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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第3章
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第51話 白狼

 ティノとエヴァンドロがちょっとの間目を離したスキに、森に入っていたマルコは1つの白い毛玉を見つけた。


「……?」


“ツンッ!”“ツンッ!”


 マルコは、ソフトボール位の毛玉が何か分からなかったので、そばにあった木の枝でつついてみた。


“モゾモゾッ!”


 つついた毛玉はどうやら生き物らしく、少しだけ反応した。


「……なんでしょ?」


 マルコは、そっとその毛玉を持ち上げて見てみた。


「…………いぬ? でしゅか?」


 その毛玉は子犬のようで、かなり弱っていた。


「……あっ!? けがしてるでしゅ!」


 その子犬は、お腹が切られたようなキズがあり血が流れていた。

 更に、後ろ足の先が片方欠損していて、持ち上げているマルコの掌は子犬の血で真っ赤に染まっていた。


「たいへんでしゅ!」


 子犬の状態を確認したマルコは、そのままその子犬を持ったまま森から出て、ティノの方に向かって行った。






――――――――――――――――――――


「ティノしゃま~!」


 ティノに近寄りつつ、マルコは掌の上の子犬をティノに見せた。


「マルコ! 勝手に森には入るなとあれほど……」


 ティノがマルコの顔を見て叱ろうとした後、子犬を見て止まった。


「ティノしゃま! このこをみてくだしゃい!」


 マルコは子犬のケガをしている部分を見せて、ティノに治療を頼んだ。


「ん!? それ白狼じゃねえか?」


 その子犬を見たエヴァンドロが、その犬の正体を呟いた。


「ハクロウでしゅか?」


「あぁ、白い狼って事だ」


 マルコが持ってきた子犬は、犬ではなく狼だと分かった。


「治してどうする? そいつは成長次第でBランクの魔物になるんだぞ!」


 ティノは白狼のキズを見た後、マルコに治す理由を聞いた。


「えっ……!? なおしてくれないのでしゅか?」


 ティノならすぐに治してくれると思っていたマルコは、ティノに治す気が無さそうな事を言われてうつ向いた。


「……まぁいっか」


 落ち込んだマルコの顔に、ティノは何となく負けた気になった。


“スッ!”


 ティノは白狼に手をかざして、光魔法による回復魔法を放った。

 すると白狼のキズが塞がり、再生魔法で欠損していた足も治した。


「えっ!? あんた再生魔法まで使えるのか?」


 エヴァンドロはティノが白狼のキズだけでなく、欠損していた部分も先だけとは言えすぐに治したことに驚いた。

 年月が経っても、いまだに再生魔法は貴重な能力である。

 ティノが戦闘だけでなく、最上級魔法まで使うことに、改めて感心と驚異を覚えた。


「ありがとうございましゅ! ティノしゃま!」


 白狼のキズが治ったのを見たマルコは、先程の落ち込んだ顔から一気に元気になった。


「……………!?」


「あっ! めをさましたでしゅ!」


 キズが治った子白狼は、すぐに目を開いて辺りを見渡した。

 その事に気付いたマルコは、子白狼の顔を覗きこんだ。


「ガウッ!」


“ガブッ!”


「いたっ!」


 驚いた子白狼は、マルコの手を噛んで地面に飛び降りた。


「グルルルルッ!」


 地面に降りた子白狼は、ティノ達3人に向かって唸り声を上げた。


「大丈夫か? マルコ」


 子白狼に噛まれて少し血が出たマルコの手を、すぐにティノは治した。


「……いたいでしゅ。でもげんきになってよかったでしゅ!」


 言葉とは裏腹に噛まれたマルコは少し元気がなくなった。


「…………そうだ」


 かなりの魔力を使って治して上げた子白狼が、唸り続けているのを無言で見ていたティノは、ある事に思い至った。


「マルコ! こいつをお前の従魔にしろ!」


 ティノはこの子白狼が、そのうちマルコの役にたつと思い、従魔にさせることにしたのだった。


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