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神獣の後継者の秘密  作者: 雅樹
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更新大幅に遅れてしまって申し訳ありません。

遅れたお詫びに長めに更新させていただきました。

内容がうまくまとまらず苦戦しましたが、皆さんに理解できるように書けてたらいいなぁ…。

 「綺麗…。」

 

 庭園へと一歩踏み出し、柔らかな芝生の感触を足の裏で感じながら庭園へと入っていくと柔らかな風が白銀の髪を弄ぶように舞う。その時、先程感じていた違和感がなんなのかはっきりと形を成して理解できた。

 

 「髪が…それに、目線も…。」

 

 箱庭にいた時、彼女の髪はリースが肩の辺りに揃えて切っており、今のように腰のところまでのびてはおらず、体つきも改めて見ると子供らしかった体型が身長がのびているのが目線の高さから分かり、スラリとした女性らしい凹凸のある姿に変わっていた。何故先程気づかなかったのだろうと自分に問いかけるも驚きの変化に頭がついていかない。

 

 「何が、どうなって……。って、これは…。」

 

 女性らしい胸の膨らみの谷間と鎖骨の間に小さな青い玉(ぎょく)が埋まっており、それを中心に不思議な翡翠色の紋様が肩辺りまで広がっていた。そっと玉に手をのばし、それに触れるとひんやりとしながらも鼓動のようなものが感じられる。取れるのだろうかという疑問が浮かび、少し力を入れようとすると慌てて周りにいた精霊達が止めにはいる。

 

 《駄目です、樋代様(ひしろさま)!》

 《それはあなた様にとって大事なもの。無理に取ろうとすれば激痛が伴います。》

 「そう、なの?」

 

 慌てている精霊達に聞き返せば全員が頷いたため、そっと玉から手を離すといつの間にか緊張していた周りの空気が元に戻る。そんなに一大事なことなのかと改めて玉を見下ろした時、後ろで先程出てきた扉がさらに開く気配に慌てて振り返る。そこには美しい金の髪が風で舞い、安堵した表情を浮かべながらエメラルドグリーンの瞳をこちらに向けてくる今の蒼麟よりも少し幼い少女がそこにいた。

 

 「目が覚めたんだな!良かった。」

 「っ…。」

 

 嬉しそうに近づいてくる少女に合わせるように蒼麟は距離を取るために一気に後ろに下がる。その行動に驚き、少女が足を止めると蒼麟も長い距離を保ったまま止まる。

 

 〔この姫様が助けてた!〕

 〔すごい力持ち!〕

 〔運びながら心配してたよ!〕

 

 足元にやって来ればピョンピョン跳ねながら兎達が言う言葉に警戒した雰囲気を纏わせながら見ていた相手に蒼麟は少しだけ警戒を解きながら視線を合わせると深々と頭を下げた。

 

 「…あなたが助けてくれたそうで、ありがとうございます。」

 「なっ!?頭をあげてくれ!別に礼を言われるようなことをした覚えは…。」

 「…では、お尋ねしますが、視たところ精霊とご契約しているようですが、それならお分かりでしたでしょう?私が人間ではないということを…何故助けたのですか?それに、何故違う性別の格好を…?」

 「っ!?…それもあなたのお力で分かるのですか?精霊様。」

 

 普通とは違う彼女の目。それで見えたことを口にすれば相手は動揺し、蒼麟を精霊と呼んだ。しかし、彼女は精霊とは似ている性質は持っているが、精霊ではない。だが、それを正直に教えてやるほど目の前の人間は彼女にとって気を許している相手ではない。

 

 「…さぁ、どうでしょうか。それに私は精霊でなく、あなた様へ危害を加える邪霊かもしれませ…。」

 

 淡々と相手の反応を伺うように嘘を交えてそう言っていた時、蒼麟が寝ていた部屋から何かが飛び出し、ものすごい力で蒼麟を芝生の上へと倒す。そのまま首元へと刃が押し当てられるもその姿を捉え、見えていた蒼麟は抵抗という抵抗もせず、なんの感情も宿さぬ瞳で自分の上にいる相手を見る。そこにはヴィクトリアンメイド服を纏った青い髪の殺気を含んだ琥珀色の瞳をこちらに向ける侍女の姿があった。

 

 「ソフィ!何をして!?」

 「この者の今の言葉、聞き捨てなりません。本当に邪霊なのでしたらこの手で殺します。私はシエル様の護衛ですので。」

 《そこをどきなさい、人間。この方を殺すこと、我らが許しません。邪霊などこの方から一番遠い存在!リュウ神の眷族でありながらそんなことも見抜けないのですか!?》

 「っ!?」

 

 純粋で圧倒的な敵意を感じ、ソフィと呼ばれていた侍女は反射的に蒼麟の上から退くと倒れたままの彼女を守るように風精と水精が間に入り、土精が蒼麟の側に行く。普段から穏やかな精霊達からは考えられないほどの圧倒的な力を彼等から感じ、シエルとソフィは体か硬直する。

 相手が退き、ゆっくりと起き上がった蒼麟は何処か諦めたような表情で相手を見た。

 

 「寸止めなどせず、殺してくれれば良かったのに…。」

 《樋代様っ!?》

 「…変なことを言ってしまってごめんなさい。冗談よ。」

 

 何を言っているのですかとばかりに非難の視線を向けられ、訂正する言葉を言いながら安心させるように微笑めば精霊達も安堵した雰囲気を醸し出す。だが、蒼麟の内心は違っていた。

 よく分からないどす黒い感情が沸々とわき上がり、自分をすべてを塗りつぶしていくようで。

 箱庭に戻ることも出来ず、自分の居場所もない。生きたいという感情が彼女からだんだんと抜け落ちていき、生への執着がもうほとんど残っていないのだ。

 

 《そろそろ敵意を解いてくれないか?シエル達が動けなくなってるからさー。》

 

 呑気そうな声が聞こえ、考えを一度止めてそちらに視線を向けると体長一メートルくらいの白銀の蛇が硬直したままの二人の前におり、その隣には真っ赤な三十センチくらいの蜥蜴がいた。声は蛇から発せられているようで、精霊達は渋々と敵意を解き、少し下がる。敵意が消えたことで硬直が解けた二人は呼吸まで忘れていたのか咳き込みながらも呼吸をゆっくりと整えていた。

 

 《なぁ、アンタ。なんで邪霊なんて嘘ついたんだ?まあ、シエル達みたいな人間には感知できないけど、俺やこいつみたいな精霊だったら…。》

 「精霊と偽るあなた方に答えるような言葉はありません。」

 《うへぇー…。そこまで見抜く“眼”を持ってるならやっぱり邪霊じゃないね。王位精霊、もしくはその上の存在か?》

 「…。」

 《ジーク。あの方は真実を話さなければ問いに答えてくれないでしょう。ソフィア、シエル達、我々の正体を言う許可をいただいてもよろしいですか?》

 

 丁寧な口調で話す真っ赤な蜥蜴が後ろの二人に許可を取ろうとそう言った時、蒼麟は微かに箱庭にいたヴェルガと酷似した気配を感じ、彼が来てくれたのかと思い辺りを見回す。

 

 「おやおや、予想以上に気配にも敏感らしい。それにその反応では私の半身に会っているのかな、白き小さなお嬢さん?」

 

 相手を安心させるような穏やかな若い女性の声が聞こえたかと思うと、微かに感じていた気配が大きくなり、その姿を形成していく。

 赤より深い紅の短い髪と黒真珠のような輝きを放つ黒の瞳、長身の体躯は淡い褐色肌でその美しさを際立たせている。身に纏うは父である彩麒から聞いた戦女神が纏っていたという深紅と黒の鎧に似ていた。細部までこだわったような彫刻が施されたその鎧は現れた人物同様に美しい。そんな女性にそこにいる蒼麟以外の誰もが深々と相手を敬うように頭を下げていた。

 目の前に現れた存在に唖然としながらもやはり相手から感じる気配がヴェルガと酷似していて、会いたいという思いが強くなり泣きたくなってしまったがなんとかこらえる。

 

 「アークスフィア様!どうしてこちらに…?」

 「アークスフィア…。」

 

 頭を下げたまのシエルが呼んだ女性の名だと思われるものを繰り返すように紡ぐと、女性は嬉しそうに微笑み、シエルの問いに答えぬままゆっくりと近づいてくると膝を折り、蒼麟と目線を合わせる。

 

 「お前はヴェルガードを知っているか?」

 「っ!?ドラゴンさんのこと知ってるの!?」

 

 アークスフィアの口からヴェルガの名前が出れば今までの堅苦しく壁を作っていた喋り方ではなく、ヴェルガに話していた時のような口調で相手に自ら近づく。

 

 「あぁ、あれは私の双子の弟だ。今は何処かに封じられていると風の噂で聞いたが…。」

 「ドラゴンさんのお姉さん…。」

 

 では彼女もドラゴンなのだろうとは思う。だが、その姿は人間にそっくりで、その身に宿す力は人間とは全く違っているのは視えているが、信じられなかった。そんな考えが表情に出ていたのかアークスフィアは苦笑を浮かべるもその疑問に答えるために口を開く。

 

 「本体は別なところにあってな、これはいわば仮初めの姿だ。シエルの坊やが美しい娘を連れてきたと城の皆のもっぱらの噂でな。うるさい側付きの目を盗んでやって来たんだ。」

 「アークスフィア様、また勝手に抜け出したのですか…。」

 「うわぁ、兄上達が必死に探し回っている様子が目に浮かぶ…。」

 

 シエルの兄が探しているという言葉に相当の権力者なのかと思い、アークスフィアを見るが、どうした?とばかりに少し強めに頭を撫でられ動揺しながらもなんでもないと首を振る。

 

 「ところでお嬢さん、良かったら名前を教えてはもらえないか?」

 

 アークスフィアの言葉にそう言えば名を名乗っていなかったと思い出す。チラリとシエルの方を見れば知りたそうな顔をしており、ソフィアとジークと呼ばれた蛇も興味の籠った視線を向けていた。

 しかし、彩麒から名付けられた名を名乗るのは何故か本能が駄目だと警鐘を鳴らす。ではどうしたものかと考えた時、夢の中で呼ばれた名を思い出す。

 

 「シルフィ…です。」

 

 もう名乗るのはことはないと思っていた、かつての人間の時の名を蒼麟はそう口にしていた。

 

 

 

 

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