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48.朝議

 王の視点です。


 自分は朝議のため大会議場に向かっている。王になって四日目で初めてだ。大会議場の改修を簡単に行ったためと、自分や宰相が指示した書類の作成や資料の収集等させるためだ。反発を防ぐために人事異動は行わずそのまま任命し直し、宮廷貴族にもした。全ての省に大臣副大臣が揃っているのではないが現行のままいく。

 自分が着席して挨拶等をした後、朝議が開始した。


「陛下から、あの男達の愛人どもは直接罪を犯した訳ではないので、実刑ではなく奉仕活動をさせるとの案を出していただきました。主な内容として劇団で役者をさせるという物です。司法省でも話し合いましたら、他に案が出ませんでしたので適性を見て奉仕活動をさせようとなりました」


 司法大臣に相談してから何の音沙汰もなかったので心配したが、しっかり話し合ってくれていたようだ。


「皆さん、何かご意見はありますか?」


 宰相補佐官が言った。本来は議長の役割だが、議長はいないので代わりにやってくれている。議長もあの男の手下だったのだ。


「ないようですので、次に行きます。次は学校建設についてです。こちらは担当の省庁がございませんので、私から説明させていただきます。女性の就職の選択肢を増やすために女学校を正式の学校とする、さらにその上の大学も作る、ですね。大学については女子大と、共学両方です。建設予定地は中央領です。元からある建造物を改修して使います」


 学校は国の管轄で王族が管理していたようだ。各領にある学校も歴代の王族達の名を冠している。今は自分しかいないので新たに教育と芸術に関する省庁を作る予定だ。


「中央領の領主はどうするのでしょうか」


 内務副大臣が言った。白髪だが顔に皺はあまり見られないので案外まだ若いのかもしれない。


「保留です。領地同士で権力争いを起こさせないためです。領主に任命出来そうな高官の数も少ないですので、国及び陛下の預かりといたします。何かご意見はございますか?」


 こちらも他の意見はないようだ。


「では、次に。内務大臣お願いいたします」

「はい。道路や水路の補修や新設についてです。十年間ほぼ放置されていたので国の管理する水路や道路は壊滅状態です。領の管理している物についても財政難でかなり傷んでいるようですので、予算を出して頂きたく存じます」

「宝石や金や銀の相場にもよりますが、城一つ建てるのに十分な金額になるそうなので可能です。ここから連合国軍より食糧や家畜、その他生活必需品を購入するそうですが、問題ないでしょう」


 財務大臣が言った。

 この場合の城とは建物だけでなく、城の周囲の防御に必要な設備も含まれる。それだけ無駄遣いしたのだ。これにはあの男達の飲食物は含まれていないので、実際にはさらに巨額の金が使われたそうだ。


「ですが、農業をはじめ産業の再興はまだ先になりますので、その後の資金調達は困難になるかと存じます」


 財務副大臣が補足した。この人は以前自分の部屋に財務大臣が彼の部下達を引き連れて来た時にはいなかった。


「他国から寄付を募るのはどうかしら?ただの寄付金ではなく、通常の価格より少し高めにして寄付付き商品として売るとか?国情が安定したらそのまま販路を維持すれば商品の輸出が出来るのではないかしら?」


 自分が言うと大臣達が得心したかのように頷いた。


「ほう!良い考えございますね」


 財務大臣はやや大袈裟に言った。元々大きな目がさらに大きくなっている。


「問題は何を売るのかでございますね…」


 内務大臣が言うと他の大臣達は皆黙ってしまった。各領地の工芸品や名産品などがあればそれを売りたいが、それを作る余裕はないようだ。


「寄付付き商品製作は刑が軽い者にさせましょうか?」


 司法大臣が眉を寄せ、顎に手をやりながら言った。


「あの者どもの衣類はまだ取ってありますので、それを再利用するのはいかがでしょうか?」


 今まで大きな反応をしなかった侍従長が言った。あの男達の衣服はまだあるらしい。かなりの量がありそうなので処分するのも大変だろう。


「いらない物を再利用でございますか。なかなか良い案ですな」


 宰相が目を細めて微笑みながら言った。


「しかし、縁起が悪くはないですか?」


 将軍が顔をしかめながら言った。確かに殺された、しかも誅伐された人の衣類を使用した商品なんて買う人がいるのだろうか。


「…ま、魔除けとか?あるいは身代わり人形みたいな…?」


 自分は頑張ってひねり出してみた。


「その話は後日いたしましょう。次に進めてください」


 宰相が言った。次までに考えておこうと思う。


「はい、では次は――」




「予定していた議題は以上です。他に何かある方はいらっしゃいますか?」


 宰相補佐官が大臣達を見ながら言った。


「はい。よろしいでしょうか。陛下に頼まれました弦楽器に使用する羊の腸あるいはすでに加工済みで弦になっている物、打楽器のスティックやマレットは国内では調達出来ないので、外務省に回って来たのですが緊急を要する事ではないので見送らせて頂きたく存じます」


 外務大臣が言った。そういえばこの国は十年間国境封鎖をしており、諸外国との関わってこなかった。その間外務省は何をしていたのだろうか。以前見た大臣副大臣の評価の資料には特に記載はなかった。何もしていないから記載出来なかったのだろうか。


「そう、残念ね。彼らには私から謝罪するわ。十年間本来の職業が出来なくて気の毒に思ったのだけど…そうよね、生死に関わるのではないものね。仕方ないわよね…」

「…そうおっしゃいましても」

「外務大臣、予算なら出しますよ」


 横から財務大臣が会話に入って来た。


「…はぁ、ならば輸入いたします」

「財務大臣、外務大臣感謝するわ。ありがとう」


 無事に買えるようだ。彼らにもよい報告が出来る。

 危うく外務大臣に十年間外務省は何をやって来たのか問いただすところだった。


「国内でも賄えるようにしないといけないわね。前はあったのでしょう?芸術関係の元職人達の所在は掴めたのかしら?」


 元劇団員や元楽団員等の芸術関係の仕事をしていた人達の行方を捜している。娯楽復活のためだ。


「現在調査中でございます」

「では引き続き調査をお願いするわね」




 朝議が終わり、執務室に向かった。アレクセイと将軍と共に両親の埋葬場所に行くのは昼過ぎになっている。

 両親を正式に埋葬したいがそれもまだままならない。計画すらも立てられていない。出来るだけ早く行いたいが、まだ当分先になりそうだ。

 執務室に入室して、執務用の椅子に座る。ため息をついたら侍女達から心配する声がかかった。


「お茶をご用意いたしましょうか?」

「お菓子もご用意いたしますよ?」

「仮眠を取られますか?」


 ダニエラとアンナとリンダが立て続けに言った。クラリッサとジャンナ、トスカが驚き、戸の前でリーザが苦笑している。


「ありがとう。お茶だけ貰うわね。…財務省って十年間何をしていたのだろうと思ったの。あの男達が宝石とかよく分からない調度品を買ったのって北領領主達が仲介していたのよね?国境封鎖していたのだから、他国の要人と会わないし輸出入しないし…他に外務省って何をするのかしら?」

「外交史料を作ったり、国外に出ていたケレース王国の人達と連絡を取ったりしていたそうですよ」

「国外の人と連絡取れたのね。国境と接する三領主に頼んだのかしら?」

「そのようですね」


 ダニエラの説明に自分は頷いた。


(危なかったわ…。責め立てなくてよかった…。もしかしたら国外の状況も探っていたのではないかしら?)


 戸をノックする音が聞こえた。給仕台のカラカラと音がしたから昼食だろう。もうそんな時間なのかと思った。あっという間に会議が終わったと思っていたが何時間も経っていたようだ。

 自分は応接用の席に移る。執務用の机には様々な資料が乗っており汚すわけにはいかないからだ。

 侍従達が料理を並べていく。侍従達に礼を言うと彼らは頭を下げて去って行った。


「私に言われるまでもないと思うけど、みんなも各自休憩をとってね」


 どうも、侍女達の休憩時間が短い気がする。いなくなったと思ったら執務室や寝室に先回りして準備してくれているのだ。いつ休んでいるのだろうか。もっと侍女の人数を増やしたほうがいいのだろうか。

 考えながら食事をしていたら舌を火傷してしまった。アンナが慌てて水が入ったグラスを渡してくれた。


「ありがとう」

「お気をつけくださいませ」


 食事を終えると、見計らったように侍従達がやって来て食器を回収していった。こちらが話しかけても最低限の言葉しか言わないのだ。まだ警戒されているのだろうか。侍女達に聞いても彼女達ともあまり会話をしないらしい。後で侍従長に話してみようか。

 アレクセイと将軍が来るまで少々書類仕事をしておこうと思い執務用の机に移動する。


「協力してくれた国々にお礼の手紙を出さないと…。それと各領主からの即位の祝福の手紙が届く頃よね。それを確認して…、南東領主と南西領主の返事もまだよね」


 南東領主には東領、南西領主には南領と西領の様子を伺うようにお願いしてある。その報告はまだ時間がかかりそうだ。


「何かございましたら宰相殿が対応してくださいますよ」


 ダニエラが言った。

 自分は肩をすくめた。自分から何も出来ていない気がしたからだ。全部宰相や大臣達がやってくれている。彼らとは経験が違うのだから仕方ないと思うのだが、どうしても不甲斐なく感じてしまう。


「ええ、そうよね。補佐官もとても優秀そうな人よね。前宰相の時の補佐官ではないわよね。だけれど十年前にはいなかったと思うの。誅伐後に呼び寄せたのよね。宰相はかなり信頼しているようだけど、この十年で宰相と知り合ったのかしら?それとも昔からの知り合い?」


 自分が言うと侍女達が首を傾げた。分からないのだろう。

 宰相の交流関係が謎である。とても幅広い人脈を持っていそうなのは分かる。ただ月日を積み重ねただけでは無理だろう。宰相を知れば知るほど謎が深まるので、皆で唸ってしまった。

 考えていたら聞き覚えのある足音が聞こえてきたので、戸の方を見てみる。その様子を見たリーザが戸の方を向いた。戸をノックする音がし、リーザが応対して戸が開いた。アレクセイ達と将軍がやって来た。


「陛下、こんにちは」

「陛下、護衛しに参りました」

「司令官殿、将軍、こんにちは」


 挨拶をした後、リーザとジャンナとトスカを残して両親が埋葬されている場所に向かった。 




 財務大臣は元々リアクションが大きいのだと思います。

 少しでも面白いと思ってくださったら評価&ブクマよろしくお願いします。

 ※予告なく加筆修正をする場合がございますので、予めご了承ください。

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