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3. 目覚めると隣に黒髪美形


――あの後、身体も辛くていつの間にか泥のように眠ってしまった。


 そして窓から入ってくる光が眩しくてフッと目が覚めた時、ひょっとして自分の部屋のベッドじゃないかと期待したけど、やっぱり昨日と同じ焦茶色の天井と梁が見えて私は何だか胸が苦しくなった。


「起きたか。」


 えらく近くで声がした気がして振り向くと、広いベッドとはいえ少し離れたところに黒髪美形がこちらに微笑みながら横になっている。


「え!?」


 寝起きで頭が覚醒していなかった割には素早くベッドから飛び起きた。


「随分元気になったようだな。」

「えーっと……なぜここに?」

「ここが俺の寝台だからだ。」

「あ、そうですか。それはすみませんでした。」


 急いでベッドから降りると足元がふらついて尻餅をついてしまった。


「まだ身体がその心臓に馴染んでないから、無理をするな。」

「心臓……。馴染む。」


 馬鹿みたいに繰り返すことしかできない。


「名前は?あるんだろ?」


 ベッドの上で横になり、頬杖をついたままこちらを見つめる黒髪美形は私に名前を聞いているようだ。


高梨 由莉奈(たかなし ゆりな)です。」

「タカナシユリナ?」

「はい。由莉奈。」

「ユリナ……。」


 私の名前をゆっくりと噛み締めるように呟く黒髪美形に思わず見惚れてしまった。

 だって本当に見たことのないくらいのイケメンだったから仕方ない。


「俺の名はアレクサンドル。アレクサンドル・クロード・レイ。」


 いかにもマンガのイケメンキャラのような名前に、納得してしまう。

 この見た目で「山田太郎」などと言われてもしっくりこないだろうから。


「アレクサンドルさん。」

「アレクで良い。」

「アレク。」


 私がアレクと呼ぶと至極嬉しそうに目を細めて頬を緩めるからまだボーッと見惚れそうになった。


 いやいや、それよりもっと聞きたいことがたくさんある。私がどうしてここに来ることになったのか、あちらの私の遺体はどうなったのか、どうやってアレクに()()()()()を払っていけばいいのか……。


 次々と質問する私にアレクは面倒くさがらずに答えてくれた。


「ユリナを知ったのはたまたまだ。暇つぶしに異世界の人間と繋がる魔法を使ってみたらユリナと繋がって、そこからしばらくユリナとユリナの世界を観察していた。」

「暇つぶしにそんなことができるもんなんですか?」

「俺は偉大な魔法使いだからな。簡単なことだ。」


 魔法使い。やっぱりここはマンガの世界と同じで異世界なんだと受け入れるしか自分を保てそうになかった。


「……それで、しばらく私のことをストーカーしていたと……。」

「すとーかー?」

「見張ってたんですか?ずっと?」

「ああ!見張るというか暇な時に時々覗くという感じだな。この世界はひどく退屈だから何か面白いことはないかと思ったのがキッカケだ。ユリナの世界は見たこともないものが多くあって興味深かったぞ。」


 当然のようにストーカーを自白したこの美形をどうしてくれようかと思ったけど、とりあえず話を続けた。


「それで、私が車に轢かれた時にも見ていて魔法で助けてくれたんですね?」

「車というのはあの人の乗った箱か?あれがユリナの方へ向かっていて、はじめは危険な物だと知らなかったからただ見てたんだが、そのうちユリナが死にかけてたから急いで魔法を展開したんだ。」

「なるほど。ここは魔法はあっても車がないんですね。」

「ユリナの世界にある物は、初めて目にする物がとても多かったからな。」


 いつの間にやら起き上がったアレクはベッドの端に腰掛けて整った形の顎に手をやり、何かを思い出すような素振りをしている。


 長い黒髪は昨日の赤いリボンで縛られていなくて、垂らしてそのままになっているから、寝る時は外すんだなぁと場違いな事を考えてしまった。


 

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