第215話 フェイク
申し訳ありません。長い事あいてしまいました。
次回は不定期でもなるべく投稿したいと思っています。
「貴様っ! 何を……!?」
イーヴォが刺されたことで、その配下たちは慌てた声を上げた。
先程の契約で、自分たちの身の安全は確保したはずなのにも関わらず、このようなことになれば当然の反応かもしれない。
「…おい…おい、マジ…かよ……?」
刺された腹から大量に血を噴き出しながら、イーヴォはブリツィオの暴挙が理解できずに呟いた。
先程の言葉通りなら、父であるサンドの配下ではない人間がこの場に侵入していたという事になる。
同盟国のルディチ王国側が約束を破るはずがないし、帝国側の人間なら尚の事この争いに関わって来るとは思えない。
「こんな…事…平気で…しそう…なのは……、まさ…か……?」
少し考えただけで、イーヴォには思い当たる人物がいた。
「きさ…ま、ティノ…か?」
「…………ご名答!」
“ブンッ!!”
イーヴォに答えを返すと、ブリツィオの姿が一瞬にしてティノの姿に変化した。
「「「「「なっ!?」」」」」
ティノの姿を見た者たちは、突然の変化に目を見開いた。
「やはり変化の魔法は疲れるな……」
驚いている室内の者たちを無視し、ティノは首を鳴らした。
「……やっぱり!」
「…………あった!」
変身の魔法を解いたティノの姿に、納得の声を出したイーヴォに対し、そのイーヴォのポケットを探っていたティノは、転移石を見つけて取り上げた。
「これで安心だな!」
ティノの目的の一つは、この転移石だった。
転移魔法を使えるティノにとってはそれ程必要ないものだが、これを持っているのがルディチ側の敵対人物では、後々仕留めるのが面倒臭い。
イーヴォの転移石は早々に奪っておきたかったので、この城に忍び込んだのだった。
“スパンッ!!”
転移石を手に入れたので、死にぞこないのイーヴォに用はないので首を刎ねた。
「この場にいる人間すべてがいなくなれば、この王国は終わりだ……」
「…………それが狙いか?」
驚きから立ち直り冷静になったのか、サンドは警戒しながらティノに問いかけた。
「その通り。この国にはちょっと期待していたのだが、サンド王! お前のような者がこの時代の王なだったのが残念だよ」
ティノが言うように、この国とは縁があった。
大昔にドラーゴとの戦いでロメオの先祖のヴィットリオに救われ、改革の王と今では伝説と化しているアルミロ・ディ・ハンソーに魔法を教え、マルコを育てる為にこの国で過ごした。
ティノの長い歴史の中で、もしかしたらトウダイ村の次に長く過ごした国かもしれない。
本当はそんな国を潰すのは気が引けるが、先程のように、自国の為なら敵との交渉で折れるような国に用はない。
もしも帝国との戦いになった時、手の平を返される可能性がある。
そんな事をされたら一発でルディチは終わりだ。
「イーヴォたちによって大半の貴族がいなくなった。そして今、王族までいなくなれば、民たちが選ぶのは2択になる」
そう言って、ティノは指を2本立てた。
「ルディチに頼るか、オーデン帝国に下るか……」
立てた指を折りながら、ティノは説明を続けた。
「そうなると、どういう扱いを受けるか考えたら、どう考えてもルディチに縋って来る」
帝国は素直に降伏をしたとしても、容赦がない事はこの大陸には知れ渡っている。
そんな国に、いくら何でも助けを求める人間がいるとは思えない。
貴族も王族も減り、とてもではないが自分たちで立て直す事は不可能である。
ならば、この内乱でも評価を得ているルディチに縋るのが当然だ。
「王のマルコは心が広い(まぁ、甘いとも言うが)、この国をルディチの物にするため……」
ティノは、少しずつ魔力を放出しだしながら話を続けた。
「ここにいる者全てに死んでもらう!」
「そんな事……」
“コロンッ!!”
ティノの言葉にを聞いた直後、それに反抗すべく、サンド王の近衛兵の一人が剣でティノに襲い掛かるが、難なく首を切り裂かれ倒れこんだ。
「っ!? 貴様……!?」
“パンッ!!”
今度はイーヴォ側の者が槍を構えてティノを睨みつけるが、言葉を発した瞬間にティノの魔法で頭が吹き飛んだ。
「…………ヒッ!?」「ヒァ~……!?」
その二人があまりにあっさり、そして凄惨に殺された事に、この部屋にいた者たちのほとんどが腰が引けた状態になり、中にはみっともない声を上げている者までいた。
そして、中にはジリジリと部屋から逃走を計ろうとしている者まで見受けられた。
「生憎、どちらも側の一人も逃がさんよ!!」
「「「「「っ!?」」」」」
そう言ったティノは、一瞬姿を消し、次の瞬間には部屋の出入り口を魔力で閉鎖した。
その事に気付いた両陣営は、大量の冷や汗と共に顔を青くしてゆっくりと武器を構える事しか出来なかった。
その後、それほどの時間がかかる事無くその場にいた人間は物言わぬ骸へと変化した。
「さてと、結界を張っていられるのも残り僅かだろう。それまで待つか……」
城一つ結界を張っておくのは、幾ら魔法のハンソー王国の魔導士たちでも、かなりの魔力を必要とするだろう。
契約の書類を手に入れに行った時に、本物のブリツィオと入れ替わったティノが魔導師たちに2時間後には解除をして良いと言っておいたので、そろそろ解除される頃だ。
“ピクッ!!”
「むっ!?」
人の肉片が散らばる中で、ティノが玉座に座って待っていると、結界が解けた事を察知した。
「さて、さっさと去りますか?」
後は、サンドの遺体を発見したハンソーの部下たちが、予想通りに行動してくれるはずなので、ティノは転移の魔法で去る事にした。
「あっ!? 忘れてた」
呟くと共に、魔法の指輪からティノは一人の遺体を取り出した。
「じゃあな! ブリツィオ君!」
入れ替わりに利用したブリツィオの遺体を他の遺体同様に床に置くと、ティノは気休めに両手を合わせて拝んでから転移を発動し、その場から消え去って行ったのだった。




