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浮浪の不老者  作者: ポリ 外丸
第7章
214/260

第214話 魔従契約

大分間が出来てしまい申し訳ありません。しばらく忙しく、次もいつ投稿できるか分かりませんが、なるべく早く投稿するようにしますのでお許しください。

「サンド様、よろしいのでしょうか?」


 近衛隊長のブリツィオが魔法契約書の作成に向かって戻ってくるまでの間、サンドのすぐ隣に立っていた近衛兵の男が、動かないようにしつつサンドに向かって小声で問いかけて来た。


「何がだ?」


 その問いに対して、聞かれた質問の内容に関して、サンドも体は動かさず口だけ動かした。


「奴をここまで追い込んでおきながら取り逃がしたと、ルディチの者に知られたら共闘の盟約を破棄される可能性が高いと思われますが?」


 サンドは年齢的にも子を生す事はもうほぼ不可能。

 そんな中、王族の血を引く貴族は、先程のイーヴォによる爆発で死んでしまった。

 もちろんまだ生き残っている者も極、極僅かな可能性であるが、期待するのは望みが薄い。

 残っている息子と娘は何としても守り切らないと、王家の血は完全に断たれ、この国自体の存続が怪しくなる。

 ただでさえ内乱などという事態を、起こる前に抑えられなかった事だけでも、サンドの王としての価値がダダ下がりであり、国民には死んだと知らされていたイラーリオが主犯だという事、更にその犯人を追い込んだのにも関わらず、取り逃がしたなどという話になったらもう目も当てられない状況である。

 一度は同盟から追い出したにも関わらず、もちろん何かしらの策略を持ってはいても善意によって共闘を受け入れてくれたルディチ王国の者達には見放されても文句が言えない状況である。

 王子と王女の二人が救えても、もうこの国の王族の信用は地に落ちたと言っても過言ではない。


「……それでも二人を救えなければ何もかもが終わりだ」


 この近衛兵の言いたいことはサンド自身百も承知である。

 しかし、二人が救えれば時間をかけて信頼を取り戻す事は出来るだろうと、サンドは考えていた。


「……左様ですね」


 この近衛兵は平民の出である。

 近衛隊長のブリツィオによって見い出されてここまでの地位に上り詰めた。

 内心では敵を逃がす事を了承しているサンドの事を軽蔑する気持ちもあるが、ブリツィオによる恩を考えると、そんな感情を見せる事無く了承したのだった。






「サンド様! お待たせしました!」


 約1時間程の時間が経過した後、ブリツィオが魔従契約書を持って戻って来た。


「どうぞ! ご確認ください」


 ブリツィオは同じ契約内容が書かれた紙2枚と、同じ魔法陣が描かれた紙2枚を1枚ずつお互いの陣営に渡し、サンドの隣の位置に戻った。


「こっちはこれで良い!」


「こっちも良いぜ!」


 サンドとイーヴォは内容を確認し、了承すると魔法陣の中心にあるスペースに名前を書き始めた。


 魔従契約書は、この魔法陣の中心に空いているスペースに契約を交わす者の名前と血判を押す事によって成立する。


“ボッ!!” “ボッ!!”


 名前が書き終わったと同時に、両者の魔法陣の紙は青い炎を纏って焼失した。

 契約が成立した証拠である。



 サンドとイーヴォが交わした契約は、大まかに次の通りである。

・サンドとその配下は、イーヴォ側の人間がこの場から去るまでは攻撃を行ってはならない事

・契約が成立した事を確認したイーヴォは、起爆スイッチをサンド側に渡す事

・起爆スイッチを受け取ったサンド側は、城に張り巡らした結界を解く事


 細かい契約も書かれているが、以上が軸となる内容の契約である。



「ほらよ!」


 契約が確認できたので、イーヴォは手に持っていた起爆スイッチをサンドの方に放り投げた。


“パシッ!!”


 飛んできたスイッチは、近衛隊長のブリツィオがしっかりとキャッチをした。


「さてと……、それじゃあ結界を解く命令をしてもらえるか?」


「チッ! 分かっておるわ!!」


 不本意ながらこのまま契約通り結界を解かなければならない事に、サンドは舌打ちをした。


「ブリツィオ! 外の者達に結界を解くよう言ってこい」


 サンドは仕方なくブリツィオに指示を出したのだった。


「……………………」


「……どうした? ブリツィオ?」


 指示をしたのにも関わらず、起爆スイッチを見て無言で立っているブリツィオに、サンドは疑問に思った。


“カチッ!!” “カチッ!!”


「なっ!!?」「えっ!!?」


 ただ立っていただけのブリツィオが、いきなり起爆スイッチを押したことにサンドだけでなくイーヴォも驚きの声を上げたのだった。

 契約では、イーヴォ側がスイッチを押した場合、契約不履行による呪いが発動するが、サンド側がスイッチを押すはずがないから何の契約もされなかった。

 まさかスイッチを押すとはサンド側もイーヴォ側も思ってもいなかった為、驚きを抑えられなかった。


“ズドーーーン!!” “ズドーーーン!!”


 スイッチが押された僅か数秒後、巨大な爆発音がこの場に轟いて来た。


「……き、貴様!!? 何てことを……!!?」


 あまりの出来事にサンドは目を見開いてブリツィオに食って掛かろうとした。


“バッ!!”


「!!?」


“ズバッ!!”


 サンドがブリツィオを掴もうとして近付くよりも早く、ブリツィオがイーヴォの体を剣で貫くことの方が早かった。


「……て、手前……、何で……? ……け、契約が……」


 魔従契約によって自分が攻撃される可能性がないと思っていたイーヴォは、完全な無防備な状態で攻撃を受けたのだった。

 契約通り行動している限り自分が死ぬことがないと、イーヴォが思ったのは当然の事である。

 契約を破った場合、サンドどころかここにいる兵全てが契約不履行の呪いに晒されるのだから、まずイーヴォを攻撃をしてくる人間がいるなどと思わないものである。


「……フフ、あいにく俺はハンソーの人間ではないのでな!!」


 笑みを浮かべながら、ブリツィオはさらにイーヴォに剣を食い込ませながら呟いたのだった。


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