30. 最強に可愛いのは?
「アレク!今日はどこに行くの?」
「サイファーの森へ魔獣の様子を見てくる。ユリナも行くか?」
「行きたい!もう随分大きくなったんじゃない?」
このアリスティア公国には、魔獣と呼ばれる不思議な力を持った獣が古来から存在している。
何故か魔獣たちはアリスティア公国以外には存在せず、魔法のないこの国でアレクが自分と似た存在として興味を持ったのがこの国への亡命を決めた理由だそうだ。
時々悪さをする魔獣もいるけれど、ほとんどは大人しく静かにサイファーの森で暮らしている。
彼らがただの獣ではなく魔獣だと分かったのは、アレクがそう気づいたから。
以前マルシャル王国にいた時にアリスティア公国に依頼され、人里に降りて悪さをする獣を狩りに訪れ、その時に魔法らしきものを使う獣をアレクは見つけたのだと言う。
元々この世界には魔獣は存在しないはずだから、きっと魔獣の中の最初の一頭が、異世界から何らかの理由でこの世界へ来たんだろうと予想された。
「自分のような魔法に関わる存在はこの世界で自分だけだと思っていたが、その時出会った魔獣のおかげで心境が変わった。もしかしたら他にもいるのかも知れない。」
それでアレクは色々な国の依頼を受けて、異世界から来た者の研究をしている。
今のところは私と魔獣しかいないけれど、この広い世界でいつか異世界からの客人を見つけることが出来るかもしれない。
「あ!もうあの魔獣前に見たときよりだいぶ大きくなってる!」
「本当だな。短期間で成長が著しいな。」
最近産まれたばかりの魔獣の赤ちゃんとその母親は、私とアレクが母親魔獣が怪我をして動けなくなっていたところを助けたことから懐いてくれている。
魔獣といっても見た目はライオンのような感じで、色は魔獣らしくメタリックな紫色をしている。
「よしよし。可愛い!やっぱり赤ちゃんはどの世界でも最強に可愛いね!」
赤ちゃん魔獣の首のあたりをヨシヨシしていると、アレクがジーっと見つめてきた。
「なに?どうしたの?」
「ユリナも赤ん坊が欲しいのか?」
「えっ!!」
突然のアレクの爆弾発言に、顔も耳も真っ赤になって押し黙ってしまった。
それでも、アレクのことは大好きだから聞こえないくらいの小さな声で呟いた。
「もうちょっとだけ二人っきりで過ごしたら、そのうち赤ちゃん欲しいな。」
絶対聞こえないと思ったのに、アレクがその美形を存分に使ってキラキラした笑顔を向けてくるから、恥ずかしくて思わず両手で顔を隠した。
「そうだな。もうしばらくは二人で過ごすか。」
そう言ってアレクは私の顔を隠していた手を取って抱き寄せ、そのままサイファーの森から転移した。




