第二章 弟 京采との初対面
こちらの作品は一度投稿させて頂いた物になります。
気軽な気持ちで読んで頂けるように、区切って再投稿しております。
約束の日
母には一応隠し事はしたくなかったので、腹違いの弟から手紙が来たから会いに行ってくると簡単に説明した。
母は今更何で?と私と同じ事を言ってきたが
「まぁ、何かあったらすぐに帰っておいで」
と言って送り出してくれた。
私はスマホを片手に弟の最寄り駅までの行き方を調べて向かう。
もちろん今日も珠々は肌身離さず持って来ていた。
最寄り駅は乗り換えも少なく簡単に着いた。
駅からカフェの場所は、分かりやすかった。
カフェの店員に
「七星という者と待ち合わせをしているのですがもう来てますでしょうか?」
と聞くと他のお客さんにそれとなく聞いて貰い、まだ弟が来ていない事を把握した。
「私は龍王寺という者です。
高校生くらいの男の子で七星さんという方いらしたら、私の席に案内して頂けますか?」
と話すと店員はメモを取り
「畏まりました。」
と言って私を空いている席に案内してくれた。
私はスマホの時計を見ながら、どんな感じの弟が来るのかと思い少し興味が湧いてきた。
来るまでは興味が無かったのだが、ここまで来たら一目でも見てみたいと思い店員さんが出してくれた冷えた水を一口飲んだ。
約束の時間から暫く経過してから、店員さんに連れられて一人の青年が私の席の所に来た。
私は弟の姿を初めて見てどうするべきなのか、立って挨拶するべきなのかと悩んでいると弟は店員さんにお礼を言い
「初めまして。七星京采です。」
と言い会釈してきた。
弟は私が想像していたよりも背が高く、180㎝くらいある。
髪は母が好きなタイタニックという映画に出てきたレオナルド・ディカプリオのような髪型で、生まれつき茶色なのか染めても大丈夫の学校なのか分からないが茶髪だった。
父に似た日本人離れしたハーフ顔の爽やかな感じの青年が、私の前に立っている。
じっくり見ると、髪型だけでは無く顔もどこかレオナルド・ディカプリオに似ているような気がする。
正直あまり興味がないハリウッドスターなので、あまりどんな顔だったのか記憶が定かでは無い。
私は弟に席に座るように促すと、礼をして弟は私の目の前の席に座った。
弟が座るのを確認すると店員さんがお水を持ってきてくれた。
「メニューお決まりですか?」
と聞く店員さんの目線は熱く、弟の顔をジッと見つめている。
なるほど、弟はイケメンの部類に入るのか。
と思い女性が一目惚れするような人が私の弟だという事について、少し優越感に似た感情が出てきた。
しかし、そんな気持ちはあまりにも店員さんに対しても失礼だと思い考えを改めた。
メニュー表を急いで開いて飲み物の覧を見る。
私はオレンジジュースを頼むと弟も
「じゃあ同じので。」
と言ってメニュー表を片付けた。
弟は思っていた以上に無表情な子だった。
暫くお互い黙っていたが、姉として私が口を開いた。
「どうして私に手紙をくれたの?」
と聞くと、弟はお水が入ったコップを両手の指先でちょんちょんと軽くタッチするように弄りながら
「父さんから・・・
中学生の時に、父さんから姉さんの話を聞いたんです。
その時に俺・・・
本当に俺が居なかったら、姉さんから父さんを奪わなくても良かったんじゃ無いかと思ったら罪悪感で押しつぶされそうになって。
それで祖母ちゃんに話をしたら、手紙を書いてみたらどうだ?て言われて。
今だって思った時に高校生になってからですけど、やっと言えそうだって思って・・・
それで、書いて出しました。」
「そうだったの。
でもね、手紙にも書いたけれど京采くんが罪悪感を感じるのは違うよ。
私の両親が離婚したのは、両親が決めたことで決して貴方は関係ないの。
だから罪悪感とか謝罪とかは一切要らないのよ。」
「でも。俺どうしても姉さんに会いたくて。」
「うん。
その気持ちは手紙に沢山文字で書いてくれたでしょう?
だからちゃんと、伝わってきているよ。」
「それだけじゃない。
俺が姉さんに会いたかったのはそれだけじゃない。」
とボソボソと聞こえづらい低い声で弟が答えたときに、店員さんがオレンジジュースをお盆に乗せて持ってきた。
私は店員さんがオレンジジュースを目の前に持って来てくれた事に対して小さくお礼を言うと、暫く気まずい空気が流れた。
弟に何て聞いて良いのか分からなかった。
さっきの聞き間違えでなければ、弟は謝罪の気持ちだけで会いに来たわけでは無いらしい。
ならば何が理由で、私に会いたかったのか。
聞くタイミングを失ってしまった私は黙ることしか出来なかった。
すると弟が小さい声でボソボソと
「俺、姉さんの話・・・
実は高校の同級生に聞いてた。
姉さんが霊媒師をしているっていう噂が俺の学校の奴らもしてて、霊媒師なんているのかっていう話をたまたま聞いて。
それで名前を聞いたら、父さんから聞いてた名前と一緒だったから。
それで父さんに姉さんの特徴を聞いたんだけど。
昔の姿しか知らないって言われて・・・
でも祖母ちゃんが姉さんのお母さんと父さんが離婚するまで、お母さんが姉さんの写真を送ってたみたいで・・・
祖母ちゃんに頼んだら見せてくれてそれで・・・
俺、噂の人が姉さんなのか知りたくて。
その霊媒師って名乗っている人がどんな人なのかとか、どこに居るのかとか聞いて調べて大学に一度その霊媒師に会いに行った事がある。
遠くからだったけれど、姉さんの昔の写真と霊媒師の顔を比較したら面影があったから。
それで噂の霊媒師は姉さんなんだって分かって。
それで手紙を出した。」
と言いながらオレンジジュースを、しきりにストローでかき混ぜる弟の姿はあまりにも幼い子供のように見えた。
「そっか。
京采くんの学校でも噂になっていたんだね。
そこまでの事はしていないはずなんだけれどな・・・
でも、どうして霊媒師の人に会いたかったの?
霊媒師が私であっても特に気にすることは無いよね?
腹違いの姉が霊媒師という仕事をしているのが恥ずかしいとかそういう気持ちにさせちゃったのかな?」
と聞くと弟はオレンジジュースを見つめていた顔を勢いよく上げて私の目をまっすぐに見ながら
「恥ずかしいなんて思わない!!」
と大きな声で叫んだ。
その声は店のお客さん含めて店員さんもビックリしてしまう程だった。
私も先程までボソボソ話していた子が急に大声を出したので、驚いたが周囲の目を気にして弟の代わりに謝罪をした。
弟の顔を見ると、弟の目には今にでも溢れそうに涙が溜まっていた。
私は泣かせてしまったと思い急いで未使用のお手拭きを袋から出して、弟の涙が零れないように拭いてあげながら
「ごめん、ごめん。
意地悪なことを言っちゃったね。
ごめんね。
でもね、どうして霊媒師の私に会いに来たのか聞いても良いかな?」
と小さい子をあやすようにして聞いた。
弟は私からお手拭きを取り、目を力強く雑に拭き鼻をズズっと鳴らすと
「俺も同じ力があるから。」
と言った。
私はその言葉を理解するのに、少し時間を要していると弟が続けて
「俺も同じように幽霊とか呪いが分かる。
それも小さい頃から分かって、母さんにはそれが原因で捨てられて父さんに預けられた。
だけど父さんも俺が壁に向かって話してたり・・・
変な煙が見えたりした時に、その煙について聞いたりしてくるのが気味が悪いからって・・・
祖母ちゃんの所に預けられた。
祖母ちゃんは近所の人達とか警察の人から、イタコさんって呼ばれてて。
俺の話も全部聞いてくれるし、気になることは祖母ちゃんに聞けば分かったから・・・
今は楽に暮らしてる。
でも、霊媒師をしている姉さんの話を聞いて・・・
俺は疑問に思って・・・
姉さんはその力を誰かの為に使おうとしている姿を聞いて。
実際に姉さんの姿を見て遠くから見るんじゃ無くて、直接話がしたいと思った。」
なるほど。
確かにお母さんも、父方の祖母が同じような力を持っていると言っていた。
もし祖母の遺伝として私達姉弟にその力が与えられたのであれば、弟が私に会いに来たかった理由も納得出来る。
「そっか。
そういう事か理解出来た。
話してくれて有り難う。
じゃあ京采くんは、いつかはお祖母さんみたいにイタコさんの後を継ぐの?」
「俺はイタコさんにはならない。
でも、名前は違うけど姉さんみたいに霊媒師になりたい。」
「霊媒師か。お祖母さんにはその事は伝えたの?」
「うん。
姉さんが霊媒師をしている事を伝えた時に話した。
でも祖母ちゃんは俺にはそこまでの力が無いって。
強い霊や呪いを祓える程の力が無いって言うから。」
「そうか。
そこまでお祖母さんは分かるんだね。
じゃあ軽い、お祓いをする専門家になろうと思っているのであってる?」
「んー。
俺こんなこと言うと引かれてしまうと思うけど、姉さんと一緒に霊媒師をしたい。
一人だと出来なくてもきっと二人なら多くの事が出来ると思うし。
それにもし祖母ちゃんが死んだら俺また一人になるし。
姉さんが嫌じゃ無かったら姉さんと一緒に霊媒師をしたい。」
と力強い目で訴えてきた。
私が腹違いの弟と一緒に霊媒師をするというのか。
「それは無理かな。」
「どうして?
迷惑はかけない!
絶対にかけないから!」
「違う違うそういう事じゃ無いよ。
あのね私がしているのはボランティアにしか過ぎないの。
だからお祖母さんみたいに警察の人からお願いされたりする程の経験値も無いし、力もどれだけあるのか分からない。
だから私が出来る範囲でしか私も出来ないから、お金は基本貰っていないの。」
「じゃあ俺もボランティアでやる。」
「うん。
でもボランティアでするにはとても怖い経験をするし、時には助けられなくて辛い思いをするかもしれない。
助けられなかったことで、誰かに責められるかもしれない。
私は自分の意思でこの道を選んだけれども、京采くんには怖い思いや傷つく出来事をなるべく避けて欲しいなって思うんだ。
分かるかな?」
「分かる。
でも俺も興味方位で言ってるわけじゃ無い。
きっとこの力を持って生まれてきたのも何か理由があると思ってる。
それが強くなくて小さい事しか祓えなくても、それでも良いからこの力は本物で人の為に役立ってるんだって。
何も意味が無い力じゃないんだって証明したい。」
ここまで言われると私は困ったな~と言うしか無かった。
暫く考えた後
「今日ってお祖母さんはご在宅かな?」
と聞いた。
弟は話がズレたからなのか、少し疑問に思ったような表情をしながら
「うん。
今日は何も予定が無いから家で今ゆっくり過ごしてると思う。」
「それなら良かった。
今からお祖母さんに会いに行こう!
そしてボランティアとしてでも、霊媒師をして良いのか聞いてみよう!」
と言うと、弟はポカンとした顔をして私が弟の了承も得ずにレジに向かう後ろ姿を急いで荷物を抱えて着いてきた。
弟の印象がかなり違うかと思います。
姉の前では幼い印象から可愛い印象に見えるように。
また、他者からは一匹狼に見えるように使い分けて書いております。
ただ、共通して京采に言えるとすれば残念なイケメンです。
ロッカーに姉の写真を貼りまくり、姉さん!姉さん!と言う姿にすることで、中身も見た目もイケメンなんて存在してやるものか!という思いを込めて書いております。




