27. とうとうザマアの始まり
あれから数日、この地下牢というには小綺麗な部屋でたまに訪問する学者や医師たちと会話をして過ごしていた。
彼らも気の毒そうな顔で私を見ていたから、少しはまともな人もこの国にいるのかもしれない。
ふいに見たくもない存在のサブリナ嬢が現れた。
「いかがお過ごし?ここの居心地はどうかしら?」
キラキラした金髪縦ロールを靡かせて牢の中の私に話しかける。
「まあまあですよ。ジャンは無事なんですよね?」
「もちろんですわ。皆貴女のことを探しているようですけれど、さすがに地下牢に入っているとは思いませんわよね。」
「そうですね。」
「だから貴女は私とアレクサンドル様の幸せを、ここでお祈りくださいませね。」
以前、私が王城に行くときにはアレクが私の位置情報を調べてるとかなんとか言ってたはず……。
私がここにいることは分かっていてすぐには動けない状況なのは、何か理由があるんだろう。
アレクは魔法が使えるから物理的に閉じ込めた涼介することはできないし、きっと何か作戦を立てているんだろうと信じて大人しくこの豪華な牢屋で待つことにした。
地下牢の中で何度目かの夜を迎えたその日、突然気配を感じて暗い部屋の中を目を凝らして見てみた。
「ユリナ……。」
聞き間違えるはずもない、アレクの声がして。
「アレク。どこ?」
「ここだ。」
暗い部屋の中にぼんやりと小さな灯りが広がり、久しぶりに見た美形黒髪魔法使いがすごく頼もしく見えた。
「ジャンは?大丈夫?」
「ジャンは無事だ。ユリナこそ、大丈夫なのか?大方話は分かっている。ジャンも、ロワイ家も俺とユリナと一緒に他国へ亡命することにした。極秘裏に準備をしていたから迎えに来るのが遅くなって悪かった。」
アレクがそっと抱きしめてくれて、その久々の感覚と安心感に思わず涙が溢れた。
「私も大丈夫。牢屋はこんなに豪華にしてくれてるしね。亡命って……、アレクこの国を出てもいいの?」
「構わない。俺は元々この国に縛られる理由はない。特に不便はなかったからこの国に留まっただけで、勘違いをしている王室への義理などないしな。ジャンもロワイ家ももうこの国に未練はないそうだ。」
アレクがこれからはもっと自由に生きられるかも知れないと思うと嬉しくなって涙を流しているのに、同時に頬が緩んでしまった。
「俺はこの世界のどこでも、ユリナさえいればいい。」
「うん。ありがと。」
「すでにジャンとロワイ家はここから遠く離れたアリスティア公国へと転移させた。アリスティア公国は以前魔獣狩りの依頼を受けた際に興味深い国だと思っていたから、君主であるアリスティア公には今回すでに話はつけてある。喜んで皆んなまとめて面倒みてくれるそうだ。」
「そうなんだね。良かった。」
亡命先も決まっていて、すでにジャンやご家族もそちらに移動していると聞いて心底安心できた。
そうなってくるとだんだんと腹が立ってきて、あの自己中な国王とサブリナ嬢に一言物申したくなった。
「ねえ、亡命する前にあの自己中なオジサンと悪役令嬢に一言物申してもいい?」
「ジコチュウ?まあいいだろう。それでユリナの気が済むなら。」
フッと笑ったアレクが本当にイケメン過ぎて、私の旦那様(予定)はこんなに素敵なのよー!って叫びたくなったのはアレクには内緒。
一旦少しばかり馴染んできていたこの豪華な地下牢にもサヨナラをして、明日の朝になったら悪役令嬢への婚約破棄と、断罪イベント発動するんだから。




