第49話 処罰
「昨日貴方のお子さんを……」
「いえ、この子は俺の子ではありません」
ソーツのギルマスであるサンドロが話し出した途中で、ティノは訂正した。
「そうなのか!?」
「……そうですか」
ティノの言葉を聞いたエヴァンドロも、今までマルコはティノの子供だと思っていた為、ティノの左隣に座るマルコを見つつ、驚きと共に声をあげた。
エヴァンドロと目が合ったマルコは、静かに頷いた。
それとは違いサンドロは、何か事情があるのだろうと思い、深くは聞かずに止めた。
「昨日の件ですが、モレーノとナルチーゾの2人は以前から、クランの名前を使って数々の揉め事を起こしていました」
ティノ自身も、あの2人が初犯には思えない手口だったので、静かにサンドロの言葉の続きを待った。
「しかし、今まで尻尾を掴めずにいたのですが、今回の件でようやく捕まえる事が出来ました。ありがとうございました」
サンドロは頭を下げて、ティノに礼を述べた。
「いえ、大した事はなかったので……」
ティノからしたらあの程度の小物の事など、どうでもよかったので素直に言葉に出した。
「あれでも一応Aランクの冒険者なのですが……、大した事ないですか……」
ティノの言葉を聞いたサンドロは、鼻白んだ顔で呟いた。
「それで、モレーノとナルチーゾの2人は犯罪奴隷で一生労働地獄にします」
そうなるように、わざわざモレーノの切り落とした手足を繋げといたのだから、当然の処置だろうとティノは思った。
「ついでに、今回あの2人の事により、クランエローエのクランランクをAからBに降格、エローエのメンバーは全員、1年間個人ランクの昇格試験の参加不可と言う処罰に決定した」
「……そうですか」
クランどころか冒険者でもないティノは、クランにそこまで結構な影響が及ぶとは思ってもいなかった。
しかし、すぐにそう言うもんなんだなと納得した。
「……とまあ、こんな感じに落ちついたのですが、そちらは宜しいですか?」
「えぇ、それで構いません」
ティノとしたら、あの2人さえ消えればそれで良かったので、特に文句はなかった。
「ところで……、ティノさんは冒険者にならないのですか?」
一段落したサンドロは、直球で当然の疑問をティノに尋ねた。
「……なりません」
「……何故? は聞かないでおきます」
サンドロの質問に言葉少なく返したティノに追求しようとしたサンドロだったが、ティノの目が聞くなと言うような雰囲気を醸し出していたので、勧誘を諦めた。
「俺の事はいいので、彼の登録をお願いできますか?」
ティノは話を変えるため、右隣に座るエヴァンドロの事を紹介することにした。
「おぉ、ありがたい。冒険者は多い事に越したことないですからね」
そう言ってサンドロは職員の女性を呼び、ティノ達はその場でエヴァンドロの登録をした後、特別室から去って行った。




