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「どの感情にいたしますか?」
少女はそう言って、小さな瓶を並べた。
赤、青、透明、濁った灰色。
客は迷わず赤を指差す。
「愛を。できるだけ強いものを」
「かしこまりました」
少女は頷き、瓶を手に取る。栓を抜くと、淡い光が揺れた。それを客の手のひらへと流し込む。
次の瞬間、客の顔が崩れる。
涙が溢れ、膝から崩れ落ちる。
「……ああ……ああ……!」
何かを思い出したのだろう。あるいは、初めて知ったのかもしれない。
少女はそれを静かに見下ろす。
何も感じない。
もう何も。
「お支払いは、記憶でよろしいですか?」
客は頷く。
少女はその額に触れる。
次の瞬間、客の表情から感情が消えた。
空っぽになる。
少女は瓶を一本、棚に戻す。
透明な瓶。
そこには、新しい“愛”が詰められていた。




