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プロローグ開始(ゲームで言うと)

今回は短いです。下りとしては次話に続きます。


 朝日を反射して湖面がきらきらしている。空は澄み渡り、快晴そのものだ。


 精霊たちも活発になりだして、私も日課である体操が終わったので、湖のほとりにある煉瓦づくりの小屋の扉をノックする。


「おはよう! 朝だよ! そろそろ出ないと遅刻するよー!」


 ドンドン、ドンドン。何度か叩いていると、家主がのそりと外に出てきた。


「おはようウルティ……」


「おはよう、ルノ」


 私は首を下げる。ルノは私の額に軽く額をつける。これは前の世界の欧米的な挨拶に似ているもので、家族とか親しい友人同士で交わす挨拶だ。頬を付け合うこともある。変な意味はない、全く。


 学校の制服を着たルノ。黒いブレザーをピシッと着こなしている反面、後ろ頭には寝癖がついている。心なしか目もとろんとしていて……寝起きの悪さは子どもの頃からまったく変わらない。


「後ろの髪はねてるよ」


「うん……、直す」


 わたしがクシを渡してあげると、ルノは湖面を覗き込み髪をとかしだす。寝ぼけて湖に落ちなきゃいいけど。


「サンドイッチ作ってあるけど、食べれる?」


「今は胃が起きてないかな……。学校に着いてから食べたい。包んで持って行く」


「分かった、やっとくね」


 ドラゴンの手指では布を結ぶだとか器用なことが出来ないので、風の魔法でサンドイッチを箱に詰め、布でくるむ。


 そうこうしているうちにルノの準備も整ったようだ。まだ目は眠たそうだけど。


「ウルティ、そういえば早起きだった?」


 私からサンドイッチを受け取りつつ訊ねてきた。


「そうだね、いつもよりは。気合い入っちゃってね」


「ふぅん。何かあるの」


「内緒」


「僕に言えない話? 面白い?」


「全然面白くないよ」


「そっか。ならいいや」


 朝の脳内ぼんやりタイムだからか、ルノの反応も心なしか薄い。多分お昼だったら『何? 疚しい話?』ってつっこんでくるだろう。


「そろそろか」


「はーい。行ってらっしゃい」


 ルノは小屋の裏手に立つ。そして呪文を唱える。現れるのは魔法陣。


「行ってきます」


 ルノの姿は魔法陣に吸い込まれるように消えた。


 これは転移魔法。この魔法陣の先はルノが通う王立学院に繋がっている。ここは王都のはずれなので、通学のために転移魔法を使っているのだ。


 ルノは本来休みなのだけど、上級生として新入生に施設の案内をするだとか生徒会の手伝いとか言って呼び出されている。ご苦労様なことです。


 しかし私、ウルティケイアにとってに運命の日である。私もご苦労様である。


 なぜなら今日はそう。王立学院の入学式。つまりは、この世界を描いたゲームのシナリオ開始イベント発生日だからだ!


「さて、私も出掛けようっと」


 何が起こるか分からない。心臓がバクバクしてる。さあ、気を引き締めて一日を乗り切らなければ。


 ゲームで描かれたのは一年間。その始まりに全てが掛かっている。


 ……まあ、ウルティケイアが登場するのは夏あたりだし、そもそもルノと主人公が会話するのは入学式過ぎた別の日なんだけとね。


 だから焦ることないのかもしれない。でも、早め早めの行動は大事!


 さあ行くぞ、物語の舞台・王立学院へ!


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