飛び出して、散魔石へ向かって飛んでいった。
その直後、轟音がしてもうもうと煙があがる。煙が晴れて見えたものは、真ん中からひびが入り割れていく散魔石の姿だった。
「おお~っ!」
「すげぇ!」
隊員たちは驚いている。ダイカクと男爵も驚いていた。
「ふう、やれたか」
敏文はほっとしながらも、近づいてきた鼠を下から切り上げる。
「まだ、魔獣は残ってる! 気を抜いちゃだめだっ!」
散魔石が割れたことで、周りの雰囲気が少し変化してきたようだ。魔獣たちもほとんどが倒され、新たに増える様子はなさそうだった。
敏文が少しほっとした、その時だった。
「ガウッ、ガルルー」
大きな影に突き飛ばされる。
(あれ、これって前もあったような……)
そう、グレイウルフの生き残りが、敏文の体を押さえ込んでいた。
『コウ』
敏文は左手をそいつの首に思いっきり押し当てた。
そして、戦いは終わった。
隊員の被害は戦死8名。怪我人は22名。半数以上に被害が出てしまった。巨大な猪の突進に吹き飛ばされたものと、通常の武装で防御していた弓隊の者に、防ぎ切れなかったものがいたのだ。
とはいえ、あれだけの数の魔獣に囲まれたのだ。被害が少なかったほうなのかもしれない。
男爵はそれでも、亡くなった隊員の亡骸の前で、静かに頭をさげていた。
「無理をさせてすまなかったな。また、囲まれちまった。もっと慎重にならなければいけなかったのかもしれない。家族にはすまないことをした。残された家族はかならず俺が最後まで面倒をみるからな」
ダイカクは、壊れた散魔石を隊員に指示しながら回収していた。
「これは、人為的に作られたものだ。自然にできるものではない。雷や水の魔法にも耐性が付与されていた。誰かが、ここで、何かの目的をもって置いたとしたら。これは……」
疲れて座っている敏文のところに、男爵とダイカクとブンゾーがやってきた。そして男爵が言った。
「今回は、助かった。ただ、お前の火魔法については、戻ったらいろいろと教えてもらいたいな」
「はい」
隊員の亡骸を運ぶ準備が整い、生き残った全員が整列した。
「よし、シーバに戻るぞ!」
「はっ!」
敏文たちは、シーバに向けてもと来た道を進んでいった。疲れて重い足取りで……。
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