召喚した覚えのない〇〇が魔法陣から這い出てきて困惑しています
ニコは、学園で召喚術の教師をしている。
この日は、2年生の実技の日で、手始めにニコは、初級の精霊を呼び出せる陣を用意していた。
それなのに、何故・・・。
「なぜ、こんなことに・・・」
ニコがそう言いながら、崩れ去った先にあるのは、魔法陣のしたから現れた、白くほっそりとした、女の人の腕。
そう。腕だなのだ。
手だけでもわかるくらいの、強力な魔力は、彼女が初級の精霊ではないことがわかる。
この世界の精霊は下から、初級・中級・上級・超級・精霊王とランク分けされているのだが、手の魔力だけで感じるのなら、上級になるのだろう。
しかし、歴代の生徒の中には、初級の魔法陣で上級の精霊を喚び出した者もいるのに、何故腕だけしか召喚されていないのだろうか。
「あら、これは困りましたわね・・・」
そう憂いげにため息を吐いたのは、フローズ・イシュメル公爵令嬢だ。その姿は、儚げな美少女なのだが、忘れてはいけない。
コイツが、この腕だけの召喚を成し遂げた張本人だ。
ニコの親友であるゼンに求婚中の公爵令嬢は、魔法陣から生えている手を興味深そうに観察している。
「魔法陣は正確に書いたのにどうしてこんなことに?」
俺が聞きたいよ。と全力で心の中で叫んだニコは、確かにと魔法陣を見た。
召喚術が失敗する大半の理由は、魔法陣が適切に書かれていないか、魔力が足りないかなのだが、フローズはどちらもキッチリとクリアしている。それなのに何故。
いろいろ試し始めたニコだが、何も効果はない。
絶望しているニコの横で、あらあらと腕を観察しているフローズは、凄く気楽だ。精霊を怒らせると最悪、国が滅びると言われているのに。
「あら、ゼン」
「・・・よく気が付いたね」
その時だった。たまたま通りかかったゼンに、真っ先に気がついたフローズは、魔法陣のことを頭の隅から追いやって、ゼンに駆け寄った。
「どうしてここに?」
「そこの明かりの交換・・・じゃなくて、フローズは授業に集中しなよ」
ゼンは呆れたようにフローズを見て、その背後に見えた床・・・正確に言うと魔法陣から生える腕にギョッとした。
「え、何あれ。何をどうしたらあんなふうになるの?おかしいでしょ・・・」
呆れ返るゼンに、ニコは力無い笑みを浮かべた。
「まさか、初級の精霊を喚び出す魔法陣で、こんなことになるとは思わなかった」
「アレは?召喚術が失敗した時に使う陣は?」
「それが、効果なし。・・・どうしよう」
そう、召喚術士として有名なニコが困惑するほど、コレは、前代未聞な事なのだ。
ある意味、フローズの才能がうかがえると言えなくも無い・・・のか?
とりあえず、ニコでもこうなった場合の対処法というのは、持っていない。まさに、お手上げ状態。
ゼンはそろりと、腕へ近づいた。そして腕と魔法陣を見比べて、納得したように頷いた。
「あ、コレは・・・父さんが教えてくれた方法でどうにかなるかも」
そう言って、フローズから魔法陣を書くためのチョークを受け取ったゼンはおもむろに初級の精霊を喚び出す陣の外側に、大きく円を描いた。
そして、その中に魔法を司ると言われる文字をカリカリと書き始めた。
その淀みのない動きは、ゼンが一流の召喚術士としての実力があることを伺わせる。
そしてものの数分で書き終えると、ゼンは腕に向かって話しかけた。
「どう?これで出てこれない?」
ゼンの言葉に、腕はピクリと反応して動いた。
地面にその白く美しい手をつけると、グッと力を入れた。
それにより、徐々に頭と体が現れ始めた。
黒く長い髪、精霊特有の白くヒラヒラとしたワンピースのような服に包まれた体が顕になる。
その姿はまるで・・・。
「〇子みたい・・・」
そう、井戸やテレビから這い出る日本の有名な、女性の幽霊の様だった。
若干、周りで見守っていた生徒達も引いている。
足まで全て魔法陣から出し切った彼女は、キッと周りを睨んだ。
「何でこんなに狭いのよ!!」
キンキンと甲高い声でそう叫んだ精霊は、ゼンを見てそれを一変させた。
「ゼン!会いたかったわ」
そう言ってゼンに抱きつこうとする精霊を、フローズが止めた。
それにより、精霊はべチャリと地面と激突する。
「私のゼンに触らないで頂けます?」
フローズが令嬢らしからぬ威圧感のある声で精霊に言うと、精霊は怒りで顔を真っ赤にした。
「ちょっと!何するのよ!!」
「あなたを喚び出したのは、私ですよ?私の言うことが聞けないとでも?」
「あんな、ちっちゃい入口しか用意出来ないあなたなんか、お断りよ!ゼンに似た魔力の波長だから、出てきてやろうと思ったのに!」
「初級の精霊用の陣から、出てこようとするあなたが、悪いのですわ。」
言い合いを繰り広げる、2人を他所に、ニコは用務員用の道具を持ち直したゼンに聞いた。
「一体、どうやったんだ?」
「通常の召喚術の失敗は、魔法陣か魔力の量が原因だから、もう1度帰る用の陣を使って上げることで、解決するんだけど、今回は初級の精霊の様な弱くてちっちゃい精霊用の陣に、超級の精霊が出てこようとしたことが原因で、入口に、つっかえちゃったんだよ。だから、入口を大きくして上げる陣を書いたら、解決するんだ」
ニコは精霊を見た。確かに、初級の精霊はせいぜい人間の子供の大きさしかない。しかし、出てきた精霊は、成人男性よりも少し大きい位の体格をしていのだ。それは、出てこれるはずがない。
「・・・って、今、超級って言った!?」
「あ、うん。アクアは超級の水の精霊だよ?」
「え、ゼンも喚び出せるのか!?俺だって上級までしか喚べないのに!!」
「ちょっ・・・!そんな揺さぶらないでよ!!」
二方向から繰り広げられる騒々しい空間に対して、ほかの生徒達は、静まり返っている。
収集のつかない状況になった、実技の授業は、結局チャイムがなっても終わらなかったとさ。
「あの・・・先生、何時終わるのですか・・・?」
次は後攻の時島長雨さんです!
お題は『〇〇で無双してみた』でお願いします。




